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    不出来なスタッフ解雇できず苦悩の経営者

    2010年6月25日

     
     
     

     輸送品質がさほど問われることもなく競争も少なかった頃と違い、「運送業はサービス業」という認識が浸透してきたトラック業界。輸送品質の向上は生き残りに欠かせない要因の一つだが、その中で事業者が最も力を入れるのが、第一線で活躍するドライバーの採用、育成である。事業者にとって顧客とじかに接するドライバーの存在は大きく、その対応によって会社が左右されるといっても過言ではない。だからこそ人材育成は大切だが、労使間のトラブルも絶えないのが実情だ。厳しい経営環境下にあって、働きの良くない従業員を置いておくだけの余裕はない。とはいえ、簡単に解雇するわけにはいかない。


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     埼玉県のある事業者は「面接だけで本質を見抜くのは難しい。しっかりと見極める対策はないものか」と頭を抱えている。一般貨物が中心の同社は、合間に事務所移転などの引っ越しも手掛けている。作業員に欠員が出たため、3月の引っ越し繁忙期に社長自らが面接を行い、1人のスタッフを採用した。

     「丁寧な応対で好印象」と感じた同社長は、そのスタッフの本採用を決めた。しかし、しばらく助手として働かせていたが、一向に仕事を覚える気配がない。そのうえ、重い荷物が持てず、独り立ちの見通しが立たなくなった。

     ところが、当の本人は「自分なりにしっかり仕事をしている」と納得しているようで、「給与で全員の勤務日数を1日足りずに支払ってしまった際、そのスタッフだけが『1日分足りない』と指摘してきた。悪いのは会社だが、働きもしない人間に指摘されるのは正直腹が立つ」とこぼす。結局、そのスタッフは力仕事が伴う引っ越しの助手はできないとのことで事務作業を命じた。

     しかし、そこでも問題が発生した。事務所を掃除させていると、掃除機から異音が鳴り、周囲にいた誰もがおかしいと気付いていたが、本人だけは何食わぬ顔。同社長が「掃除機にゴミが詰まっているから内部の掃除を」と命じると、指示通り満杯となった掃除機内のゴミを取り出し、こともあろうか、タバコの吸い殻を捨てているゴミ箱に捨てた。

     「タバコの火が危険だという認識がないのか。普通に考えれば分かりそうなもの」と呆れた同社長は、その場で注意し、別のゴミ箱へ捨てるようわざわざ指示した。

     「一事が万事だ」と疲れ顔の同社長。そのスタッフに「当たり前のことに気付けないのなら、直接顧客に接するようなうちの仕事には向かないのではないか」と問いかけた。自分から退職を願い出て欲しいとの思いだったが、意に反しそのスタッフは「自分なりにやっているつもりです。さらに一生懸命がんばります」と、仕事を続けていくことを誓ったという。

     「無断で会社を休むこともなく、言われたことには意欲を見せるため、解雇するとは言えない」という同社長は、「会社に余裕があればまだしも、厳しい経営環境で、うちとしては無駄な人材を雇用し続けるほど現実は甘くないのだが…」と、人材運用のジレンマに頭を抱えている。(高田直樹)

     
     
     
     
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