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「過労」指摘され事業停止 警察への対応を悔やむ
2010年8月20日
重大事故による罰則強化が図られ、物流事業者はよりコンプライアンスの徹底が求められるようになった。飲酒や過労が判明すれば即、事業停止という重い処分を受ける。首都圏の物流事業者は昨年、重大事故による特別監査で3日間の事業停止処分を受けた。違反点数では事業停止処分にはならなかったが、過労という悪質違反を指摘され処分を受けることになった。労働時間の超過もなく、ドライバーを働かせ過ぎたという認識がなかった同社にとって、この結果は到底納得できるものでなく、行政へ幾度も掛け合ったが、処分は覆ることはなかったという。「警察への対応をもっとしっかりとするべきだった」と振り返る同社長は、「甘さを捨て、万全な対策が必要だ」と話す。
物流事業者が重大事故を発生させた場合、通常、公安委員会が国交省に通報し、特別監査が実施される。同社もドライバーが死亡事故を起こしたことで、公安委員会からの通報を受け、国交省による特別監査を受けた。「死亡事故を起こした以上、監査は仕方がないが、まさか事業停止処分になるとは思いもよらなかった」と同社長。同社では安全に対する取り組みについて、「徹底していたわけではないが、事業を行う上で守らなければならないことは守っていた」という。そのため、たとえ監査が入っても、車両停止処分程度で済むと考えていた。
しかし、ふたを開けてみると、事業停止処分という重い結果が待っていた。「正直、なぜだという気持ちが捨てきれなかった」。
死亡事故を起こした同社のドライバーは警察の調書で、事故原因について居眠り運転だと打ち明けた。「うそを言ってもしようがないので、事故原因について、どうこういうつもりはない」という同社長だったが、それが結果的に警察の公文書に、「過労」という文字を並ばせてしまったのだという。
「週40時間労働は無理だが、決して労働時間が長すぎるわけではなかった」という同社長は、過労に対する認識は持ち合わせていなかった。そのため、事故は居眠り運転が原因としても、会社ではなくドライバーの問題だと認識していた。
しかし、監査に入った国交省から届いたのは、事業停止処分の知らせだった。「過労」という会社責任が問われたのだ。
この結果に納得できなかった同社長は、「資料を持って何度も国交省へ掛け合った」が、処分は覆ることはなった。「なぜ過労容認なのか」と詰め寄った同社長だったが、「警察の出した公文書に過労と書かれてしまっている以上、どうしようもない」と一蹴されたという。
「処分が出たからには逆らえない」と、それ以上の追及はせず、事業停止処分を真摯に受けとめた同社。監査による違反点数は車両停止処分で済まされる程度で、法令順守はむしろできていただけに、悔やみきれない後悔が残ったという。幸い荷主の理解などで、事業停止による影響は最小限に抑えられた同社は、それ以降、ドライバーの勤務体系をすべて見直し、安全に対する取り組みも、「ここまでやるか」というくらいに徹底しているという。(高田直樹)
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