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    生き残るためにやるべきこと

    2010年9月9日

     
     
     

     日を追うごとに厳しさを増すトラック運送業界。新規開拓への営業強化や輸送品質の向上など、生き残りをかけて日夜、しのぎを削るトラック事業者に話を聞いた。また弊社独自調査とともに、トラボックス会員事業者の協力のもと、アンケート調査を実施。362社から回答を得た。



    「品質向上しかない」環境整備で大きな成果

     「生き残るには、輸送品質の向上しかない」。そう考えた経営者は、まずドライバーの雇用環境の整備に取り掛かった。福利厚生の充実を図り、Gマークやグリーン経営認証も取得。当初は、環境整備に費やすコスト負担に不安も大きかったというが、いざふたを開けてみると知らない間に大きな成果を生んでいた。

     「当時はドライバーの定着率が悪く、輸送品質の向上が思うようにできず、危機感を抱えていた」と打ち明けるロジックスライン(千葉県成田市)の澤田秀明社長。厳しい経営環境の中で、輸送品質の向上は欠かせないと考えていただけに、「このままでは生き残っていけないのではないか」という不安が少なからずあったという。

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     まず、同社はドライバーの雇用環境の整備に取り掛かかった。最も大きな課題は、社会保険の加入だった。「厳しい経営環境にあって、年間1000万円以上のコスト負担は、リスクが大きく躊躇した」と振り返る澤田社長。しかし、ドライバーの定着率改善には避けて通れないと覚悟を決め、平成19年にドライバー全員を社会保険に加入した。「利益がすべて食われても仕方がない」としていたが、実際には決算書の数字は前年とそれほど変化はなかったという。

     なぜ、コストを吸収できたのか。同社長によると、ドライバーが固定化したことで、それまで頻繁に出していた求人広告を出さなくて済むようになった。また、ドライバーが定着することによって、事故やミスも減り、荷主からも信頼を得られるようになった。「輸送品質が明らかに向上した」と、同社長は指摘する。

     その後も同社は、グリーン経営やGマークを取得。さらに社内体制の構築を進めた。当初の不安は、今は感じない。それよりも「コンプライアンスを重視すれば、それ相応の成果も得られる」と、実際の経験を通して自信を深めている。

     「生き残っていくためには、まだまだ課題も多い」と話す同社長だが、「あの時、覚悟を決めずに社保未加入のままでやっていたら、今の姿がないことだけははっきりと言える」と話し、コンプライアンスの徹底が、経営の改善に結びつくことに、手ごたえを感じているようだ。(高田直樹)

    「お客様は神様以上!」自社に対する本音を聞こう

     「お客様は神様以上! お客さんから自社に対する本音の批判を聞こう」と話すのは、三愛(大阪府門真市)の辰巳寛一専務だ。企業が生き残っていくことを考えるとき、今は亡き演歌歌手、三波春夫氏の名文句を思い出すという。

     「『お客様は神様です』は自分の歌にお金を払って時間を割いて、聴いてくれる観客席を見て、自然と口から出た言葉だという。運送会社も多くの顧客に支えられて成長し、そこで働く人の生活が成り立っている。お客さんは我々にお金を払い、時間を割いてもらう。また、色々と指導をくれ、商売の厳しさも教えてくれる。それを理解すれば『お客様は神様以上』ではないだろうか」

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     辰巳専務自身、営業に出ることもあるが、常に心がけているのは(1)お客さんから本音を聞きだせ(2)お客さんから自社への批判を聞く機会をつかめ(3)アンチ自社のお客さんから、なぜ他社がいいのか勇気をもって教えてもらえ──の3点だ。

     「もっとお客さんを利用させてもらうということ。意見や提案を引き出し、生かしていくことが大切。その神様以上の方々に私達は何でお返しをすればいいのか。答えは『サービス』しかない。運送業はどこまでいってもサービス業。お客さんと対話し、要望に応え、予想をはるかに超える満足と感動を与えてこそ『真のサービス業』」

     また、「三波春夫氏のようなオーバーアクションは要らないが、そのような気持ちをもって接客していけば、『お客様は神様以上です』と、自然と口から出るかもしれない」と強調していた。(大塚 仁)

    人脈の拡大と法整備がカギ

     トラック運送事業をはじめバス、タクシー、福祉タクシーなど多くの事業を展開する東陽運輸(大阪市平野区)の松元憲行社長。運送事業を開始して45年以上が経ち、厳しい時代を乗り越え、車両台数300台(グループ会社含む)を超える企業に成長した。
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     同社長は長引く不況に、「生き残るために何をしなければならないのか、十分に理解させられた」と話す。同社長は事業開始から、さまざまな人脈による事業の成功があり、同社の成長には人脈づくりが一つのカギとなっているようだ。

     また、「運送業界を変えるためには、下請法で孫請けの禁止が必要」と強調。「運送業界は荷主企業、物流事業者、大手運送事業者、そして中小・零細の運送事業者と、直接の荷主から末端の運送事業者までは全て孫請け、もしくはひ孫請けとなり、実際に走る運送事業者の運賃は荷主から出る運賃の約4割から3割程度の金額になっている」と指摘。「これが景気のいい時には問題とならないが、不景気になれば荷主の運賃値下げとピンハネが重なり、大幅な運賃ダウンとなっている」と話す。

     さらに、「こういった状態を改善するためにも法改正が必要。国会議員などの人脈を使って、運送業界の厳しい現実を理解してもらい、孫請けを禁止する法律の施行を求める」とし、「会社としては、利益を上げていた当時に新規事業を行い、さまざまな業界に携わってきたことで、新たなビジネス情報と人脈が拡大していく」と、生き残るために取り組むべきことについて語る。(佐藤弘行)

    会社のカラーを守る

     「会社のカラーをしっかり守っていくことだと思う。環境や安全の認証を取るとか、色々な車載器を装着するとか、社員教育を徹底するとか。ウチの場合は自分もドライバーもお得意先も『同じ釜の飯を食べている』意識を持つこと」と話すのは、豊島タマヰ運輸(東京都豊島区)の玉井貴之社長。「みんなが食べていくにはどうするかを考えて行動する。営業する自分とドライバーが、まず、お得意先に顔を覚えてもらうことが基本」という。

     社員への指示はストレートで、「回りくどい言い方はしない。メリットもデメリットも、きっちり話して納得して働いてもらう。あいまいな言い方や指示は誤解やねじれた解釈を生む」と話す。
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     同社は印刷物をメーンに常温輸送全般を扱う。車両は軽から8?車まで34台。今春、親族会社を引き受け、ほぼ倍の台数の舵取りをすることになった同社長は、車の整備士免許も持ち、自社の車両を管理している。「できることは自分でやる。車の空き時間に整備も修理も車検もできるから、車を休ませなくてすむ。整備は以前から2社分を見てきたので問題ない」。

     同社は、東ト協・豊島支部の支部長を務める玉井忠之会長が40年前に創業。自身が元気なうちに新社長を育てるため、65歳の時に社長の椅子を貴之氏に譲った。

     30代の若さで2社を牽引する玉井社長は「危機感を常に持ち、前向きな気持ちで『やる気のある会社』だけが生き残っていくのだろう」と語る。(小澤 裕)

    「時流に応じた展開を」環境・安全・個人にチャンス

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     船井総研の橋本直行シニアコンサルタントは、「生き残るには、時流に適応したビジネス展開が必要」と指摘。いまの時流とは、「環境・安全・個人を指し、それぞれにビジネスチャンスは眠っている。伸びているマーケットに適応する事業戦略を考えるべき」とする。

     また、「品質の数値化とその管理、いわゆる『KPI(重要業績評価指標)経営』に取り組まなければいけない」という。

     さらに、「検索され、指名されるための独自固有の長所の磨き込み」が必要で、「『○○なら△△運送』の○○に入る言葉が、すぐに思い浮かばない場合は、危機感を持ってほしい」と語る。(大西友洋)

    「顧客ニーズに対応」やると決めたらすぐ実行

     依然として厳しい経営環境を強いられているトラック運送業界。「可能な限り顧客ニーズに対応し、やると決めた時にすぐ実行に移すことが大切」と語る、大阪府門真市の運送会社社長。「他社の嫌がる仕事や従業員の意識改革、荷主との取引関係の改善」に注力し、社内の品質を高めて他社との差異化を図っている。

     社員の意識改革は、職場環境の改善をはじめ、あいさつや服装などの基本を徹底して教育しているという。同社長は「当たり前のことを当たり前にできる従業員を育てたい。きちっとした服装や笑顔であいさつができれば、相手に与える印象も変わってくる」と語る。

     中小・零細企業が大半を占める業界にとって、余分なコストを掛けることが難しい環境でもあるが、同社長は「コストを掛けず取り組める社員教育や意識改革を、少しずつ積み重ねていくことが武器となる。従業員のレベルを上げなければ、これからは通用しない」と先を見据える。

     また、荷主との関係をより深めるために、「コミュニケーションを積極的に取り、情報交換して、お客様のプラスとなる仕事の提案ができれば生き残っていける」と語る。

     古い考えをなくして新たな気持ちで仕事に取り組みたいと考える同社長は、「古いドライバーが多く、昔の考えがまだ残っているため、やる気のない従業員がいる。可能であれば、全員を辞めさせて一からやり直したい気持ちだ」と本音をこぼす。(山田克明)

    先を見据え設備投資

     景気回復の兆しが感じられないという運送事業者が大半の中で、大阪市東住吉区の運送会社社長は「こんな時代だからこそ、お客様の様々なニーズに対応することや設備投資に力を入れている」と強調する。

     顧客ニーズに応えながら仕事を増やしている同社長は、「他社と差異化を図り、ニーズに応えた輸送品質や新たな取り組みで、荷主にアピールできる会社にしなくてはいけない。そのために安全教育や品質向上を、社員一丸となって取り組んでいる」と話す。

     設備投資をただ単にするのではなく、先を見据えて投資をしているという同社長は、「しっかりと計画を立てて色んなことに挑戦することで、コスト削減や新たな事業展開の発見につながる。立ち止まっていては何も始まらない」と語る。

     一方で、前向きな考えができないという大阪府門真市の運送会社社長は「我慢をするしかない。社員教育などもやりたいが、理解してくれる社員がいないのでどうしようもない。やり方を変えずに、このままでやっていくしかない」と嘆く。

     荷主に選ばれる時代となった中、他社にはない取り組みで荷主との信頼関係が築けているかが、生き残るための最重要条件と言える。(中村優希)

    既存の顧客と仕事を最優先

     「当社の場合は特定の荷主が中心なので、これまで以上に荷主を大切にしていく。新規顧客開拓ももちろん重要だと思うが、今は既存の顧客とその仕事が最優先だ。最近は、大手が横から入ってきて、かつては見向きもしなかったような(われわれ中小が手掛けている)仕事をなりふり構わず奪っていくケースが目立つ。大手も厳しいのだろうが、中小には太刀打ちできない低運賃で参入してくるのは問題ではないか」(金子運輸・金子俊一社長、東京都練馬区)

    「安全と環境対策に力」全車両にデジタコ導入

     安全と環境対策に力を入れて生き残りを図るのは、食品輸送をメーンに展開する第一名誠(瀬尾誠社長、名古屋市港区)。7月に保有する全車両にドライブレコーダ(DR)一体型のデジタルタコグラフを導入し、安全管理の強化を図っている。

     愛ト協は今年度、デジタコは90%、DRは1台あたり3万円を助成しているが、前年度は保有車両数までとしていた上限を保有車両数の半分に引き下げた。

     しかし、同社はコストよりも安全と環境負荷軽減を重視し、全車両に導入。また、最新機種はより精度の高い管理が可能になるほか、全車両に同じ機種を導入することで管理がしやすくなるといったメリットもあるという。

     「リスクを分散するため、取引先を分散させることに力を入れている」と話すのは、岐阜県のトラック事業者。現在は最大で50%を占める顧客を、他の取引先を増やすことで薄めていく方針だ。

     「一つの荷主への依存度が高いと、相手もそれが分かっているため運賃交渉などの面で足元を見られる。加えて、このご時勢だと、どんな企業でも倒産のリスクがある。仮に大手企業を相手にしていても、拠点集約などのリスクもゼロではない」と話す。

     同社社長は営業担当者に対し、既存荷主への取引拡大に加えて新規開拓に取り組むようハッパをかけている。(中道幸男)

    法律の見直しなど業界にメスを

     「同業他社との差異化が難しいという事業の特性を踏まえれば、トラック運送での価格競争は愚の骨頂」と話す社長は、「企業レベルの問題としてではなく、まずは業界の実態にメスを入れることが『事業の生き残り』に不可欠」との持論を展開する。かねて「適正なトラック台数」と「取扱専業者の扱い」を指摘してきた1人だ。

     「例えば基準運賃を設けようとする行動よりも、適正なトラック台数の意識を高めることが現実的」。営業区域が存在した当時であれば、事業法に記されている緊急調整措置が生かされる可能性もあったが、その前提となる特定エリア内でのトラック台数の過剰感が明確に示せなくなった現在では、同措置が発動される可能性はゼロに近い。

     「免許が許可へと格下げされた当時とは事情が大きく変わっているが、法律は手付かずの部分が少なくない。この辺りの矛盾を業界団体が突き上げることは何ら問題ないはずだ」と話す。

     一方、取扱専業者についても「実勢運賃の動向を大きく左右する存在であるにもかかわらず、車両を持たないことを理由にト協に加入しない・させないケースが一般的。一部の地方ト協では加入させている例もあるが、それが本来の形だと思う」と強調。「物流子会社や水屋などを引き込むことで、運賃を適正化する作業の大半はト協内部で可能であることを再認識すべき。運賃の値下げ競争にばかり精を出すのは、いい加減にやめないといけない」と自戒の念も込めて訴えている。(長尾和仁)

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    専門知識学び様々な提案

     「倉庫も完成した。Gマークも取った。物流業としての基礎や足場はすでに完成している。それなのに、いまさら何を…」。景気低迷による長期間の疲弊ともあいまって、これ以上どうしろというのかと立ちすくんでしまう状況すら生まれている。

     しかし兵庫県内の事業者は、いとも簡単にこのように言ってのける。「物流業は、実に簡単な商売。荷主のお守りをしていればいいというのは、昔も今も変わらないんだから」。

     もっとも、「お守り」という言葉にはたくさんの含みがある。困難な状況も想定される物流業務を単に嫌がらずに仕事をこなす、そんなイメージだけで捉えられるものではない。荷主は、そのモノの製造や仕入れ、卸し、小売りなど様々な段階における専門家。逆に物流業者は、モノをトラックで運び、人の手と知恵を使うことによってモノをいかに使いやすくするか、あるいは売りやすくするかといった専門家でなければならない。

     そのためには、モノの専門家(荷主)の一歩手前程度までの知識や経験が必要となる。モノの専門家に近づくことで、荷主に様々な角度から提案できるし、専門知識が不足している別の荷主に経験を生かせる。

     「お守り」は、モノそのものに興味がありさえすれば難しいことではない、というのがこの事業者の持論だ。ただ、お守りには前提がある。

     「直荷主でないとお守りをする意味も気力も生まれない。これは、単なる輸送屋を止めようという意味で、こちらから下請け仕事をしようという気は、これからもない」(西口訓生)

    「現場営業を最重視

     工作機械などの運搬、搬入据え付けを行う土長運輸(東京都大田区)の高橋忠夫社長は、「生き残っていくには今のお客を大切にしなければならない。新規といっても、むずかしいからね」と話す。

     とくに重視するのは現場営業。「社員には現場営業の大切さを常に言って聞かせている。現場での作業姿勢や接客態度のほか、お客としっかりコミュニケーションを取るよう指導している」という。

     士気を高めるために社長自ら現場に出向くことも欠かさない。「一時、安く仕事を請け負う業者が出現し、そちらに流れた取引先もあったが、最近そうしたところでトラブルが多く発生し、品質の重要性が見直されている。『あそこなら、しっかりやってくれる』と感じてもらえることが大切だ」と語る。(岩本浩太郎)

    強み生かしたサービス展開

     愛知県のL社は、連鎖倒産のリスクを回避する方策として、1社の荷主と売り上げの10%を超える取引をしないよう心がけ、顧客ニーズをいち早く採り入れることに注力。四軸低床トラックやエアサス車などを導入し、ドライバーもサービス業などに従事していた素人を探すなど、接客面を重視している。

     同社の社長は「リスクを回避しながらも時代の変化に対応できる柔軟性を常に持っておきたい」と話す。

     また、静岡県のS社は「我々ができることを、お客様にピンポイントで営業する」ために、これまでの会社案内を刷新。同社が得意とする分野別に、それぞれ4ページのサービス詳細リーフレットを作成し、会社案内のポケットに入れられるよう工夫した。

     「生き残るには自社の強みと弱みを知ったうえで、強みを最大限に生かしたサービスを展開しなければいけない」と同社長は話す。(加藤 崇)

     
     
     
     
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