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「カンベンしてほしい」 物流現場のオムニバス
2010年9月30日
かさむコストと低運賃のなかでトラック事業者の苦労が続いているが、それに追い打ちをかけるような「カンベンしてほしい」話に事欠かないのも実情だ。現場で耳にした、そんな数例をまとめてみた。
「えっ? だれがそんなことを…。冗談じゃない」と、1本の電話が社長の表情を一変させた。受話器を置いた社長に話を聞くと「ウチが8700万円の不渡りを出したというので、心配した旧知の同業社長が連絡してきた」と呆れ顔。同社は中堅規模の運送会社で、社長も人格者。最近、取引先1社の経営不振で焦げ付きが生じたのは事実らしいが、大騒ぎする金額ではないし、同社の不渡りは事実無根の話だった。「もらい手形はあるが、そもそもウチは手形を振り出したことがない」と話しながら、社長は金庫から数枚の紙片を取り出した。見ると、ウワサされている金額に匹敵する金額の手形。「カネに困っているなら、とうの昔に割っている」。しばらくして「明日か、とにかく早めに来てくれ」と電話した相手は民間の信用調査会社。「尾ヒレが付いてヘンに広がっても困る。つまらんことで手間をかけられる」と、怒りは収まらない様子だ。
その運送会社に労基署の関係者がやって来たのは数か月前。ざっと書類に目を通した後、「未払い賃金があるので支払うように」。時間管理が難しいことから従来、走行距離を基本にして給料を計算してきたため、「時間のことをいわれると反論できない」と社長。その後、労基署からは支払いを確認する連絡が入り、「その方向で用意していると返答すると、次は計算書を見せろという始末」。
社長によれば「労基署から未払い賃金の指摘があった段階で従業員を集めて説明した。頭から支払う気はなかったが、従来の計算式に納得しているドライバーから異論は出ないし、それどころか『放っときましょう』という声が上がるほど。行政は一体、何がしたいのだろう」とシラケ顔だった。
9月に入り、引越事業を手掛ける運送会社に14万円の損害賠償金を求める訴状が届いた。1トン車程度の引っ越しで、到着後に完了サインをもらったにもかかわらず、後日になって「段ボールが2箱足りない」。中身は「個人的な思い入れが強い」というプラモデルやフィギュアなど300点以上。
消費者相手の引っ越しにクレームは付きものだが、社長の話では「裁判に至るケースは10年に1回あるかどうか」という。届けられた訴状には、消失したという?宝物?の空箱やパンフレット、説明書などが添えられていたが、「準備がよすぎて釈然としない。10万円そこそこなら簡単に支払うと考えたのかもしれないが、こちらはキチンと引き受けた仕事を完了している。運送会社がナメられないように、とことん争うつもりだ」と語気を強めていた。(長尾和仁)
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