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    新春特別対談 日本の物流はトラックが担う

    2011年1月6日

     
     
     

    taidan_0103.jpg 民主党トラック議員連盟の事務局長として、奥村展三会長(衆議院議員)ら幹部を補佐し、スポークスマンとして活躍する石井章衆議院議員(北関東ブロック比例区)。議連結成にあたっては東奔西走してメンバーを集めた。「現場の声を聞かなくては」と、1年かけて全国各地のトラック協会をすべて訪問。民主党政権として2010年4月に打ち出した全車種対象の「上限料金制」を柱とする高速道路の新料金案では、「前原(誠司)国交省案などぶっ潰せ」と猛反対。廃案に追い込んだ?つわもの?だ。閣議決定された10年度税制大綱で運輸事業振興助成交付金が継続となり、さらに「確実な交付を確保するため法整備を受け所要の措置を実施」と補足されたのは、石井氏ら議連メンバーの積極的な行動に負う部分が大きい。一方、交付金の活用では全国の範として実績を誇る東京都トラック協会。石原慎太郎都知事も「排ガス規制では厳しいことを申し上げたが、東京に青空が戻った。困難を乗り越えて都政に協力してくれたト協の人たちのお陰」と感想を述べ、安全・環境対策では積極的に東ト協を支援する。東ト協の星野良三会長(全ト協副会長)と石井氏は事業者と政治家の違いはあっても、業界の問題解決に向けた並々ならぬ意欲は共通している。お二人に話をしていただいた。



     星野「石井先生、このたびは業界が大変お世話になりました」

     石井「トラックは日本の物流を支えており、トラックなしでは日本経済は成り立ちません。公益性の高い仕事です。インターネットは普及しましたが、荷物が空から落ちてくる訳ではない。運んでいるのはトラック。『日本の物流はトラックが担っている』ことを大前提に『国が予算措置を取るべき』というのが、トラック議連を立ち上げた理由です」
     「交付金についても、営自格差を設けるために暫定税率として6500億円を地方税として納めている。その見返りとしてバスに20億円、トラックに180億円を交付している。それが都道府県によって何割引など行われ、約束しているお金も予算も使えないというおかしな状況が出てきた。そこをなんとか法制化したい。各知事が、勝手に『5割引だ、7割引だ』と判断することがないよう、きちんと交付し、最終的には上乗せしていきたいと考えています。交付金の使い道は個人の飲み食いや遊興費ではなく、利子補給や安全教育、Gマークの取得など、本来、国がやるべきことをト協にやらせているのが実情です。もっと早く法制化して、ハンドルを握る人たちが『トラックを生業にして良かった』と思えるようにしないといけない。トラック業界がバカを見るようでは、日本経済は良くなりません」

     星野「わたしはこの業界に入ってちょうど50年。長くこの仕事をしていますが、何が一番重要かというと『人』です。教育が最も大切で、当社でもQCサークル活動に取り組んでいます。少しでも改善していこう、顧客満足度を高めようと現場のドライバーが取り組んでいます。基本はヤマト運輸の故小倉昌男さんの言葉です。『ドライバーが一生懸命運転しているのに、荷物を積んでいないのは経営者として、ドライバーの労働への冒涜だ』とよくおっしゃっていた」
     「20年以上前になるが、ある荷主に運賃値上げをお願いすると、『荷物を積まずに走っているトラックを見かける。あなた方はカラで走っているのに運賃を上げてくれとは何事か。荷物を一杯にしてからにせよ』とお叱りを受けた。それからは『情報』が重要と考え、当時出たばかりのファクスを全営業所に設置し、往復で仕事を取るようにして生産性を上げた。今は約300台を保有していますが、沢山は儲からないが従業員の生活を守ることはできている。この経験を生かして業界を良いものにしてくために活動しています」

     石井「東ト協では交付金を非常にうまく活用されていると聞いていますが」

     星野「安全対策で、ドラレコ装着補助をしています。会員が保有する8万台の車両のうち5万台近くに取り付けることができた。『事故半減3か年計画』を進めていますが、死亡事故が初年度の21件から2年目11件、3年目は6件にまで減り、4年目は現時点で3件。大幅に減って尊い命を救っている。交付金の有効活用で大きな効果が出ています」

     石井「環境対策も斬新なアイデアで取り組んでおられる」

     星野「『グリーンエコプロジェクト』を進めており、コペンハーゲンで開かれたCOP15でも日本の先進的な技術として紹介されました。現在は1万台の車両が登録しており、平均7%の燃費改善効果が出ている。機械を取り付けるのではなく、ドライバーが自ら環境に優しい運転に取り組み、記録を取るなどして大変な成果を上げています。これも交付金を使わせてもらっていますが、できればさらに台数を増やしていきたいと考えています」

     石井「運賃・料金問題はどう対応されてますか」

     星野「トラックの運賃は形があってない。損しているか得しているかよく分かりません。それではいけないと、昨年からパソコンソフトを活用した原価計算を奨励しています。専用ソフトを会員に有効活用してもらおうと、25支部で講習会を実施しています。これが浸透すれば相当、経営の健全化につながるはずです」

     石井「確かに指標になりますね」

     星野「100点とは言いませんが、安全と環境は成果が出ている。今度は原価計算ソフトの普及を通じて、会員事業者の経営の底上げを支援していきたいと考えています。そのためにも交付金をきちんと頂ける仕組みを作ってほしい。東京都からは『東ト協はきちんと有効に使っているので仕組みがあるうちは、ちゃんと出します』とありがたいお言葉も頂戴している。仕組みがなくなると出なくなるので、その点は先生方にお願いしたい」

     石井「我が民主党は昨年8月のマニフェストで暫定税率をなくすと言いました。そうすると交付金も当然なくすことになりますが、全ト協や各県ト協にしても交付金はすでに定着しており、自前の会費だけで運営していくことは無理でしょう。暫定税率を若干下げて、交付金は今の水準を維持するというのがベターかなという感じで受け止めています。とにかく『交付金がなくなると困る』という意見の方が強いと感じました」

     星野「運送業界の構造は複雑で色々な階層がありますが、当協会のアンケート調査では7割が赤字です」

     石井「トラックに限らず日本の中小企業、零細企業は7割が赤字ですが、運送業界の場合は政策として、そういう状況に追い込まれたという部分もある。トラックは料金があってないようなもの。社会保険も払ってない会社と、まともな事業者が価格競争になったら、当然やっていけないでしょう。一方、大手も、なるべく自社は良い仕事で走り、あとは下請けに回しているという指摘も聞いています」

     星野「そういう問題を解決するためにも原価計算が有効だと思います」

     石井「5台しかない事業者と、会長のように300台持っている会社が、同じ入札をやって同じ情報に乗ってしまうと、片方は社保も払ってないし、サンチャン農業と同じ状態ですからね。そういう所との価格競争になったら当然やっていけない。ただ『大手さんは自分の直の車両を回さないで、そういうトコに下請けを出して、なるべく自社の直系の車両は行きやすい所に回すと言うのをやっている』という話を聞いたことがあります。各地方を回ると、そう嘆くト協役員さんも多い」

     星野「それを是正するにはどうしたら良いか。原価計算しかないと思うんです。原価を正しく把握して、同じ赤字でもいくら赤字なのかっていうのが分かっているとね、『これじゃいけない』と、上げてもらおうという空気が出て来る。レベルを上げていかないとダメだと思うんです。私の会社でも傭車は使いますが、経営者の考え方次第ですね。相手の立場でモノを考えるという習慣が大手の運送会社さんにもないといけない。長い付き合いですからねえ。1回だけじゃないんですから、原価計算をすることで小さい所も協力事業者も自分の意見をしっかり言っていただく。そこでの根拠が、やはり原価計算なんです。ただ『合わない、合わない』と言ってもなかなか上げてはくれない。でも原価がこうで『これだけ赤字ですよ』と実数を示せば、上げざるを得ないということになりますから」

     石井「厳しいですよね、原価計算といっても。それぞれが損益分岐点を理解していないと」

     星野「今勧めている原価計算では『2トン車が8時間運行して100キロ走行した場合にはいくら』と出るんです。パソコンに入れてありますから『1キロオーバーしたらいくら』『1時間の時間外はいくら』ってポンと入れると、30秒くらいで今日やった仕事が損だったか得だったかが分かる」

     石井「ソフトがあって」

     星野「これはパソコンがなくてはいけないので、パソコンを7、8台支部に持ち込んで講習会をやってるんです」

     石井「すごいですね。それは東ト協のオリジナルでしょ」

     星野「そうです」

     石井「東京は何をやるにしたって、一番規制が厳しい所でしょ。NOx・PM法にしたって一番だしねぇ。今度、排ガス規制が有識者会議で、また何年か先には厳しくなるようだし」

     星野「原価計算にしてもソフトがありますからね、このソフトは4000円くらいで販売してるんです」

     石井「では、あとは使いこなせるかどうかの問題ですね」

     星野「ですから、これを水平展開して他県にも持ち込んでいただければ、全体のレベルアップも期待できるんですよ」

     石井「実は、民主党の『石油議員連盟』が立ち上がるんです。物流はよく『血液』にたとえられますが、血流とは燃料ですからね。そこもおさえないと、一方通行でしょ。いくらト協が『燃料高いから下げろ』と叫んでも、不透明なうちに(燃料価格が)決まっちゃっているというのがある。三井、エネオスなど全部から社長が集まって明日、議連の立ち上げで、私は事務局長で、会長に山岡賢次衆議院議員が就くなど、錚々たるメンバーが役員に入る。一年くらい嫌がってたんですよ、作るの。向こうは自民党エリアだから(笑)」
     「運輸局の幹部が『円高なのになぜ油の値段は下がらないのか』と屁理屈こねてたから、それを議連で言えと(笑)。エネオスの部長が来て詳しく説明するらしいが、いずれにせよ原油は上がってるけれど円高・為替の勢いからすれば、もう少し安くしてもいいのにと。その理由を述べたいということらしい」
     「交付金制度では1月下旬に通常国会が始まるが、まず1丁目1番地だった税制大綱に乗せた。乗せないと話にならない訳だから。乗せたってことは『やるしかない』んです、政府は。それは形とすれば閣法でやるかね、いわゆる内閣で提案するか、われわれ議員立法でやるか。議員立法の場合、自民党も協力するかもしれない。今はメンバーを増やしているんです。東京出身の民主党の議員がいれば、できれば東ト協のほうでぜひ、『議連に入って物流のことを良く考えてくれ』と言っていただければありがたい。100%入っている県もあるし、そこまで徹底してない県もある。たぶん全ト協ではそこまで言ってないと思うけれど。ただ、できるだけ議連に入会してもらうということが、法案として通りやすくなる」
     「本来であれば、営自格差をスタンドで解消できるなら良い訳なんだ。だが財務省主計局の考えでは温対税(地球温暖化対策税)が10月から段階的導入になると、リッター当たり25銭の値上げになる。それを見込んで、われわれが今要求しているのは400億円から450億円をト協に還付して、一層内容の濃い安全、環境対策等につながるような事業を、国の代わりにやってもらいたいと。金額の前に『将来的に交付金が正しいのかどうか』を主張する意見もあったので(交付金を)法制化した。こんな狭い国であっちは違う、こっちが違うなんてことがあってはならない」
     「業界では中型免許制度も問題があるようですね。少子高齢化を背景に、さらにドライバーが集まらなくなる」

     星野「あと何年か経つとトラックは動かないよ。トラックが動かなくて誰が困るかと言うと、国民が困る。運送業者はいいんですよ。売り手市場だから。確保しているトラックは高く売れるし、一つも困らない。困るのは国民。荷物が届かない状況がおそらく出ますよ。大変な問題ですよ」

     石井「私が全国を歩いて聞いた要望で優先順位をつけると、やはり一番は高速料金問題で、前原前国交大臣案を潰すことに注力した。あれを潰さないと、特に首都圏が参っちゃうので、当時の小沢幹事長にもお願いして川内博史国交委員長とスクラム組んで、議連のメンバーの署名を集めて前原さんも断念したんです。だから皆さん、議員連盟に入ってもらうということを一つ考えてほしい。政治は数だから。一人1票しかない。だから仲間を募って物流業者のためにどうあるべきかというのをよく勉強してもらえば、『議連で頑張ろう』となる。高速料金でトラックに関しては上限制を設けなかったお陰で、首都圏は非常に助かっている。距離別割引制度になっています。大口・多頻度、通勤、夜間・深夜割引など全部継続になった」

     星野「大口・多頻度継続はありがたい」

     石井「我々は割引率を1.5倍にしろとやったのだけれど。それはこれから継続して検討する課題として新しい提案に入っています。ネクスコに関しては党の案がほぼ通った形です」

     星野「規制緩和の問題も大変な状態です」

     石井「タクシーなんかは地方から出稼ぎに来てるんですよ。上野から議員会館に行ってくださいと言っても分からない。ぐるぐる回っちゃってメーターがすごく上がってしまう」

     星野「規制緩和をしていい業種と悪い業種があるんですよね。トラックとかタクシーとか規制緩和したって(貨物などの)量が増えないんだから、緩和されたのではたまらない。緩和をして良い業種と悪い業種を選別していただきたい。例の社会保険未加入もありますでしょ、私はやはり社保に入らない業者は許してはいけないと思います。友達が年金なくて食えない。年金だけは入っていないと先が大変ですから」

     石井「年金に入ってない人は、要するに生活保護になっちゃうんですよ」

     星野「運送業は社保に入っていなければ商売できないという法律です。5人以上いるところは入らなきゃいけない。それで事業は5台以上なんですよ、トラックは。だから全部が入っていなきゃいけない訳で、それを運輸局などに言うんです。『取り締まらないあなた方は仕事してないだろう』と。無法地帯じゃないか。やはりね、従業員が60歳になって何にももらえない世の中じゃ駄目だ。経営者として一番いけないことをしている訳ですよ。だからね、それはお役所に取り締まってもらうしかないと。そうすれば運賃は上がらざるを得なくなる」

     石井「国交省はうちじゃない、厚労省の問題だって言いますからね」

     星野「それは違う。それは許可条件だから。許可しなきゃいいんだから、取り消せばいい。民主党さんは働いている人の一番の味方なんだからね。かわいそうですよ、あれ(年金未加入)は」

     石井「5台と言いながら、別に自分のところの名義じゃなくても、リースだろうが借りたものだろうが構わない訳ですよね。自分のところで使えればいいわけだから。ただ、それで本当に良いのかどうか。例えば、それを底上げして必ず社保にも入るとか、7台とか10台にするのがいいのか、そこを会長が意見をね、条例は石原(慎太郎)さんが何でも作れちゃうけど、僕らは立法府として日本全国を網羅するから。全ト協で意見をまとめてもらって、最大公約数を議連に提言してもらって。我々もそれに沿って動くようにしますから」

     星野「経営者として守らなくちゃいけないのに、社保に入ってないのはそのままでしょう。60歳になったら大変だよ」

     石井「最低車両台数引き上げの議論があるのは、我々が言ってるから。ただ全部が全部そういう意見でもない。下請けのためにはどうなのって言う人もいる。だからそこは全ト協などもあまり言ってこない」

     星野「私なんかはまだ考えがまとまっていないんだけれど、管理者を置いてやるなら、5台やそこらじゃ管理者は呼べないよ。10台はないと」

     石井「僕らは自分の意見で物事を決めようというのではなく、議連はまず地方ト協とか、地方をまとめるのは全ト協なんだから、そこで意見集約してもらったものを最大限、尊重してやっていきたい。それがいずれは、働く人のためになるだろうと思います」

     星野「先生はずいぶん研究しているし本当に頼りになる」

     石井「党の勉強会とか意見を言う場に行った時、議連の事務局長はある程度を知らないと。だから僕は滅多に迷わないですよ。自分の仲間に『ここで勉強会やって、今度の分科会は君と君と君はこれを言え』と分散して指示する。議連には様々なタイプの良い先生方が多くいらっしゃるので、僕はあんまり出しゃばらないように露払いやりながらね。ただ、全部みんな電話が僕のところに来ますね、直接(笑)」

     星野「わたしもまた勉強させてもらいました。今日の話をうかがって、つくづく勉強不足を実感しました」

     石井「自分で汗かいてハンドル握っているわけではないですが、政権与党になった以上は今まで自民党が出来なかったところをやろうと。道路を造るのも良いけど、その前に走るトラックの人たちが『うちの父ちゃんトラックに乗ってるよ』って自慢できるようじゃないとね」
     「交付金のめどが大綱の中にうたわれたので11年はそれを実現する。法制化を正夢にしたい。同時にトラック事業者が抱える問題について優先順位を決めながら、中型免許の問題をはじめ全ト協と協議しながら、一つひとつ実現させていく。掛け声だけで終わらないのが民主党のトラック議連。掲げた以上は岩にしがみついてでも必ず通すと、一歩も引かない気持ちでやります」

     星野「交付金の有効な使い方で、いかに会員のためになるかということを考えていかねばとつくづく思う。先ほど触れました原価計算の問題を主体に、いかに経営の健全化を図るかを大きなテーマとしてやっていきたい」

     
     
     
     
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