Now Loading...
 
  • トピックス

    冷凍ボディーに不具合 主張食い違い解決のめど立たず

    2011年1月14日

     
     
     

    truck_1017.jpg 2008年春ごろに納車した冷凍車の不具合を巡り、北海道内の中小運送会社が存続の危機に立たされている。同社では「保冷箱」に問題があるとして、架装メーカーとトラックディーラーとの間で2年半以上にわたり、不具合の改善と補償を求める交渉を行ってきたが、メーカー側は「保冷箱に瑕疵はない」と主張、両者の意見は平行線をたどり、解決のめどが立っていない。運送会社は業務に大きな支障が出ており、「一刻も早く安心して積み荷を運べるようにして欲しい」と悲痛な声をあげ、同時期に製造された保冷箱に不具合が出ていないか、他の運送会社に情報提供を呼びかけている。



     トラック十数台で低温輸送をメーンに展開する同社は08年に地元ディーラー3社から冷凍車6台を納入、ボディーと保冷機は全車とも同じメーカーだった。納車後まもなく「積み荷の一部が融解する」「庫内の霜が溶けてダンボールが水浸しになる」などの事態が発生し、ディーラーとメーカーに原因の究明と対応を求めた。

     ボディーメーカーは6月、自社工場で保冷・気密性能試験、走行試験などを実施し「保冷箱には特に異常がない」と確認、同社に伝えた。ただ、冷凍機をマイナス29度の設定にしたにもかかわらず、「カートン積載時庫内温度分布試験(停車時・走行時・気密不良再現走行時・庫内後端上部循環ファン作動停車時・フロントバルクヘッド全面カバー停車時)」の5項目で「庫内の温度が下がらない個所が発見できた」「最後部の温度が上昇し、不安定になった」ことが判明した。

     いずれも庫内の「前壁の下部の平均温度がマイナス17度以下には下がらず、リアドア付近はマイナス20度前後」という結果。「ルーフ表面温度が高かった」ことも確認、6項目の試験で「NG」評価となったが、メーカーは「全体の冷却には大きな影響を与えない」と結論付けた。

     メーカーは「NG」の原因として、「バルクヘッドの形状が格子状のため、冷気を積み荷の上から吸い込みショートサーキット状態で、フロント下部は冷気の循環が悪いために温度が下がらなかった」として、「格子状のバルクヘッド面を塞ぎ、冷凍機の吸い込みを必ず下から出来るよう」改造を施した。

     ディーラーには「バルクヘッドの格子の面をアルミ縞板で塞ぐ」「断熱塗料を塗り替える」の2項目の改良を施せば改善すると伝えた。一連の検査の結果報告が7月に行われたが、運送会社はこの「NG」の説明を受けていないとの認識だ。

     運送会社は、メーカーが提案する「バルクヘッドの改造」などを行っても冷凍車の不具合が改善されなかったと捉え、11月にメーカー、ディーラー立ち会いのもと、地元の修理工場で一番状況の悪いボディーの内装材を剥がす重工事による確認検証を実施。

     
     この時の状況を運送会社は「内装の保冷材は水浸しで、カビが生えていた。保冷性能に問題がある証拠だ」と主張。メーカーは「フロントウォールの最下部に少量の水侵入の形跡があり、断熱材表面のSUSプライ裏側ベニヤ合板にカビの発生が認められたが、その場で断熱に支障を与えるものではないと説明し、運送会社に理解いただいている」としている。

     運送会社はディーラーを通じて不具合改善の交渉を続けるが、事態は一向に進展しない。「会社がもたないだろうが裁判を起こせば」といった態度のところもあったという。 メーカーは「これまで誠心誠意、試験の実施及び費用協力をしてきたが、運送会社は理解を示さず、不確かな根拠で箱に原因があると主張してきた。冷凍箱は保冷性能を確保するのみで、冷凍機により決定される冷却性能は左右できない」と主張。「冷凍機の性能・運転条件設定、積み荷の状態や積み方、外部環境、走行状態」にも問題がある可能性を示唆している。

     運送会社では不具合が出ていない古い冷凍車で非効率な運行を重ね、問題のトラックは冷凍機を通常よりも長時間作動させ、運行途中にドライバーがボディーに「水をかけて冷やす」ことまでした。各車両のボディー内に温度計を五つ装着し、独自に温度計測を行い、庫内温度が下がらないことも確認。

     同社は10年3月、前述したメーカーが実施した試験の「NG」結果を把握した。この試験の当事者ではないディーラーにメーカーから間違って送付されていたものが約2年後に偶然発見されたのだ。運送会社は「メーカーと当事者のディーラーが不具合の証拠を隠蔽していた」と憤慨し、「このことを知っていれば、2年間も時間を無駄にしなかった。自社で温度計測したのと同じ個所にNGが出ている」と説明。

     メーカーとディーラー側は「当時、試験結果を配布し説明している。運送会社は大変立腹していた様子で、配布資料を持ち帰ったかは確認できない」「NGの表記は積み荷がある状態での冷気循環の問題で庫内温度にばらつきが生じるという事実を表記したもので、保冷箱の設計・性能の欠陥を示すものではない」と、説明責任と製品に問題はない立場をとり、両者の言い分は平行線のままだ。

     22年7月に再度、関係者が集まり、今後の対応を協議。メーカーは8月、対象車両に「サイドドアロックロッド1セット取り付け」「リアドア・サイドドア クロスメンバー部ソフトゴム取り付け」「フロント断熱材100ミリ改造(吹付け断熱)」「バルクヘッド改造」の4項目の改造工事を実施することを承諾したが、その前提として「工事による箱内温度改善を一切保障しない」「休車補償など一切の費用負担を行わない」条件を提示。不信感を募らせた運送会社は、これに応じていない。

     運送会社では効率の悪い運行を続けた結果、収支が悪化し、事業継続の危機に陥っている。「最近はディーラーに連絡しても無視や居留守を使われるようになった。うちがつぶれるのを待っているのではないか」と話す。

     メーカーは「全国で同仕様の冷凍箱を多数納入したが、このようなクレームを受けたことはない」と明言しており、運送会社では「07年から08年春頃に冷凍車を導入した会社で、保冷箱に不具合が起きたケースがあれば教えて欲しい」と訴えている。(玉島雅基)

     
     
     
     
  •  
  •  
  • 「トピックス」の 月別記事一覧

     
  • トピックス」の新着記事

  • 物流メルマガ

    ご登録受付中 (無料)

    毎週火曜に最新ニュースをお届け!!

    ≫ メルマガ配信先の変更・解除はこちら