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    記憶に残る仕事

    2011年5月27日

     
     
     

     苦い思い出からタイガーマスクになった経験まで・・・。業界で働く人々の今までの経験の中から「記憶に残る仕事」を特集。各事業者のさまざまな記憶に残る仕事について聞いた。また、弊紙独自調査とともにトラボックス会員の協力を得て、アンケート調査を実施。多くの回答を得た。



    JR津山線・列車脱線事故 復旧作業を手掛ける

    hagiwara.jpg「一生に一度あるかどうかの出来事。鮮明な記憶として残っている」と萩原圭一常務(トータル物流、岡山市中区)。平成18年11月19日の早朝、縦4・8?、横5?、重さ約100?の落石によって歪められたレールに乗り上げる格好で、運転士1人と乗客25人を乗せた2両編成の列車が脱線した、JR津山線の列車事故を思い出しながら話す。

     「日曜日でゴルフに出掛ける予定だった当日の朝、旧知のJR関係者から連絡が入った」。急きょゴルフを中止し、同社が元請けとなって復旧作業に向けた準備が始まった。当初は同社の400?吊りクレーンを向かわせる考えだったが、「2次災害の可能性があったことに加え、クレーンを座らせるスペースの整地や補強作業などに時間を要したことで配車スケジュールが狂い、兵庫県の会社に550?吊りクレーンの出動を依頼した」という。

     「列車は脱線して傾いており、単純に吊り上げれば問題が生じることは予想できたし、車両が新しかったことでJR側も『引き続いて使いたい』という意向だった」。そうした状況を踏まえ、買ってきた模型の列車を使って吊り方や、車体を損傷させない作業手順などの検討を重ねた。

     事故から1か月ほど経過した時点で、ようやく復旧作業が始まったが、550?クレーンを運び入れるのに使ったトレーラは20台以上。「550?クレーンを組み上げるために160?クレーンを、その160?クレーンを組むのに40?クレーンが必要という具合で、組み立てから吊り上げ作業を終えてクレーンを解体するまでに2週間ほどかかった」。

     同社の事務所には当時の作業風景を写したパネルと、JR西日本からの感謝状が飾られている。「最善を尽くすが(車体を傷めない)約束はできないとJR関係者に伝えていたが、結果的に無傷の状態で作業を終えることができた。列車への愛着が強いからだろうが、JR側の責任者が涙を流して喜んでいた光景が忘れられない」と振り返る。(長尾和仁)

    救ってくれた新荷主

    sinkyou.jpg 大阪府堺市に本社を構える新協運輸(安田忠雄社長)は、今から11年前に荷主が倒産。当時、その荷主は同社の売り上げに大きく影響する取引先だったため、新たな荷主開拓を迫られた。

     そんな時、安田社長の友人の紹介で精密機械会社を紹介され、大口荷主倒産の悲劇から約半年で新たな荷主との取引が開始。新たな荷主は海外でも有名な精密機械メーカーで、同社にとって経営危機から救ってくれた荷主企業となった。

     同荷主と同社が初めて行った仕事が、精密機械の輸送。大型機械を扱う仕事であったが、荷主は同社を信頼して紹介後からすぐに仕事を依頼し、同社も荷主の思いにこたえるように安全に輸送した。同社長の記憶に残る、荷主との初めての取引だった。

     同社長は「新しい荷主と取引して11年、これまで一度も事故もなくこられたのは、当社を信用して取引してくれた荷主のおかげ。現在、この荷主は当社のメーン荷主となっている」とし、「長年取引してきた荷主が突然倒産し、どうなるのかと心配もあったが、今は新たな取引が行われたことで、景気が悪いといわれる中でも順調に事業を進められている。毎日のように精密機械などの重要な仕事の依頼をいただいており、感謝の気持ちでいっぱいだ」と語る。(佐藤弘行)

    交通安全教室に尽力

    tani.jpg 大ト協東北支部の青年協議会会長を務める谷正運輸(大阪府守口市)の谷昇生社長の記憶に残る取り組みは、「青年協議会で行った交通安全教室」だ。

     平成17年から始めた同教室は、小学校のグラウンドで交通安全の啓発活動として行っている。始めた当初は経験が全くなかったが、企画や講師もすべて自分らで行った。谷社長は「警察への交渉にも行き、すべてうまくいったので成功したと胸を張って言える」と振り返る。

     小学校で行うため、絶対に事故があってはいけない。「路面と砂地での運転の不安や、子供らを危険にさらしてはいけない」などと重圧を感じながら、「ABSが作動するため、本格的な急制動が再現できないため、ヒューズを外し実践さながらに近づけた」という。

     実際に目の前で見て体験できることは、子供や父兄にとってプラスになると考える。「今後も継続的に実施し、幼稚園でも行えるように取り組んでいきたい。あくまでボランティアなので、どこまで参加者を集められるかが重要」。
     「運送業界の取り組みを一般の人々に知ってもらい、業界をもっと理解してもらいたい」と同社長。「子供らに、将来の仕事にトラックの運転者が選ばれるようにしたい」と語る。(中村優希)

    幹線道路開通間もない頃

     「こんなの、いつまでも掲げていても仕方ないんやけれど」。近畿地方のトラック事業者はそう言いながら、事務所に掛けられた写真を指差した。宇宙ロケットを載せた大型トレーラの写真で、41年前の大阪万博当時、アメリカから借り受けたロケットが陸揚げされたときのものだ。20歳過ぎだったこの事業者は、開通間もない幹線道路をゆっくりと走ったことが思い出される、という。(西口訓生)

    袋小路に迷い冷や汗

    ozawa.jpg 「記憶に残っているのは苦い思い出。山梨から大阪へ初めての輸送で袋小路に迷いこんでしまった時は冷や汗が出たよ」と、山義(山梨県南アルプス市)の小澤順司社長はトラックに乗っていた時の思い出を話してくれた。

     それは社長になる前のことだ。同社は山梨県でダンプによる砂や砂利の輸送を専門としていたが、仕事の幅を広げようと一般貨物も扱うようになる。
     精密機械輸送の仕事で、初めて山梨から大阪までトラックで輸送した同社長。仕事で大阪まで運転するのは初めてだったという。

     無事に荷物を届けた帰りのこと。カーナビを付けていたので、その案内にしたがって運転していた。国道から側道に入っていく案内をカーナビが指示し、無意識に指示に従って道路を変更してしまった。

     そのまま道を進んでいくと、明らかにトラックでは通り抜けられないT字路に突き当たった。カーナビは乗用車が通れる道を案内していたのだ。

     道の間違いに気がついたが、そこからが大変。何度も切り返してUターンし、狭い道を後戻りすることになった。途中にトラックの幅ギリギリの場所もあったが、なんとか切り抜けた。荷台のアオリのヒンジ一つだけが電信柱に接触したが、ほんの少し塗装が剥げただけで済んだ。

     同社長は当時を振り返って、「荷物を下ろして、ほっとしていたんだと思う」と話す。その苦い思い出とともに、絶対に事故を起こさない安全輸送の大切さを思い、決意を新たにしている。(千葉由之)

    職場体験で中学生受入れ

     「トラック運送事業者は道路を借りて仕事をしているのだから、少しでも社会貢献ができたらと思ったのがきっかけ」と語るのは、ソニックフロー(東京都江東区)の西脇昌社長。地元中学校が総合学習の一環で行う「職場体験」の受け入れを10年間続けている。

     直近では1月17―21日の5日間、3人の生徒を預かった。生徒らはドライバーとペアを組んでトラックに乗り、荷物の積み下ろしなど実務に携わった。

     体験期間後に生徒らから、「時間通り行動することの大切さを学んだ。自分も生活の中で心がけようと思う」「荷物管理に対して、こんなに神経を使うとは思っていなかった」など、感想とお礼の手紙が届いた。西脇社長は「明るく元気に、一生懸命働いてくれた。私やドライバーが子どもらから色々と学ばせてもらう部分が大きい。会社にとって職場体験期間は貴重な時間で、毎年楽しみにしている。こういった取り組みを続けていく」と語る。(杉?あゆみ)

    パンを施設に寄付

     北陸地方で1月30日から降り続いた大雪のため、主要幹線道路の北陸自動車道と国道8号がおよそ2日間にわたり交通マヒ状態となった。日本商運(平木正廣社長、福井県吉田郡)でも、国道8号を東海地方から福井県に向かい走っていた数台のトラックが動かない車列に巻き込まれ、立ち往生した。

     結局、1日遅れで商品のパンを配送先に届けたが、配送先の担当者は交通事情を理解したうえで、「遅れた商品はもう必要ないですよ」と言われた。

     余ったパンをどうしようか考えた結果、地元の老人福祉施設などへ寄付することとした。最近話題となっているタイガーマスクさながらにパンを配り、施設からは感謝されたという。

     「商品がムダにならなかったばかりでなく、皆さんに喜んでもらえたことが何より嬉しい。いろんな意味で記憶に残る仕事となった」と平木秀典専務は話す。(加藤 崇)

    全国大会を実現

    yamada.jpg ヤマネット(山田泰壮社長、愛知県一宮市)は昨年10月、名古屋市で実践研修の第1回全国大会開催を実現させた。

     山田社長は「初の実践研修開講から約1年が経過し、全国大会にこぎつけることが出来た。私の仕事のなかでも最も記憶に残るイベントとなった。今後も期待に沿えるようカリキュラムを充実、進化させ、物流応援団長として貢献していきたい」と語る。

     昨年7月には「実践研修4か月トレーニング」を高知市で開始。毎月、同市に通い、「坂本龍馬の出身地でもあり、最初は緊張したが、OBらが途中から応援に入ってくれたこともあり、最後は盛り上がった」と振り返る。

     物流業界の活性化を目的に開始した「営業力&リーダーシップ強化、実践研修」はこれまで、愛知、静岡を中心に250人以上のOBを輩出。講座修了後も、OBらが集まり「泰壮会(たいそうかい)」を結成し、交流が続いている。

     今年、愛知で始まった9期生講座には、四国からの参加者も迎え、全国的な広がりは、拡大の一途をたどっている。同社長は「全国大会を開催することができたことが節目でもあり、今後もプラスのスパイラルを作っていきたい」と抱負を述べる。(戸嶋晶子)

    優勝パレードにトラックを提供

    kido.jpg 木戸運送(木戸脇通夫社長、岐阜県羽島市)は、プロ野球・中日ドラゴンズが07年の日本一と、昨年にリーグ優勝したときに実施した優勝パレードで、選手らが乗るトラック1台を提供、運転も同社で配車業務を担当する後藤保志氏が行った。社内にはパレードの際に撮影した写真が大切に保管されている。

     選手らは、落合博満監督らが乗るオープンカーに続いて、スポンサー広告が施された同社の平ボディーの大型車に乗り、名古屋市内をゆっくりとパレードした。走るスピードは非常に遅いため、道中は半クラッチでの走行。万一の事態に備えて整備担当者も随行したという。

     貨物車の荷台に人が乗るには許可が必要なため、警察署で手続きを行い、パレード2日前にナゴヤドームにトラックを搬入。ドーム内で特殊な装飾を行った。

     同社には、パレードの際にトラックに取り付けられた「日本一」と書かれたのぼり旗も保管されている。(中道幸男)

     
     
     
     
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