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トピックス
あの時が岐路だった
2011年9月25日
年々、競争が激しくなる運送業界。その中で生き抜いてきた業者達が経験した重要なわかれ道とは。「あの時が岐路だった」をテーマに各事業者に聞いた。
突然去った右腕 東奔西走の日々
「当時、同じ職場で働いていた同僚と一緒に始めたのが今の会社」と振り返るのは、山広運輸(千葉県船橋市)の佐久間明彦社長。
勤めていた運送会社の経営者が、放漫経営を行っていたため常に危機感を持っていたという。「このままでは会社は立ち行かなくなる」と考え、同僚とともに運送会社をスタートした。
しかし、資金が潤沢にあったわけではなく、自転車操業を繰り返していた。「稼いでも先行投資に消えてしまい、自分の給料も取れないくらい苦しかった」という。
そんな厳しい経営環境に、一緒に会社を始めた元同僚が根を上げてしまった。番頭として配車など一切を任せ、現場でトラックに乗っていた社長だったが、突然右腕がいなくなり、すべてを背負わなければならなくなった。先頭に立ち、営業から配車、トラックに乗ったりと、東奔西走の日々を過ごす。
業績は順調に伸び、今では車両80台、従業員は75人に増え、東京、静岡、成田に営業所を構えるまでに成長した。
「思い返せば、あの時、元同僚が去ったことで自分がやらなければならないという責任感が芽生えた。それが今につながっているのかもしれない」と話している。(高田直樹)
不況に直面、意識改革
山栄物流(山梨県笛吹市)の輿石典男社長の岐路は、リーマン・ショックの頃だったという。
当時、運送業界は燃料価格の高騰と不況という厳しい経営環境に直面していた。燃料サーチャージが始まり、コスト増加に対応した適正運賃収受が改めて強調されたのがこの頃だ。
「安全」は運送事業者の最重要課題だが、コストがかかる。そこで燃料の節約や車両コストの削減に取り組んだ。ドライバーにも燃料費や車両の管理費など、1運行あたりでどれだけかかるのか具体的な数字を知らせ、コスト削減の意識付けを徹底した。
効果は絶大だった。エコドライブなど省エネにつながる取り組みは事故防止にも効果を発揮した。今にして思えば、それはドライバーの意識が大きく変わるきっかけとなったのだ。(千葉由之)
野球が育てた今の自分
ウエストライン(奈良県大和郡山市)の中尾靖社長は、小学校から野球漬けの毎日を送る野球少年で、県立広陵高校3年生のときは一番ライトのレギュラーポジションで夏の奈良県大会に出場し、ベスト4まで進んだ。「野球をやっていなかったら今の自分はなかった」と強調する。
高校卒業後、大手家電メーカーに就職し、社会人野球の選手として活躍していたが、元々独立心が強かったため2年で退社。地元の運送会社のドライバーとして働くことになったが、3か月目に事故が発生。カーブでトレーラを横転させてしまった。
横転事故で荷主の常務から目を付けられ、事務所に行くたびに運転上の注意を受けていたが、ふとしたきっかけで常務の趣味が野球であることがわかり意気投合。その後、独立してみないかと熱心に持ちかけられ、決意したという。
独立して6年目を迎えるが、野球つながりで仕事は年々増加している。
現在、トレーラヘッド10台、シャシー28台、大型車1台を保有。
現在も、5年前に同級生と立ち上げた社会人野球に属しており、深く関わっている。「野球をやっていなかったら今の自分はなかった。野球の結びつきだらけで、仕事上、大変役に立っている」と話している。(大塚 仁)
顧客の分散化を意識
屋根材の輸送をメーンに展開する加成屋(杉山弘幸社長、静岡市葵区)は95年に建築板金の販売会社としてスタート。創業以降、業績は順調に推移していたものの、売り上げの大半を占めていたメーン顧客の業績が急速に落ち込んだことを契機に、一般貨物運送事業者へ転換した。
顧客企業はその後、民事再生法を申請した。これを教訓に顧客の分散化についても常に意識しながら事業運営にあたっている。
現在は求荷・求車サイトなどを通じて多くの同業他社とネットワークを構築。「断ったら次は来ない」という考え方を貫いている。多くの事業者が車両数を減らし、月末などの繁忙期になるとトラックが足りなくなる中、「相手の足元を見て値上げすることはしない」と、繁閑に関係なく適正運賃の維持を図っている。
また、ドライバーは配送が完了すると、発送元の荷主に電話で報告することが当たり前となっているほか、09年11月から燃費向上を目的に報奨金制度を開始するなど、社員のレベルアップにも力を入れている。
これらの取り組みによって新たな取引先も増えている。しかし、「大手だからといって安心できる時代ではない。どんな企業と取引してもリスクは必ずある」と、新規顧客に対しても警戒を示すことなく付き合っていく考えだ。(中道幸男)
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