-
トピックス
次代TSの在り方は… ラーメン店進出で「復活」も
2011年10月12日
「食事も宿泊も廃止になり、すでに火が消えかけていたトラック・ステーション(TS)を復活させたのはラーメン店だった」と、石川県にある金沢TSの当時の状況を説明する、神戸ナンバーの4?ドライバー。長距離ドライバーにとってTSはオアシス的な存在。しかし、一般国道の利用が中心だった以前とは事情も変化しており、立ち寄るドライバーが減るにつれてテナントの撤退や宿泊・入浴サービスを停止するTSも目立ち始めた。「業界のため」の儲け度外視の事業というなら話は別だが、現状では民間企業を招き入れての活性化も難しい。こうしたなか、TSの再生に意欲を見せる希少な企業も登場。客層をトラック・ドライバーに絞った店作りに挑んでいるラーメン店チェーンだ。
「(手当が出て)高速道路を関東方面へ走るときは、大半のドライバーが東名高速・牧之原SA(静岡県)をめざす」と広島ナンバーの大型ドライバー。「施設が広いこともあるが、パーキングや食堂をトラックと一般車両向けに分けているのがいい。食事のメニューも違うし、おかわりも自由」という。続けて和泉ナンバーの大型ドライバーにも話を聞くと、「無料の畳スペースで横になれるし、マッサージチェアがタダで使えるのもうれしい」と話す。近年は運行費を受け取って出発するドライバーも減っており、「自腹で宿泊代を払うくらいなら、2泊までは車中泊で我慢する」との声が多く聞かれる。ただ、「入浴と宿泊を含めて3000円でお釣りがくるTSは貴重な存在」とも打ち明ける。
一方、全ト協の計画に基づき、貨物自動車運送事業振興センターが建設・管理・運営に当たっているTSは現在、北海道から鹿児島県まで36道府県の40地点に設置。地方ト協が独自に建設・運営している共同休憩所などもあるが、ほとんどで利用者数が伸び悩み、サービスを部分的に中断する例も出ている。苫小牧(北海道)や新潟、亀山TS(三重県)と同様に、東神TS(神奈川県)も8月1日から食堂と宿泊施設が利用できなくなった。
全ト協でも次代を見据えた新しいTSの姿を意識しているものの、そう簡単に前進しないのも現実。「昭和50年代以降の急速なモータリゼーションの進展で輸送モードがトラックにシフトされる一方、長距離ドライバーの安全を確保する休憩施設の必要からTSが生まれた。当時はコンビニなどもなく、ドライブインも観光バスが対象で、(長時間駐車の割には儲からないなど)嫌がられていたトラックのために交付金を活用して整備した」(広報部)と、TS誕生の経緯を説明する。
これまでに一定の功績を残したことは間違いないが、「高速道路の利用増や道の駅、大型駐車場を備えたコンビニに立ち寄るトラックが増加するなど、近年のTS利用は相対的に減っている。この10年余りは(新しいTSを)作っていない」(同)と指摘。また、膨大な固定資産税や管理費が重くのしかかっていることも確かで、「(一般客を対象にしている高速SAやコンビニなどとは違って)収益確保は簡単ではないと思うが、民間企業から(テナント出店の)声が上がれば歓迎する」とも。
こうした時代の変化に敏感に反応する企業も登場し、その代表格が冒頭でドライバーが口にしていたラーメン店チェーンの「ゆにろーず」(大野秀之社長、茨城県取手市)。関東を中心とする直営19店のうち16店で大型トラックの受け入れ態勢を整えているだけでなく、茨城と金沢、大宮の3TSに加えて鹿嶋トラック休憩所にも出店している。ドライバーが話していた通り、「1年半ほどのブランクがあったと聞いていた」(大野伯之専務)という金沢TSの入浴・宿泊施設が同社の進出によって再開されたのは事実だった。
「ターゲットにしているのはトラックや建設業界の関係者で、一般客からすれば店内の雰囲気やメニューに違和感があるかもしれない」(同)という。ドライバー客のアンケートを基に「もっと安く」「もっとうまく」を追求。「振興センターさんからは地元企業を優先するという話を聞いているが、チャンスがあれば、北海道から九州まで全国のTSへ出店したい」と、ドライバーにとってのオアシス作りに意欲的だ。(長尾和仁)
-
-
-
-
「トピックス」の 月別記事一覧
-
「トピックス」の新着記事
-
物流メルマガ