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    常識化した非常識 税理士から的射た指摘

    2012年5月28日

     
     
     

    truck_0528.jpg 「燃料高に労働時間の問題も重なって、最近は自社便で長距離を走らせることは極端に減った」という運送会社(広島市)の社長は、顧問税理士から目に見えて増えた傭車への支払いを「減らせないですか」と注文された。「うちクラス(保有台数15台)が下請けに仕事を回すこと、それにともなって支払う傭車費がかさみ、場合によっては運賃をもらうより先に(傭車先へ)支払わなければならないことがある…そうした疑問は理解できなくもない。ただ、『見た目の売り上げを増やしているに過ぎない』とまで言われると大人気なくキレてしまうが、的を射た指摘かもしれない」(同社長)と苦笑いしている。



     同業社長の紹介で現在の税理士と付き合うようになって3年ほどになるという。「運送事業に詳しいというわけではないが、顧問料も安いから…」と社長。

     機械関係の輸送がメーンで、かつては広島から関東・甲信越方面にもトラックを走らせていたが、「軽油が高騰した4年ほど前から傭車を使うケースが増えた」。さらに、長距離ドライバーの労働時間が厳しくチェックされるようになったことで、「いまは突発の仕事を除いて傭車。おのずと外注費の支払いも月間300万円くらいに膨らんでいるが、それを自社便で賄うか、その仕事自体を手放すかを考えたほうがいい…税理士の指摘はそういう話だが、受注量のピークに合わせてトラックを持てる商売じゃないことが理解できないみたいだ」という。

     住宅関連資材をメーンに扱う岡山市の運送会社も、担当の税理士から「傭車費用を減らすべき」と指摘された。社長によれば「トラックがないという理由で取引先の依頼を断れば、すべての受注を失う可能性だってある。『中身がともなわない売り上げ』『運賃をもらうより先に傭車先へ立て替えて支払うリスク』と税理士は説明するが、そんなことは理解している」と話す。

     ただ、「見た目の売り上げを増やしているに過ぎない」との指摘には、両社長も複雑な表情。軽油単価が3ケタへと高騰した平成20年ごろから中・長距離の実運送を敬遠するムードが強まり、下請けは孫請けに、さらに下へと傭車を繰り返した結果、トラック業界の下請け構造は一段と多層化してきた。

     「7万円の運賃の仕事を5万5000円で水屋に流した運送会社が、結果的に4万円で自社トラックを走らせるという例もある。その場合、同社は一つの仕事で11万円の売り上げを立てるだろうが、その辺りは確かに疑問だ」と岡山の社長。広島の社長も「傭車する場合は毎年の営業報告でも取扱手数料だけを計上するようにしているが、いい加減になっている面は否めない。そういう部分では税理士の指摘は的を射ている」と苦笑する。

     かねてトラック業界では、「実際には一つしかない仕事がデータとして四つにも五つにも化け、物流事業の市場規模はいたずらに膨らんでしまい、ひいてはトラックの過剰感、厳しい経営実態が見えなくなっている」(姫路市の運送社長)との声が聞かれてきた。物流の素人である税理士だから感じることができた業界の「常識化した非常識」なのかもしれないが、考えさせられる部分であるのも確かだ。(長尾和仁)

     
     
     
     
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