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    「ほとけごころ」アダに? てんかんの社員を雇用

    2012年8月8日

     
     
     

    truck3_0806.jpg 病気による発作が原因で、ひとたび事故を起こした従業員を、「このまま野に放っても…」と雇用継続を決める。そんな「ほとけごころ」が現在の法体系ではあだになるどころか、経営者に悪意があると判断されるケースがありそうだ。てんかんなどの疾患が話題に上ることが多く、潜在化していた事故の原因が病気によるものだと分かるようになったことや、雇用環境の悪化という時代背景が経営者のリスクを増幅している。



     機械製品などを輸送する中小規模の運送会社。数年前、50歳代の男性ドライバーが玉突き事故を起こした。幸い、被害者側も当のドライバーも軽傷で済んだが、事故原因を追及していくうちに、ドライバーが同社に入る数年前から、てんかんの発作で病院に通っていたことが分かった。

     「どうして言ってくれなかったのか」。社長はなじったが、「言えば雇ってもらえないと思って…」とドライバー。社長は、「それはそうだが、言ってくれれば倉庫作業など配置換えもできたのに」と悔やんだ。この言葉は、ケガが完治して復帰した段階のドライバーにも適用できる。社長は、運転免許証を返納する代わりに、軽作業への配置転換をすることに決めた。ここまでが3年ほど前のことだ。

     最近になって、ある指摘が社長に入った。「病気があることを知りながら雇い続けると、その従業員がケガなどした場合、場合によっては経営者の過失が重くなる場合があるのでは」。3年前の「ほとけごころ」が自身のリスクになって帰ってくる可能性があるとは…。さっそく社労士などに問い合わせてみることにした。

     病者の就労制限について労働法は、心疾患や伝染病などの場合を特定し、雇い側に対して就労を禁じている(労働安全衛生規則61条)。しかし、今回のてんかんのような疾患に関して労働法が特段の規定を置いている事実はない。労働安全衛生法は、作業環境や行為の類型を雇用者側に義務付けるものだが、特定の病気があることで通常の労働安全対策以上の取り組みを義務付けたものではない。

     しかし、労働局などによると、民事上の安全配慮義務、つまり事業者が予測しえた範囲内で通常以上の配慮は、病者を雇用する以上はまぬがれえないとする。実際、病気であることを知りながら相応の対策を取っていなかったケースで、雇用者の責任が重くなる民事上の判例があるという。

     また、ケガを起こしやすい病者を雇っていれば、労災が発生する確率も、それだけ高まることになり、全ての労働安全衛生法上の規定が満たされているわけではない一般の事業場では、病気・ケガと違反事実の因果関係とは別に法違反の指摘が出される可能性も高まることが想像される。

     では、「病気の発作によるケガについては事業主の責任を問いません」といった約定を労使で交わしておくのはどうか。実はこれも、事業主にはリスクが増大する結果となる可能性が大きい。大阪労働局は本紙取材に、「今回のケースでは、雇い止めをしないと経営者が3年前に一度、決定している。その判断を蒸し返す形の約定は無効ではないか」と話し、むしろ、ケガをする可能性が高いことを認識しながら雇い続けたことを第三者に知らせるようなものとなる可能性も高いという。

     こうした事情に別の事業者は、「雇用の維持は国策でもあり、ほとけごころを起こした事業主を責めるのは酷。何らかの施策が必要ではないか」と話している。(西口訓生)

     
     
     
     
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