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新トラック運送経営のヒント(32)ダイナマイトの火に気づく
2012年8月24日
「30年近くやってきて、初めて死亡事故を起こしただけなのに…」。ある運送会社の経営者の言葉です。「こんなに厳しいんですね。今の行政処分は」と、3日間の営業停止処分が決まり、しみじみと話していました。
以前の連載でお話しした「事故と天災は忘れた頃にやってくる!」という格言。統計データによりますと、運送会社が1年間で「追突人身事故」を起こす確率は約1%。100台の運送会社の規模で1年に1件の確率です。しかし、運送会社は中小規模が圧倒的多数で、よくあるのは20─30台規模です。3─5年に1回くらいしか、追突人身事故は発生しない計算になります。冒頭の運送会社は約20台の会社でしたので、死亡事故を起こすまでの30年間で、追突人身事故は約6件発生していたことが推定できます。この6件のうち、ほとんどが「軽傷」で終わることが多かったでしょう。
ところが今回、ついに死亡事故を起こしてしまったのです。これまで30年間で最低でも5、6回くらいは安全管理体制の見直しをするチャンスがあったはずです。何回も軽傷事故で済んだことが?アダ?となってしまったのです。
実は、この点が「安全管理」の厄介なところです。30秒後に爆発するダイナマイトの火なら誰でも必死に消そうとします。しかし、30年以内に爆発するダイナマイトの火は消そうとしないのです。数か月や1年先のことを考えるのなら管理者でもできます。しかし、5年先、10年先を見据えて有効な手を打つことは「社長」以外できません。社長以外には、そんなリスクが潜んでいることに気づくこともできないからです。
「うちの安全担当は何もやらない」。そんな愚痴もよく社長から聞きます。でも現場をよく観察すると、配車マンが売り上げで評価されているため、安全を軽視する環境を、社長自らが作り出している場合が多いのです。
本当に改善したいのであれば、どの仕事を減らし、新たにどんな仕事を取るべきかを社長自らがある程度、指示していかなければ、安全など絶対に確保できません。社長からの安全に関する明確な指示がないことで「事故を起こす土壌」が30年の歳月をかけて熟成され、ある日ある時、取り返しのつかない悲惨な事故となるのです。
30年以内に爆発するダイナマイトの火に気づけるか? 運送会社の社長に必要な資質ですね。
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