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時給制は普及するか 中田商事・中田社長
2012年9月6日
平成22年4月に施行された改正労働基準法に対応するため、乗務員の賃金体系を従来の歩合制から時給制へと移行させた中田商事(中田純一社長、三重県伊賀市)。当初は乗務員から多少の反発があったものの、それまで培ってきた人事考課制度を活用したうえで時給を決めるなど、可能な限り公平な仕組みを構築し、今や時給制は同社にとってコンプライアンス実現の象徴ともなっている。以来、時給制をテーマに経営者セミナーに引っ張りだこの中田社長。しかし、その場の反応は上々でも実際には広がりを見せていない現実もあるという。
2月に開かれた、あるシステム会社が主催したセミナーで同社長は、「ドライバー賃金を歩合から時間制に切り替えて改正労基法をクリア」をテーマに講演。40人以上の運送経営者が説明を聞くために集まった。それまでの歩合制から完全時給制に移行した理由について、法令違反に対する厳罰化という社会的傾向と改正労基法が背景にあったと説明。「最低賃金のクリアや時間外手当の適正な支払いなど、10年後の自社をイメージすれば時給制の導入は必然だった」と、将来を見据えたコンプライアンスと人材確保の重要性を訴えた。その上で、就業規則の変更や労働条件通知書の取り交わし、人事考課制度との組み合わせ方式など、時給制に移行するまでの手順や、制度を導入することで発生する新たなリスクとその対策などについて詳しく説明した。同社長は5月に三重県で、6月には福岡県で同じく時給制をテーマにしたセミナーを開催している。それぞれ経営者が多く集まっていることから関心の高さは相当なものだが、参加各社が時給制を自社に応用しているかといえば「実際には、ほとんど浸透していない」という。
自社に時給制を導入できない、あるいはしづらい理由について、もっとも多かったのが「すでに歩合制が定着しており、自社に導入するのは困難」という回答。歩合制を廃止することによって、乗務員のモチベーションが下がることを懸念する意見が多かった。そのほかにも「長距離が多いので難しい」「年功を反映しづらい」などという意見があった。
一方で、すでに一部時給制を採用している企業もある。「法令順守のために、まずできる部門から試験的に導入している」とするのは関東地方の老舗運送事業者。
時間外手当の不払い問題について労働裁判が頻発している昨今。さらにトラックによる追突死亡事故が多発しており、今後、労働時間に関するコンプライアンスがますます重視されるのは間違いない。同社長は「時給制への移行は経営者にとって勇気と根気が必要な作業だが、皆が始めてからするのでは競争から取り残されてしまう」と述べ、個々の実情に合わせたかたちでの時給制導入を勧めている。(加藤 崇)
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