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北海道で進む「リージョナル・ロジスティクス」
2013年1月21日
学識経験者の間で近年、話題にのぼる「リージョナル・ロジスティクス」という概念。地域経済に役立つ物流体系の構築や、地域全体で物流の効率化・活性化を図る取り組みなどを指し、ビジネスオンリーのロジスティクスとは対比されて語られる場合が多い。これを実践する動きが北海道で活発化している。背景には、市場が縮み、沈んでいくという将来の見通しに対し、物流の効率化によって地域振興の可能性を見いだそうという行政や企業、学識経験者、経済団体など多くの人の危機感と期待感がある。
物流やロジスティクスというと、生産者から消費者にいたるモノの流れに関する企業単位の活動として受け止められるのが一般的だが、北海道では近年、これを地域経済や社会システムの文脈で位置付ける考えが普及してきた。北海道の物流の課題ははっきりしている。日本の国土の5分の1以上を占める広大な面積の中に、日本の人口の20分の1以下しか生活していないため、物流のパイが小さく、どうしても効率が悪くなってしまう構造だ。更に人口減少が加速しており、これに伴って物流も一直線に縮んでいる。道内相互間の物流量は10年間で3割近く減少しており、これを反転させる秘策は簡単には見つからない。
昨年、道内で開催された物流セミナーで、神奈川大学経済学部の齊藤実教授は「これまで物流は、地域経済の中であまり重要視されてこなかった。物流のイノベーションを図ることにより、地域経済の活性化を図ることは可能。物流は企業間レベルの問題であり、地域経済の中に位置づけるという発想がなかったが、近年、物流機能を見直すことにより、地域経済の活性化に貢献できるという見方が少しずつ出てきている。これまで行政による物流への支援は、インフラ整備に関わる政策が中心だったが、個々の企業の物流活動を支援して物流産業を育成するという視点が出てきている」と講演した。
また、札幌大学経営学部の千葉博正教授は、同様の問題意識として、「地域全体として物流を効率化させる3PLの仕組みが必要だ。ビジネス・ロジスティクスだけではなく、ソーシャル・ロジスティクス、リージョナル・ロジスティクスの側面を考えなければならない。北海道の物流の課題を考えた場合、企業活動の側面だけではなく、物流効率化を社会システムとして考えることが重要」と捉えており、「地域に役立つ物流システムを展開することが必要だ」と問題提起する。
難しい物流環境だからこそ、それを乗り越えようとする考えが生まれてくる。北海道では、このような考えと呼応した具体的な動きが出始めている。(玉島雅基)
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