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    「荷物保険」を悪用する荷主 巻き込まれる運送事業者

    2013年4月24日

     
     
     

    truck3_0422.jpg 依然として収益的に厳しい状況にある運送業界だが、荷主の経営環境も同様に厳しい。本業でまともに収益が上がらない荷主の中には、保険の制度を悪用して利益に結びつけようとするところもあるようだ。関係者によると、運送事業者が荷物に損害を与えた場合に適用される荷物保険を悪用するケースが近年、出てきているという。荷物保険は少額であれば使っても保険料が上がりにくい性質を持っており、この盲点を利用した形だ。荷主の間では荷物保険を悪用することを「破損を作る」と呼んでいるが、立場的に弱い運送事業者が巻き込まれようとしている。



     関西のある運送会社では、建築資材の運搬を行っている。今年1月の大雨時、ベニヤ板、石膏ボードを平ボディー車で運んでいたが、荷主の出荷担当者が突然、運転者に対してシートをめくるよう指示してきた。

     運転者がちゅうちょしていると、担当者は「いいからめくれ!」と命令。荷物は数秒間、土砂降りの雨にさらされ、大量の雨水を含んでしまった。翌月、運送会社には荷物の破損代として荷主から100万円の請求書が届いた。運送会社は加入している荷物保険の手続きを行い、その後、保険会社から荷主に丸々、請求金額が支払われたという。

     荷主は水濡れしたベニヤ板、石膏ボードの廃棄処分を行うことを保険会社に報告していたが、実際は乾かして転売され、運送会社へは保険金から協力費が支払われたようだ。

     荷物保険の正式名称は「運送業者貨物賠償保険」。運送業務中に受託した貨物に生じた損害に対する賠償責任を幅広く補償し、前年度の売り上げによって掛け金が決まる。保険代理店によると、荷物保険は自動車任意保険のように保険金を使うと等級が上がり、翌年から保険料が上がることがないと説明する。

    「荷物保険も使えば保険料は上がる。しかし、保険金が高額であれば専門の鑑定士(アジャスター)が入って調査し、翌年からの保険料に影響するが、実際は、100万円以下の少額であれば詳しい調査は行われず、保険金も請求通りに下りるケースが少なくない。保険料が上がらないケースも多い」。

     自動車保険の等級情報が保険会社間で管理されるのとは異なり、荷物保険は保険会社間で情報管理されておらず、また、保険会社同士で競って顧客を獲得する保険商品であることと関係しているようだ。荷物保険を悪用している荷主は、わざわざ複数の運送会社を使って、異なる保険会社から保険金の支払いを受けるようにしているようだが、関係者は「少しでも利益を出すため、赤字を補填するために破損を作っていく荷主が出てきている。取引上、立場的に弱い運送会社が利用されているが、このような行為は明らかに犯罪で、運送会社も犯罪に加担していることになる」と注意を促している。(大塚 仁)

     
     
     
     
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