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荷主勧告制度改正後もザル法? 荷主に罰則なければ実効性ない
2013年7月16日
「荷主勧告制度」が今月中にも改正となる。同制度は局長通達により運用されているが、過去3年以内に「警告的内容の協力要請書の発出実績」がなければ、荷主勧告を発動できない。しかし、改正では「発出実績」がなくても「荷主の行為に起因」すると認められれば即時「発動」できるようになる。ただ、パブリックコメントなどで改正の概要を知ったトラック業界からは「荷主に対する罰則もなく、完全にザル法。『標準運賃』と同じで伝家の宝刀になってしまうのでは」と危惧する声も出ている。
荷主勧告制度の運用は局長通達「荷主への勧告について」(平成15年2月14日付・国自貨第103号)で行われている。当該荷主に対し、過去3年以内に「協力要請書」の発出実績がなければ荷主勧告を発動できず、さらに違反行為は?過労運転?過積載運行?最高速度違反の三つに限定。違反行為が「主として荷主の行為に起因する」と認められた場合、荷主勧告の対象となる。ただし、同制度の制定以来、荷主勧告は一度も発動されていない。改正では、荷主が?非合理な到着時間の設定?やむを得ない遅延に対するペナルティ設定?積み込み前に貨物量を増やすような急な依頼?荷主が管理する荷捌き場で、手待ち時間を恒常的に発生させながら実運送事業者の要請に対し行われるべき改善措置を行わない――など勧告発動対象の具体的な行為を明確化。協力要請書や警告書の発出なしに、即時荷主勧告ができるようにする。いかにも「悪質な荷主には厳格な対応」を設定したかのようだが、トラック業界には不満がくすぶる。
その一つが、改正後も荷主勧告は「輸送の安全確保命令、行政処分を受けたトラック事業者」の荷主に限られること。全ト協もパブコメで改正を評価する一方、「処分を受けていない事業者の荷主に対しても荷主勧告が発動できるよう、国交省に通報制度を設置して勧告を発動するなどの制度設計をするべき」と提言。東ト協なども「機動的に勧告を発出できる制度にすべき」と同様の意見で、さらに「荷主に罰則を適用できる制度にすべき」と提案している。
東京のある事業者は「『荷主の優越的地位の濫用』を考えれば、トラック事業者がパクられてからの荷主勧告では順番が逆ではないか」と嘆く。あるト協幹部は「荷主に罰則がなければ実効性はほとんどない」と断言。別の職員は「間違いなく弱い者イジメなのだから国交省と公取委が連携して、カルテルや入札談合の課徴金のように『目の玉が飛び出るほどの罰金』を設けるなどしなければ荷主の悪質な行為はなくならないだろう」と話す。
現在、悪質な荷主に対しては1回目が協力要請書、2回目に警告書を発出しており、22年度が全国で協力要請書68件(警告書1件)、23年度は同88件(同ゼロ)、24年度は同60件(同ゼロ)という実績だ。荷主勧告に至らないのは「荷主が関与した(強要した)ことの立件が難しいため」(国交省)で、関係者の多くは「改正後もこの点は変わらないだろう」と見る。同省貨物課は「運用通達の見直しであり、通達の範囲内なのでこれ以上は無理。荷主を罰するというなら法改正が必要」と説明する。
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