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    府県またいで不正軽油の取引 「蔵出し化」で対応を

    2014年8月1日

     
     
     

    truck_0804.jpg 軽油引取税をどの段階で課税するのか。値下がりの見通しが立たず運送事業者によっては輸送原価の3割以上にも跳ね上がっている軽油は、課税負担の公平性の観点からも確実な課税が議論の対象になりそうだ。課税主体の県の担当者からも、「今のような取引課税制度ではなく、蔵出し課税に変えない限り、いたちごっこが続く」と見る向きは定着しているのだが…。



     「府県境をまたいだ不正軽油の取引が幅を利かせている」。軽油の取引事情に詳しい近畿地方の燃料販売業者A社は最近、このような傾向を見て取っている。100?から200?も離れた場所に本社のある別の燃料販売業者B社が、都市部のある運送事業者に振り出した納品書。そこに書かれていた軽油の単価は、6月の時点で市価よりも7円程度安かった。「製油所から出荷される時点の価格よりも安い!」。

     曲げて納品書を見せてくれた運送事業者には、その事実を伝えなかった。だが燃料A社は、「まともなものならあり得ない単価。どうしてあのような価格で売れるのかは自ずと分かる」と本紙に話す。

     価格が市価よりも著しく安い理由が、軽油に別の液体を混ぜることによって作り出されるとすれば、そうした課税逃れをただすのはまず、運送会社の燃料タンクの所在を管轄する府県の税務当局だ。県税事務所はタンクの中身を定期的に調査しているからだ。しかし、タンク所在の県税事務所には、他府県にある燃料供給元の販売会社を調査する権限は法的に与えられていない。

     こうした事案を捕捉するための県税間のネットワークは存在する。1991年9月、旧・自治省が都道府県課税部局宛てに出した事務連絡には、こうした場合、「速やかに当該違法混和軽油などに関する調査状況などを通知するものとする」とあり、供給元にも調査が及ぶ仕組みになっている。

     例えば兵庫県の場合、こうした通知を他の府県に出した件数は毎年10件程度。逆に他府県から連絡を受けた件数は年に5件程度にとどまるという(県企画県民部税務課)。燃料A社は、他の販売会社と連名でこうした府県間取引の実態解明や滞りない税務行政の執行を求めて、県知事宛てに文書を出す用意をしている。A社は、「ここ1年程度で、あちこちでB社の名前を聞くようになった。早く摘発をしてもらわないと公正な取引ができない」と、課税当局の対応の遅さに憤る。

     燃料販売会社のこうした憤りは、運送業界でも同じだ。運送業界では「書面化」の取り組みなども徐々に進むなど適正取引の推進に躍起になっている。ただ、原価の4割近くを占めるようになった軽油価格の中で不正な物が出回ると、そうした推進運動も軸足が定まらないのは明らかだ。

     国税のガソリン税と都道府県税の軽油の課税方法での大きな違いは、「蔵出し課税」か「取引課税」かにある。蔵出し化すれば、出回る軽油が全て課税済みのものとなり、不正軽油は大幅に減少するとされる。

     実は2年前、軽油引取税は、製油所からの出荷時に課税する蔵出し課税化することが論点とされていいタイミングがあった。それは、軽油引取税の免税措置が2012年3月末で期限切れで廃止されるという事情があったからだ。そして15年3月末で、現在でも免税の対象として残っている農業や漁業用の軽油についても免税制度が期限切れを迎える。免税軽油制度が大幅に残るようであれば、蔵出し税化したときの還付制度が煩雑になり過ぎるなどの影響が大きいとされ、免税制度を残すことが目的となって蔵出し税化にストップがかかる圧力が働くと指摘する燃料業界関係者も多い。

     ある関係者は、「農漁業の特権を守るために、複雑な取引課税を残してしまうのは本末転倒で、現政権の成長戦略の本気度を見るキーポイントとなる。運送業界も適正取引を本気で考えるなら、蔵出し化の是非を論じるなどがあってもいい」と話す。

     
     
     
     
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