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    トラック事業者の荷待ち時間「港湾運送の外部性」不足する作業員

    2014年11月5日

     
     
     

     「港湾」といえば、物流という一本の線で結びついているはずのトラック運送事業者ですら、どこかよそよそしい印象を持つ人が多い。そして、「ウチはコンテナ陸送はやっていないから関係ない」と言い切る向きまである。しかし、少なくとも積み込みや荷下ろしのためトラックを港湾地域へと走らせたことのない事業者は少数派だろう。そしてそこでは、物流という同じ括りではあるが、異なる法律で、それぞれ縛られた業態の人間が接点を持ち、互いに影響を与え合うという点で「外部性」を持っている。港湾からトラックに与える外部性が「荷待ち時間」では、コンテナ陸送事業者のものとなんら変わらない。



     兵庫県伊丹市にあるトラック運送事業者は週に二度ほど約30?離れた神戸・ポートアイランドの港湾倉庫へ4?車を向かわせる。荷主は機械部品を輸出するため、この運送事業者に3か所の港湾倉庫まで輸送するよう指示する。いつも空いていてスムーズに荷下ろしができるのがM社の倉庫。逆に、いつ行っても待たされるのがK社とS社の倉庫だ。

     低層建てのS社の倉庫は、港湾の道路から入門し、その裏側に荷物の下ろし場がある。「持込」と書かれた受付に伝票を渡し、その後約2時間、倉庫作業員の昼休みなどに当たると3時間以上の待ち時間が発生することもある。こうした状況は、持ち込みだけでなく、貨物の引き取り時にもよく発生しているという。トラック運送事業者は、「繁忙期というなら事情を察することもできるが、いつ行っても2時間以上待つというのが理解できない」と話すが、改善のための行動を起こしたというのでもない。荷主に待ち時間の話はするが、競合する運送会社もあるため、待ち時間の料金を別途請求できるというものでもない。

     神戸市内の食品輸送のトラック事業者も同じような経験がいまも続く。先述の同じK社。ポートアイランドの港湾地域に2年前に竣工した食品の最新鋭倉庫は開業当時、最長で12時間も待たされる状態だったが、今では約2?3時間へと縮減されている。トラック事業者は、「作業員が新倉庫に慣れてきたため時間が短くなったのだろう」と分析する。受け取るロットが小さいため止むを得ないとしながらも、トラックの中で待機させなければならない事態には、いまも打つ手がない。これらはいずれも港湾地域にある倉庫での出来事だ。コンテナヤードの前で2?3時間も待たされるというコンテナ陸送業者と、ほぼ同様のことが日常で起きている。

     こうした荷待ち時間の発生の原因として考えられるのが、港湾荷役に当たる「ギャング」と呼ばれる作業員不足が懸念されていることは、先の本紙でも取り上げた。要は、作業員は船積みに当たるのが最優先で、トラックの荷受け・荷積み体制がおろそかになりがちということだ。また作業員数は、港湾運送事業法で確保すべき作業員数の下限が定められているが、昨年度の近畿運輸局による監査の結果、大阪の「阪南港」の港湾荷役業者で、その下限数が未達だった状況もあった。また、港湾運送の元請け会社と下請け会社のそれぞれの作業員の数え方とみなし方で、作業員数をあやふやに数えることができるという港湾運送事業法のあり方も指摘した。

     阪南港の作業員数割れについて、近畿運輸局は作業員数を増やすよう行政指導したのが今年3月14日。それから半年以上が経過するが改善は全く見られないという。また、行政処分の基準を定めた国交省内部の通達には、二度以上の監査に関しては規定がないという。港湾運送事業法17条2項に定めた行政処分について近畿運輸局貨物・港運課は、「やっていない」と答えている。また、今に至るまで港湾運送事業者の処分そのものが1件もないという。同課は「おそらく全国的に見てもないと思う」(岡野正男課長)と話す。

     港湾運送業がトラック事業に対して荷待ち時間という外部性を持つ事例は全国的にも発生する事柄だ。それが作業員の人手不足に一因があるという指摘がトラック運送業界から上がっている以上、少なくとも港湾運送事業許可や処分権限を持つ国交省、運輸局が適切に法を運用しなければ、トラック業界からの指摘に少なくとも応えていることにはならない。

     あるトラック事業者は、「人手不足のツケをトラックが時間待ちという形で払っているとするならば、見逃せない事実だ」と話している。

     
     
     
     
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