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中継輸送「しっかりした制度設計がカギ」責任の所在とコスト増
2014年11月7日
国交省は平成27年度概算要求に、ドライバーの働き方を変える抜本的な取り組みとして、「ITを活用した中継輸送の実証実験」を掲げた。「長距離ドライバーの減少」「法令順守」が叫ばれる今、中継輸送という手段を通して、こうした諸課題の解決の糸口を見いだすためだ。ただ、中継輸送による運賃増に対し荷主側は一定の理解を示すものの、採算が取れるだけの運賃を確保できるのか不安視する物流事業者も少なくない。それだけに、運賃収受の仕組みを含めたしっかりとした制度設計が成否のカギとなる。
中継輸送とは、一つの運送を複数人で分担する「働き方」で、不規則な就業形態や長時間労働の解消で短時間勤務なども可能とし、女性・若年層などの新規就労と定着も期待されている。「中継輸送」には、さまざまな方式が考えられる。「リレー方式」は、一連の仕事を複数の会社で分担するという点で同じだが、例えば、A社が東京から名古屋まで、B社が名古屋から大阪まで運ぶ場合、契約はそれぞれが担当する運行について結ぶことになる。そのため責任問題などのトラブルは起こりにくいが、積み替え時に荷物が痛むリスクや、リードタイムが長くなるといった課題が残る。コンテナを積み替える場合、まず共有コンテナを持つ必要があるが、誰が保有し、空きコンテナの移動と保管はどのようにするのか、細かい取り決めが必要だ。さらに、コンテナを移動するための大型クレーンなどの設備投資が負担になる。
トラクターヘッドを付け替えて輸送する場合、「シャシーの相互利用などの取り決めをかわせば可能」(国交省貨物課)ということだが、誰がシャシーを保有し、問題が発生したときに誰が責任を取るのか、また荷台の回収はどうするか――など課題は山積している。
最も効率的で、無理のない方法として注目されるのが「ドライバーの乗り換え」だ。A社のドライバーが中継地点に運び、そのままB社のドライバーに交代して運ぶので、積み荷が痛む心配が少ない。ドライバーの乗り換えによる中継輸送の課題は、「制度」と「管理」。「車両とドライバーの管理を分けるとさらに複雑化するので、簡素化する必要がある」と貨物課の担当官。さらに、事故が起きた場合の責任の所在や補償、トラックの回収の方法などの問題もある。
東京の物流事業者では、過去に自社でドライバーの乗り換えを実施したことがあったが、車両使用の問題などを理由に半年ほどで止めざるを得なくなったという。自社内ですら難しい壁をどう乗り越え、他社間との信頼関係をどう築いていくかも、今後考えていかなければならないだろう。これらの実施には、あくまで帰り荷の確保が前提。まとまった「荷量」「車両台数」がなければ、むしろコスト増になってしまう懸念がある。しかし、「中継地点でのタイムロスがないようにうまく配車すれば、ワンマンで運ぶときと比べてもそこまでコスト増の触れ幅は大きくならない」(同)と話す。
また、運賃の考え方として、「中継輸送の仕事は、ある程度の価格設定にするような方向性にならないといけない。仕事をとってきた会社が、自社が赤字にならない額を見込んで交渉に臨むようになれば、適正運賃の収受にもつながってくる」(同)としている。
大手量販店の物流担当者は「これまでのシステムのままで2マンを徹底するよりコスト増にはならない」とし、酒類・飲料・食品メーカーの物流担当者は、ドライバーの労働環境を守り、進む人材不足に歯止めをかけるという観点でも「従来よりコストが上がったとしても、コンプライアンスを守って取り組む。これまでの姿勢に変わりはない」というように、荷主も中継輸送でコスト増に一定の理解を示している。
とはいえ、「東京からの荷物がないという現状で、帰り荷がなくても赤字にならないような運賃でなければ、特に東京の事業者は、実証実験にすら参加しないだろう」と首都圏の事業者は話す。そうした課題をいかに克服できるかが、中継輸送の成否につながるといえるだろう。そのためにも、適正運賃の収受にむけ、しっかりとした制度設計が求められる。
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