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    直荷主とパートナーシップを構築「すき間と提案力」中小企業の力

    2014年11月21日

     
     
     

    ad_1124.jpg トラック業界の多重構造は、元請けによる車両確保の平準化をもたらした一方で、低運賃という弊害を生みだした。こうした構造に組み込まれざるを得ない下請け事業者には、「自社の体質では、こうするしかない」という諦めの声も聞かれる。元請けから実運送事業者にわたるまで、幾重にも連なる運送会社を思えば、現状から抜け出すことに難しさを感じ、臆するかもしれない。しかし、小さな会社でありながらも、直荷主としっかりとしたパートナーシップを構築している事業者もいる。



     アドバンス(江口智浩社長、神奈川県海老名市)は資本金300万円、車両数は軽6台、2?車6台、1?車1台と規模は決して大きくないが、取引の約9割が直荷主。トッパンフォームズ、ラッシュジャパン、オウルテックといった著名なメーカーが名を連ねる。なぜ、このような取引が可能なのか。

     江口社長は自社の仕事を「ある種のすき間」と説明した。メーカーの製造拠点から販売店までの配送は、ルート便というかたちで定期配送することが多いが、2?車や4?車を使うまでもない荷量であれば、大手の小口配送に流れるケースが少なくない。大手の小口配送の場合、どんなに安くても1個あたりの単価は数百円になる。しかし、軽自動車で複数の拠点をまわり、まとまった数を運べば「大手の運賃とも十分競合できる上、荷主に対してコストメリットを提示できる」という。さらに、半日以内で終わる仕事を複数組み合わせることで採算性を上げた。「十分な運賃を望めない限り、一つの仕事に1日を費やさない」と軸を持つことも一つのポイントだ。

     結果として、一般的に高くなりがちなスポット配送も、適正な運賃を収受しつつ荷主に魅力的な価格を提示できる。同社と10年近くの付き合いになるトッパンフォームズサービス(埼玉県所沢市)の加藤智行マネジャーは「メーカーにとって緊急を要する出荷はコスト増となり、頭を痛めるところだが、他社に傭車をお願いするよりもリーズナブルで助かっている」と話す。

     中小物流事業者ならではの「柔軟性」は、荷主も期待を寄せている。実際に同社にも、荷主から物流大手が対応できない配送の相談があるという。たとえば、混載便は「午前中指定」など到着時間に幅ができてしまうため、より緻密な時間指定を求める荷主も少なくない。そのような中で、小回りが利く中小事業者は、ジャストインタイムの配送にも対応できる。

     同社の荷主の一つオウルテック(神奈川県海老名市)の物流部門で責任者を務める早津誠業務リーダーは、小規模事業者と直接取引することは「お客様の信頼獲得にもつながる」と話す。同社が取り扱うスマートフォン関連のアクセサリーは、話題の新機種に対応した「旬」が命。どこよりも早く出荷することが求められるため、大手路線会社の集荷が終わった後でも出荷できることは、メーカーにとって大きなメリットとなる。

     エムティーロジ(森谷英紀社長、東京都江戸川区)は、資本金1000万円、車両台数は26台。チョコレートメーカーやインテリア雑貨、お弁当・サンドイッチなどの荷主と直接取引をしている。森谷社長は、初めて荷主に営業をかけた当時を振り返る。

     17年前、大手飲料メーカーの持ち込みをしていたとき、一緒にエリアを回っていた敏腕営業マンがいた。彼は決して飛び込み営業をせず、求人誌をくまなくチェックしていた。「新装オープンを狙う。必ず人とモノが動く」――。これをヒントにした森谷社長は「給料25万円以上」を掲げる会社に片っ端から電話をかけた。

     25万円としたのは、福利厚生費でも人だけで40万円以上は動いているだろうと見たからだ。そこで、「人件費を払う分で車を使える」という営業をかけた。これでつかんだのが手作りサンドイッチを主力とするメーカー。当初はメーンとする物流事業者がいたため、2?車持ち込みで入れるようになるまでに2年半かかったという。

     「いつも物流担当者の立場になって考える」という森谷社長。食品雑貨メーカーには、クリスマス商戦を見込んで8月末までには配送スケジュールを含むたたき台を荷主に提出している。「荷主が望んでいるのは『商品を売ること』。売れるには、数多くのベンダーから仕入れる必要があるので、各店舗の開店時間を調べ上げ、何時までに配送すればよいか、何個売りたいのか、そのためには台数を増やさなければいけないなど、逆算して提案する。提案は生産ラインにまで及び、現場は繁忙期に向けて余裕をもって準備できる」。

     荷主が期間限定でデパートなどに出展する際は店頭に立つこともある。「店員は商品の取り扱いに慣れていないため、バックヤードから商品が運ばれてくるときも自らがやった方がスムーズ。イベント最終日は撤収作業のために張り付き、販売し切れなかった商品を再度箱詰めしてかご車に並べる。そうすれば倉庫に戻すときも楽」。かゆいところに手が届く仕事は、荷主の心をつかんで離さない。

     交渉の鍵は、荷主が何を求めているのかを知る「リサーチ力」と、それに自社の強みを取り入れた「提案力」だ。持ち込みの提案で採用した事例があるというサッポログループ物流(東京都渋谷区)の松崎栄治社長は、「これまでの実績はもちろんのこと、『コストメリット』『品質の向上』という面を含め、自社の弱みを補填できる提案かどうかを判断のポイントにしている」という。一方、持ちこみの提案に「検討はするが簡単には変えることはできない」と回答したのは、キングジム(同中央区)の宮本英晴常務。「営業との兼ね合いは重要で、営業から『この物流事業者なら安心』と言われるようでなければ難しい」という。

     とはいえ、大企業の荷主の要望に応えることは簡単なことではない。「決算書のチェックなど、荷主に会社の中身を洗いざらい見せなければならず、数字が悪ければ改善の計画も提出しなければならないため、決して楽ではない」とアドバンスの江口社長。一方で高い要求に真摯に応えることで得られる信頼もまた強固で、「たとえ別の運送会社が単価を下げて営業をかけてきたとしても、簡単に取られるような仕事はしていない」と自信を見せる。

     荷主のニーズはさまざまで、メリットをしっかりと荷主に説明できれば小さな会社にもチャンスはある。中小物流事業者はそのすき間に入り込み、顧客の心をつかむことが出来れば、直荷主とパートナーシップを構築することも不可能ではない。「まずは自社の身の丈を知ること。それに見合った荷主と取引しようと考えると、おのずとアプローチする荷主像が見えてくる」とエムティーロジの森谷社長。「真面目にやっていれば、荷主も気付いてくれる。そう思って仕事をしている」。

     
     
     
     
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