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    理不尽と苦闘する現場 厳しい新行政処分「机上のドライバー管理」

    2014年11月26日

     
     
     

    jiko_1124.jpg 「乗務時間の基準に著しく違反」した場合、30日間の事業停止となる可能性がある新しい行政処分の基準を昨年9月に国交省が発表して以降、トラック事業者には一段と重苦しいムードが覆っている。物流の合理化・効率化を進める荷主ニーズの裏側で、「1日の総拘束時間=16時間」「休息期間=連続8時間」「連続運転時間=4時間」…といった改善基準告示の違反が1か月間に一定数を超えると、対象となる厳しい処分が待ち構えるトラック事業。過剰なまでに意識せざるを得ない時間管理のなかで、ギリギリ状態のドライバーによる労災事故も多発しており、そうしたトラブルにも対応しなければならない現場の大変さは計り知れない。



     兵庫県中央部の運送会社。東西間の長距離輸送の仕事も少なくない同社では近年、デジタコなどをフル活用しながらドライバーの労務管理を徹底してきた。しかし、「若いドライバーの採用が難しくなっており、高齢化してきた従業員の顔を見ながら本当の安全とは何か…そう考える機会も増えている」と話す社長自身も、すでに65歳を超えた。

     「30分は短すぎるとしても、1時間や2時間の積み重ねで既定の休息期間(10時間)が確保できていれば、それでいいのではないか。どう思う?」と聞かれた。連続8時間が求められるドライバーの休息期間は「1回につき4時間以上で計10時間」という条件が付くことで分割も認められるが、「車内のベッドでまとめて眠ることは簡単じゃない。こまめに休みながらのほうが安全」。事情を理解する高齢ドライバー数人を対象に、「自分のペースで出発して構わない」というスタイルに戻した。

     同県南部の運送会社の場合は労働時間よりも、夜間・早朝の対面点呼に頭を痛めてきた。社長によれば「うちのような10台規模のトラック事業者が、24時間体制で点呼が取れるように人材を配置することなど不可能」と訴える。周囲から「とにかく関係書類が整っていればいいのでは…」といった?アドバイス?もあるらしいが、「最近の安全施策は事務的な手間を増やすばかりだ」と断じる。

     大型トラックが主流の同社も数年前からデジタコを採用しているが、「実車や空車、作業といった運行状況の切り替え操作でコンプライアンスを繕っているような状態」と打ち明ける。「帰庫」してしまえば終業点呼、さらに次の出発点呼が必要になるが、「休憩」に切り替えておくことで「帰っていないなら対面は不可能。毎日は無理でも、これで数日間は電話点呼で済ませられる」。悩んだ末の策というが、「要は安全最優先。対面か電話かは関係ない」と現場不在の安全施策を否定する。

     一方、機械的に労働時間を区切られることになるのは生身のドライバー。蓄積した疲労と、荷物の積み・下ろしのための長時間の待機がイライラを募らせ、それが労災事故の引き金となるケースもある。食品配送をメーンに手掛ける同県西部の運送会社も過日、そうしたトラブルに遭遇。積み込みをしていた荷主の従業員がフォークリフトの操作を誤り、押し出される格好でトラックの荷台にいたドライバーが転落し、足を骨折した。

     「おたくの労災を使ってもらえないか」と荷主。自らのミスを棚に上げ、構内作業で使うリフトということで保険に加入していなかった運送会社の所有者責任をチクリと突いてきたという。「そんな不条理は受け入れられない」と一蹴した同社に、荷主は「第三者行為の災害による労災保険の適用」を促し、やむを得ずに受け入れた同社には後日、労基署の調査が入った。「なぜ、被害者であるウチが調べられるのか」と憤りは収まらない。

     岡山県南部の運送会社も以前に同じような災禍に遭遇した。同社の場合は「荷主が治療費を負担するということで話が終わったが、後遺障害ということまでは考えていなかった」と社長。調子が戻らないドライバーは数か月後、運送会社に労災の申請を求めてきたという。「荷主にも話してみたが、事故の処理は終わっていると聞き流されてしまった」。

     それからの同社は考え方を一変。「そのために保険料を払っているわけで、労災隠しと訴えられてはたまらない」と、基本的に労災を使うことにした。「労基署に調べられて困ることはないし、仮に問題があれば直すチャンスと考えるようになった」と社長。万全を期すために使用者賠償責任保険にも加入した同社長は、「軽油高騰ばかりが問題視されるが、トラック協会には労働時間など事業者レベルで太刀打ちできない部分にメスを入れてほしい。燃料が安くなれば、この業界の問題が解決するわけではない」と注文する。

     
     
     
     
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