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社保未加入に厳罰主義 国交省が導入の方針
2017年11月17日
トラック運送事業者の「社会保険未加入」の根絶に向け、国交省が厳罰主義を導入する方針であることが本紙の取材で分かった。現在は「一部未加入」で車両停止「10日車」の行政処分を、最低でも「20日車」以上(30日車も検討中)に引き上げるほか、「全部未加入」の初回違反「30日車」を「60日車」に改めることなどを検討している。今年度中に監査方針などの改正を通達し、平成30年度に施行する構えだ。
トラック運送事業者の社会保険(健康保険、厚生年金保険)および労働保険(労働者災害保険、雇用保険)の未加入について、国は具体的な数を把握しておらず、これまでの違反摘発の経緯から「全体の約5%」と見込んでいる。5%というと小さいようだが、分母は6万(者)なので、約3000社が未加入ということになり、厳罰化の影響は決して小さくない。国交省は、平成16年8月に、社保未加入が発覚した際、運輸支局から社保事務局、労働局に通報する制度を導入したが、効果がなかったため、20年7月に貨物自動車運送事業法の行政処分の対象とした。「(トラックの)本業とは関係ない法律で処分されるのはおかしい」などの批判もある中、「社保未加入で不適正な運賃ダンピングが顕在化し、不健全な競争状態が横行している」として断行。21年10月に処分基準を強化し、初回違反で「警告」だった一部未加入で、初回は直ちに車両停止「10日車」に、再違反「20日車」は「60日車」に引き上げた。全部未加入では、初回違反「20日車」が「30日車」、再違反「60日車」が「90日車」にそれぞれ処分を重くした。
今回は、さらに処分量定を強化するもの。「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」で、長時間労働を是正するため「直ちに取り組む施策」として急きょ決定した。同施策では、もともと「長時間労働是正のための環境整備」として荷主・元請けの協力確保や荷主勧告制度の見直しなどを議論していたが、長時間労働「抑止力強化」として、返す刀で事業者に対する行政処分の強化が打ち出された。
未加入の理由は、?(法律で義務付けられていることを)分かっているが入っていない?ドライバーが「入りたくない」と言っている?労働時間が微妙(適用外の人員がいる)?派遣社員――など様々で、保有車両が100台を超える中堅会社でも一部未加入というケースがある。
国交省は「どんな理由があるにせよ違反は違反。健全な競争環境の整備のため、厳罰で臨む」という。「未加入事業所」は「加入手続きを怠っていた」として、原則として最大2年前に遡り、保険料を支払って加入することになるが、トラックの場合は、事業者が自ら加入手続きを行えば「新規適用」扱いとされ、遡及徴収は免除されている。厚労省は、この遡及徴収免除を「悪質なケースでは改正したい」としており、国交省の厳罰化にどう影響するか注目される。
「長時間労働の是正」では、同省自動車局の安全政策課で現在、「過労運転防止」を中心とする行政処分の処分量定引き上げを検討中で、来年3月末までに具体化し、改正通達を発出。平成30年度中に実施する。これに合わせて、社保未加入対策も出てきたため「長時間労働」とは直接結びつかない対応となるが、遡及徴収の適用範囲が拡大されれば、会社によっては倒産に追い込まれるケースも想定される。
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