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物流ニュース
トラック運送業界初の確定給付企業年金が誕生
2009年4月6日
神奈川県でこのほど、トラック運送業初の確定給付企業年金であるANT企業年金基金が設立される。2012年3月に廃止される適格退職年金の受け皿として期待されており、18日には設立説明会が開催された。
ANT企業年金基金の理事長で、神奈川貨物自動車厚生年金基金理事長でもある筒井康之氏は設立の経緯について、「年金基金の中で適格退職年金廃止後の受け皿をどうするのか、という議論を2年間続けてきた」と説明。「受け皿としては中退共(中小企業退職金共済)もあるが、もう少し柔軟なものがいいのではないかと考え、トラック業界では全国35の年金基金がある中、業界最初の総合型確定給付型企業年金基金制度を設立した」と述べた。
ANTは4月に発足し、1100人ほどの加盟でスタートする。筒井氏は「ぜひ新しい退職金制度として検討していただきたい」としている。
通称「適年」と呼ばれる適格年金制度は、厚生年金基金と並ぶ代表的な企業年金として中小企業を中心に普及してきたが、年金財政をチェックする仕組みが不十分であったため積み立て不足が深刻化し、厚生労働省は受給者保護の観点から12年3月末で廃止を決定している。
このため加入事業者は制度廃止後に他制度(厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金、中退共など)に移行するか、制度の解約が必要となる。だが解約する企業が増えれば、従業員の老後の所得保障が損なわれるなどの問題もあり、他制度への移行が課題となっていた。神奈川年金基金でも加入者の10%が「適年」にも加入しており、制度廃止後の受け皿について議論されてきた。
ANTにはいくつかの特徴がある。たとえば、「適年」が中小企業に普及した理由には、積み立てにかかる拠出金の全額が損金算入できるという税法上の優遇があった。ANTは掛け金を全額損金算入でき、税法上のメリットを享受できる。 また「適年」は年金という名前だが、退職一時金という性格が強かった。ANTでは、柔軟な給付の選択肢があり、各事業者の意向に沿った設定が可能になっている。退職金として一時金でもらうこともできれば、10年に分けてもらうこともできる。
年金制度の管理業務は神奈川貨物年金基金の事務局が兼務。連携して最小限の組織でスタートするため、運営費用も低廉で済むメリットがある。
ANTはすでに13社、1100人が加入しているが、神奈川貨物年金基金のうち「適年」加入は約3000人おり、当面はこれらの加入者の移行を進めていく。この制度への加入は各社の退職金制度の充実でもあり、福利厚生の充実にもつながる。退職金を積み立てている事業者もあるが、ANTの場合は積立金を損金算入できることから、税金を払いながら退職金を積み立てるよりもメリットがある。
筒井理事長は「設立から1年をかけて準備していく。全国の受け皿になろう」と呼びかけている。ANTは「ALL NIPPON TRANSPORT(オールニッポントランスポート)」を意味している。
掛け金についてのシミュレーションは事務局で対応。問い合わせは、電話045(662)1188番(神奈川県貨物自動車厚生年金基金事務局内)。(千葉由之記者)この記事へのコメント
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