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物流ニュース
識者に聞く この1年をどう乗り切るか
2010年2月16日
昨年同様厳しい1年が続くと予想される事業者が多い中、それをどう乗り越えていくのか、事業者の手腕が試される。
物流コンサルで「法人営業の基本としかけがよーくわかる本」の著書を持つ船井総研の橋本直行氏は、「次のような中小物流企業は要注意」として11項目を挙げる。
①案件創出手段(引き合いルート)が1つから3つしかない
②Web経由の問い合わせが月10件未満
③最近提出した見積書のうち、企画書(提案書)を伴わないものが50%超
④大手からの売り上げ構成比が50%超
⑤「○○なら△△運送」の○○に入る言葉がすぐに思い浮かばない
⑥KPI(重要業績評価指標)が未算出
⑦物流サービスごとのCO2排出量が未算出
⑧詳細な売り上げ分析によって、自社の中の『つき(伸びている・自信がある・効率がよい)』のある客層や商品、商圏を発見できていない
⑨既存荷主への物流サービス(輸送・配送、倉庫保管、荷役、梱包・包装、流通加工、情報管理)以外の提案ネタがない
⑩伸びているマーケット(環境、セキュリティ、通販など)に適応する事業戦略(時流適応戦略)を立てられていない
⑪ここ数年(特にリーマン・ショック以後)、新しいことにチャレンジしていない
橋本氏は、「これからは、戦術・戦闘レベルの高度化だけでは難しく、既存の業容の延長線上には光は見えにくい」と指摘。「なぜなら、我々を取り巻く本当の脅威は、不景気ではなく『非景気』」と警鐘を鳴らす。
さらに、「多くの既存市場が縮む流れに抗するには、とてつもないパワーが要る。中・長期的に生き残るための戦略の変革が必要で、今後伸びるビジネスに転換するか、もしくはそういうビジネスを付加する」と続ける。「キーワードの1つは、間違いなく『環境』。『環境の要素を採り入れる』レベルではなく、『環境ビジネスへの参入』の検討を」と語る。
運送事業者向け経営コンサルとして活躍する同社の武田和也氏は、今年1年を乗り切るために経営者が財務面ですべきこととして次の5点を挙げる。
①入金状況や採算性など顧客との取引状況を確認する
②約定変更を依頼し、担保を拠出して金融機関と交渉を行うなど、短期借り入れの長期化に取り組む
③補助金・助成措置・返済猶予などの積極利用
④キャッシュに余裕を持たせ、流動比率を最低でも120%以上に
⑤投資の少ない新規事業、または新市場開拓に着手する
目指すべきは「当然だが、会社を潰さず存続させること」とし、「倒産、特に破産・特別清算など、会社がなくなってしまう状況だけは絶対に避けなければならない」。そのためにも、「顧客から依頼があっても、入金サイトの延長はお断りすべき。手形など、現金以外での入金も受けないようにする必要がある」とする。
さらに、「追加借り入れを短期で行うことは避けたい」とし、「できるだけ長期資金で調達するようにしてほしい」と付け加える。
また、「紙幣での保有だけでなく、一部資産を実物にヘッジすることも検討が必要」としながらも、「FXや株式など、本業とは関係しない投資からは一切手を引くこと」と忠告する。武田氏は、「今は淘汰の季節。この3ー5年を耐えれば、また良い時代が来ると予測される」と語る。
◎関連リンク→ 株式会社船井総合研究所この記事へのコメント
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