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    トラック運送業界で広がる「多層化」

    2010年5月28日

     
     
     

     軽油価格が再び上昇ムードにあり、リッター150円に迫った一昨年の夏と同様に、中距離以上の輸送業務を傭車で賄うケースが増えている。一方、運輸安全マネジメントの実施やGマーク認定に際して「下請け事業者との安全対策会議を定期的に実施している」ことが求められる事情もあって、元請け事業者からは厳しいチェックが入るようになってきた。
     とはいえ、自社トラックを走らせるよりは取扱手数料を跳ねて傭車に丸投げするほうがトク・・・と、それまで実運送を手掛けてきた事業者まで多層化に拍車をかける有り様で、安全対策や輸送品質の低下を懸念する声が広がっている。


     広島市の運送会社を訪ねると、社長と配車マンが神妙な面持ちで、一人の男性と向かい合っていた。「下請けマネジメントをしっかりしてもらわないと困る」と男性。元請け運送会社の部長らしく、その会社から受注した同社は傭車を探して仕事を流したが、下請け事業者が「失敗」したことが重苦しいムードの原因と後でわかった。
     「些細なトラブルでも、迅速に報告すれば大きな問題にならずに済む。それだけのこと」と男性。食品メーカーのセンターへ積み込みに入った傭車が構内で待機中に2、3滴のオイルを漏らしたまま立ち去ったのが原因で、「漏れた量の多い・少ないではなく、仮に1滴でも現場で報告すれば大事に至ることはなかった」と男性。そのうえで「傭車するのは構わないが、確実な管理方法を考えてレポートを提出してほしい」と難しい宿題を残して帰って行った。
     一方、求荷・求車ネットワークを活用する運送会社(神戸市)の配車担当者は「荷物情報をパソコン画面に入力すれば1分もしないうちに成約するが、それから先が大変。積み込み時間の直前まで運送会社名や車番が不明で、何度も焦ったことがある」とぶちまける。
     そうした経験を踏まえ、現在は「車番やドライバー名が連絡できる旨の条件を付けるようになった」という。
「どこの会社の何番のトラックで、何という名前のドライバーが来るのか不明」という声は通常の傭車現場でも増えている。
     元請けの立場となる兵庫県姫路市の運送社長も「もちろん下請けに指示書を出しているが、下へ下へと傭車が繰り返されるなかで、実際に運ぶドライバーの手元に届かないケースは多い。結局、到着しているはずの時間になって『どこへ行けばいいのか』と、ウチに問い合わせてくる始末だ」とあきれ顔だ。
     さらに「何事もなければいいが、仮にトラブルがあれば最悪。ドライバーは自分の会社に連絡を入れ、その会社は一つ上の会社へ、さらに一つ上へ・・・そんなことをやっている間に、先日も荷主からウチの会社に直接クレームの電話が入った。同じく実運送の立場として傭車の重要性は理解するが、手数料を抜いて知らぬふりというのが実情」と指摘する同社長は、「末端まで管理できることが今後、選ばれる下請け事業者の条件になるのではないか」と話している。

     
     
     
     

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