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ブログ・小山 雅敬
第231回:運送収益が悪化した時の経営改善の進め方
2022年6月28日
【質問】燃料価格高騰などの影響で、最近、急速に収益が悪化しています。当社では過半数の営業所が赤字に陥っており、抜本的な経営改善策が必要です。収益状況の立て直しを進める際の留意点についてご教示ください。
コロナ禍と激変する国際情勢、燃料価格急騰などの影響で、中小運送会社の経営は現在極めて厳しい状況に陥っています。最近10年間はドライバーの確保が喫緊の課題であり、収益面の相談は比較的少なかったのですが、今は収益確保が運送会社の最優先課題になっています。
燃料高を背景に運送業各社の「限界利益」が大幅に圧縮され、一部には走れば走るほど赤字を膨らませる状況も見られます。まさに、10年以上前に長く続いた「荷不足低運賃の暗黒時代」と類似した状況になっています。一般的に燃料高騰時は燃費などコスト管理の徹底と、荷主交渉による運賃への価格転嫁が優先的な対策であり、すでに実行している会社も多いと思います。
しかし、運送業コンサルティングの現場では、目先のコスト対策にとどまらず、5年から10年先を見据えた経営戦略の視点が大変重要になります。運送収益が悪化して改善策を模索する会社は、目前の対策のみにとどまらず、将来を見据えて経営再構築の視点で検討されることをお勧めします。経営改善のステップは、おおむね次の通りです。
①「ポイントを押さえた現状分析と対策の実行」…各営業所および車両ごとの損益状況を時系列に把握し、経費項目ごとに売上比率の推移を分析。特に人件費、燃料費、修繕費に問題点を抱える運送会社が多い。改善推進対策には人事賃金制度の再構築を含める。
②「現荷主との取引方針再検討」…現荷主との取引経緯、運賃・料金の適正化状況、今後の取引見込、将来性などの要素から現荷主との取引方針を再確認する。
③「将来あるべき会社の姿を描く」…実運送部門と倉庫部門の比率、撤退する部門と進出する部門の検討、傭車比率の見直しなど、将来の方向性を検討して共有化する。現状を打破して変化を受け入れる視点が重要。
④「撤退と新規進出の具体化とスケジュールの策定」…今から2年以内に実現するスケジュール感が丁度よい。
⑤「キャッシュフローの検討」…将来の成長に向けた先行投資に必要な資金額と調達・返済方法を検討。経費の圧縮と財務の適正化に取り組む一方、自社の強みを伸ばし市場での存在価値を高める先行投資には積極的にチャレンジする。今後は売り上げの拡大より粗利の確保に方針を転換する必要があります。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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