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労務管理
炎天下のアイドリングストップ 今夏も62%のドライバーが経験「環境より自分の命守るべき」
2022年9月22日
地球温暖化で、日本でも2010年以降の日本の夏の気温は災害レベルであり、状況により常に死亡レベルにある。そうした状況のなか、炎天下で車内に居る場合、アイドリングストップを行うことの問題について考えてみた。
炎天下でエンジンを切った車内がどのような状況になるのか、その場に居る人間に対してどのような影響を及ぼすのだろうか。
炎天下でのアイドリングストップについて、ある運送会社の経営者は「荷主から荷待ち時のアイドリングストップを強制されており、指示に従わない場合は取引してもらえなくなる」と、不満を表している。
このような対応を求められている運送会社は少なくないが、荷主側にもこのような対応を求めざるを得ない事情がある。企業として環境問題への対策は欠かすことができない取り組みであり、アイドリングストップはその一つであるからだ。
つまり、会社として環境問題への取り組みを徹底するあまり、「炎天下でエンジンを切らせる」という、結果的に、「人の健康や命より環境問題を重視する」形になっているのではないだろうか。
JAFが実験「エンジン切った車内は昼4時間で40度以上に」
炎天下でエンジンを切った車内がどれほど人間にとって危険であるか、『教えて!「かくれ脱水」委員会』の委員長で、兵庫医科大学特別招聘教授、JAFの常任委員(兵庫県)も務めている服部益治医師に話を聞いた。
服部氏は「JAFが実施した実験では、8月の晴天で外気温35度の状況下において、昼12時から午後4時の4時間、車内温度を測定した。窓を閉め切った車両では、エンジンを停止させてわずか30分後の昼12時30分頃には車内温度が約45度を記録した」という。
「その後も上昇を続け、午後3時頃に55度を超えた。車両の窓をそれぞれ3cm程度開けた状態の車両では、30分後の車内温度は約40度、同3時の時点では約45度と若干の低下がみられたが、それでも車内に留まるには厳しい車内温度であることが分かった」としている。
なお、「車内温度が40度を超えると脳が活動しなくなり、判断力が無くなってしまうため、人は何もできないまま死亡することになる」と注意を促す。
「炎天下でアイドリングストップをした車内に留まるということは、『死』を意味するといっても過言ではない」とし、「エンジンを切るなら、車を降りて涼しい所で待機する以外に良い方法はない」と話している。
荷待ち時のアイドリングストップ問題について、荷主に適切な対応を行うことを周知できないか、厚労省に確認したところ、「荷主に対して運送会社の熱中症対策およびアイドリングストップ防止を呼びかけるものはない」とし、国交省も同様に、荷待ち時間の短縮を求める方向の対策以外、確認できていない。
また、炎天下でのアイドリングストップで死亡事故や健康被害の発生がみられることから、「ホワイト」な労働環境の実現を目的に掲げる「ホワイト物流推進運動」に「炎天下でのアイドリングストップはさせない」という項目が追加される可能性はあるのか確認したところ、国交省貨物課では、「『ホワイト物流』への推奨項目に『安全の確保』とあり、トラックドライバーを含め事業活動に必要な安全の確保が大変重要と認識している」とし、「今後の状況も踏まえ、安全確保のために見直しを含めて検討していく」としている。
香川総合法律事務所 香川代表弁護士 「カスハラに当たる可能性も」
アイドリングストップが原因で死亡事故が起きた場合の責任の所在について、香川総合法律事務所(東京都)の香川希理代表弁護士は「炎天下で、荷主がアイドリングストップを強要するのは、カスタマーハラスメントにあたる可能性が高い」と話している。
また、「同ケースでは、アイドリングストップと車内待機を命じた運送会社の安全配慮義務違反や荷主の不法行為責任が問われ、死亡時には被害者遺族からの損害賠償請求を受ける可能性がある」という。
「損害賠償請求された場合には、荷主や運送会社に数千万円から億を超える請求があってもおかしくはない」とし、「使用者および荷主または元請企業は、ドライバーが健康上好ましくない環境に置かれるような指示をせず、人道的な扱いを心掛けなければならない」としている。
「環境」より命守るべき
「炎天下で、アイドリングストップで2時間待機させられた」――。
トラックドライバー情報サイト「ブルル」が224名を対象に行ったアンケート調査では、記録的な猛暑の今夏(7、8月)、62%・139人ものドライバーが待機中のアイドリングストップを指示されたことがあると回答。「窓を開けていても40度を軽く超える」など、現場からは悲痛な叫びが聞こえてきた。
「荷物ができるまでアイドリングストップを指示された。近隣からの苦情対策だとか。出荷先の事情がドライバーに全て降りかかってくる」と嘆くドライバー。他にも、「コンビニの大型枠で休憩していたら『近隣住民からクレームが入るので、エンジンカットするか移動して』と言われた」というドライバーも。
気象庁の検討会が「異常」との見解を示した今年の猛暑だが、飲食店の店主が「真夏の車内でローストビーフが作れる」という動画を公開し話題に。あるドライバーはそれに絡め、「車内でローストビーフができるくらい厳しい気温なのに、『アイドリングストップを』というヤツは運転席に10分閉じ込めておきたい」と語気を強める。
なかには、「『エンジン切れ』と言われた場合は、言ってきたヤツを助手席に15分くらい乗せる」と言い切る強者も。実際に乗せたこともあるそうで、「数分ですぐ逃げていった」と苦笑するが、「環境より自分の命を守るべき」と語る。
一方、「今のメインの積み先はアイドリング禁止だったが、コロナ禍を機にドライバーみんなで交渉して可になった」というケースも。「待合室にみんなで固まると密になるので、車内待機させてくれと交渉した」という。
このように荷主と建設的な交渉ができれば良いが、現実的にはなかなか難しいところ。「エンジンを止めろというなら止めるが、倒れたら給料保証と治療費をいただきます」と強気に出るドライバーもいたが、顧客とトラブルに発展する可能性がないとは言い切れない。
今回のアンケートでは、エンジンカットの待機で「2時間」と答えたドライバーが多かったが、中には「3時間」も。「車載扇風機とベストに付いている扇風機を使ったり、車外の日陰に行ったりして何とかしのいだ」という。
増えるバッテリー式クーラーの導入企業
アイドリングストップ支援機器としてト協も助成する車載バッテリー式冷房装置はドライバーに人気だ。
いすゞA&S(旧アイ・シー・エル)の大型ハイルーフ向けアイドリングストップクーラー「i―Cool Hi」の21年度の販売台数は416台で、前年比142%を記録している。
増加の理由について同社担当者は、「過去に採用いただき、新車導入時に装着されるリピートユーザーが増えている」と説明。
また、「夏場の荷待ち時のアイドリングストップ問題に加え、ドライバー確保を意識し、従業員満足度向上を目指される経営者が増えている」とし、「燃料高騰下での燃費向上商品としても採用いただいている」という。
ドライバーからは、「休憩や睡眠時に快適に過ごせ、体調管理ができる」「タイマー機能でバッテリー上がりを気にせず睡眠がとれる」など好評で、「夏場はもちろん、雨期時の除湿機能も役立つ」など高く評価されているとのこと。
同社では、「労働環境改善や燃費削減など現状の課題に対して、少しでも顧客の役に立てるよう今後もニーズに見合う商品を提案していく」としている。
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物流メルマガ
うちの荷受けも待機時間すごいのにアイスト禁止なのでさすがに荷主からOKにしてもらいました。SDGsがどうのって言ってる会社なので「人間らしい仕事しましょうよ」って言ってもらったらOKになりました。
真夏にエンジンカット強要されたら
パワハラで労基に通報する
神奈川県寒川町の旭ファイバーグラス何時間も灼熱の中エンジンストップキツイです。
熱中症になりそうです。
物流ウィークリーを始め出来るなら大手の新聞、マスメディアなどに働きかけて問題にしてもらえませんか、
旭ファイバー湘南工場
毎年死人が出ても気にしない。
今年は休憩ハウスもなし。
それ下っぱで話止まってるから無理なんだよw匿名で本社に電話して死人出るけど良いのか?って聞けばすぐ改善されるよw
下に言っても話あげるのが出来ないのばかりだから無理。工場長クラスでも普通に下っぱだから
icoolの安い方は、全く役に立たない
反対に機械から熱がでる有様。
よくこんなもん売ってると思うわ
試験とかしないの?
高い方は、良いみたいだがね
ほんとに効かないよね、邪魔なだけ、吹き出し口が運転席向かないクソ仕様、扇風機の方がマシ。
それなのに「icool付けたのでアイドリングは禁止です」(アイドリング罰則あり)とか言われた。
本当に売るのやめて欲しい。
何度か事務所のエアコン切れや そこからトラックのエンジン切るかどうかは状況による言うた事有る
気に入らんかったら帰れ言うてくれてもかまへんぞとも
2時間待ちぐらいならまだしもや 何時間待ちになるか分からん言われてエンジンなんか切れるか!
運転手に時間厳守や言うといて 何が何時間待ちになるか分からんやねん!
ちゃんとそのまま言ってるか?一人一人が喚く事が大事だぞ!w
気軽にエンジン止めろって言ってるけど
俺が赤ちゃんだったらミイラになって全国ニュースで放送される案件だからな。
出入り禁止上等、人権侵害で荷主を訴えてやるから楽しみにしてください。
人権侵害というか、元請の圧力は普通にパワハラだから。裁判でももう何件も認定されてるから普通に戦えば良い。
逆に戦わないと干されるぞ!戦ってから干せばそれはまた罪になるからな
延着上等❗️も追加ね
自分もドライバーですが、炎天下じゃ言われていアイドリングストップしません。
何を言われ様が自分の命の方が大切ですし。
言う方々は、涼しいエアコンの効いた部屋に居る人達でしょうから。
尼崎の、ある電機の流通センターは、アイドリングストップ指示するわりにセンター内は、エアコンが、寒い位かかっている、センターの作業員さんエアコンなしで作業さしたら否がですか たぶん作業員集まらないはず、何でも限度あります。
ヤマトのベースもアイドリング禁止とかってのあったな
荷物出来上がんの遅くて出発できないし、あまりにも暑いんで知らないふりしてかけてたらヤマトの社員に注意されてな
おたくらは休憩場あるから良いけど下請けはないんだぞ
まあ、トラック降りたからもう関係ないけど問題よな
環境より命ってその通りです
無駄に汗はかきたくない。
体調不良も嫌です。
アイドリングはストップしません。
アイドリングストップを言うということはつまりトラックが物を運んでいない「無駄な時間」を発生させているということ。
それを発生させているのはトラック側ではなく荷受け発送側。
昨今ドライバー不足が深刻と言われているが、そういう無駄な時間を無くして輸送効率を上げないと対処不能では?
あと日本のトラックはキャビンが狭過ぎ。
私も、トラックドライバーですが、9月になり涼しくなって来ました。道の駅や高速道路のサービスエリアやPAエリアで冷凍車じゃないのにエンジン掛けっぱなしで寝てるドライバーが多いと思います。うるさくて寝れません。暑い時は寒い時は仕方ないと思いますが、涼しいくてエンジン掛けなくても車内で過ごせる時期はエンジンを切りましょう!
耳栓持ち歩くといいですよ。私もこいつら涼しくなったのにうるせえな。(隣は保冷車では無い)と思う派ですが、耳栓使って寝てます。
涼しいと感じる人も居れば、暑い寒いと感じる人もいる。
寝る前は暑かったり寒かったりしたかもしれない。
うるさいと思い、迷惑に感じるのはしょうがないけど、感覚の話を他人に押し付けようと考えるのは違う
自分もアイドリングストップしない派です。
先日も某配達先で受付時に納品までどれ位かかります?と訪ねたら、大型5代と4トン2台のあとだからと言われた。
最後尾の4トンドライバーにどれくらい待ってるか聞いたら、2時間半と言われたのでその後ろでエンジンかけて待ってた。
そしたら配達先の人が来てアイドリングストップだからと言われた。
だったら今すぐ荷降ろしさせてくれと言い返した。
出禁にするぞと脅された。
会社に連絡して全容伝えた。
持ち帰れとの指示を受けた。
その旨配達先に伝え持ち帰ろうとしたら止められた。
アイドリングの許可を出すか、今すぐ降ろさせるか選ばせた。
どちらも拒否った。
制止を振り切り持ち帰った(笑)
この企業、実は公になってないが何年か前に真夏の中でアイドリングストップで待機させられてた60代のドライバーが順番来て呼びに行ったら熱中症で亡くなってた企業だったのて、荷主から仕事を受ける段階から会社と荷主とドライバーで入念にシュミレーションしてたのでスムーズに事が運んだ。
人命より荷物とルールが大事、いつの時代の風習だよ!(笑)
もちろん正規の運賃を頂いてます。
荷主は配達先に請求すると言ってました(笑)
大手物流会社の運転手だけど社内がアイドリング禁止だから社内に駐車場あってもみんな近くのコンビニでエンジンかけて時間調整してる。
そのコンビニの駐車場が時間調整してるウチのトラックでいっぱいって事も度々ある。
コンビニにスゲー迷惑かけてるよな、って思う。
社内で掛け合ったら「県の条令でアイドリングが禁止されてるから仕方ない」って言われた。
「ホワイト物流だからコンプライアンス重視。なので条令は守らないといけない」と。
運転手守る為の「ホワイト物流制度」のハズなのに、型にはめないといけないから逆にブラックになってる、っていう矛盾。
専門誌なら、そこ突っ込んで欲しいと思う。
あと、構内アイドリング禁止とコンビニの駐車場のアイドリング禁止を一緒にするのはどうなの?
コンビニの駐車場は個人の持ち物で善意でトラック停めさせてくれてるのに、それを悪者にする様な書き方。専門誌がこういう書き方するとコンビニを公共の駐車場みたいに勘違いする運転手が出てくる。
トラックが深夜のアイドリングやめてくれないから、駐車場をトラックが入れない様に狭くしたコンビニ知ってます。
オーナーから「近所から苦情が来るから、トラック1台づつエンジン切ってくれる様に声かけてる。運転手さん達も停まれる場所なくて困ってるだろうから何とか頑張ってるけど、エンジン切ってって言うと激怒する運転手もいるからそろそろ限界」っていう話を度々聞いてた。
こういう苦しんでる善意のオーナーがいるって事も知って欲しい。
条令で決まってて近所からクレーム入るからコンビニの店員が声をかけているなら停めてやるのが筋だろう。善意のオーナーがいる事を知ってくださいじゃないだろう。どこの大手だ?この会社おかしいんじゃないか?
地域と待機する時間による話だと思います。私は8月は作業終了直後と強い雨などで窓を閉め切る時以外はエアコン切ってましたね。
年収ベースで500万弱(中型4トン)、週休二日、有給あり、高速道路使用可、こんな美味しい楽な仕事なんか無い(警備員、介護職、ビルメンテナンス等と比較)からちゃんと構内ルールやコンビニの注意書きは守っています。
浮いたお金は
役員の小遣いになってます。
お疲れさん。
ドライバーや関連会社を守るはずのトラック協会は本当になにもしない出来ない団体なんだなー
運賃や燃料、賃金、色々問題だらけの業種のはずなのに、なにも改善しない
トラック協会に加盟してない会社もあるだろうけど、トラックが一斉に止まれば経済物流をストップさせる覚悟を持って、協会が国と交渉するべきなのでは?
そして、土木業はあんなに賃金高いのに、運送業の低賃金には納得出来ない
結局、ドライバーの事なんて奴隷ぐらいにしか思ってない社会。
アイドリングストップとは関係ないが、当社は夏も冬も同じ制服です。冬場はいいが、夏場は死にそうです。
それは提案したまえ。自腹で買うから勘弁してくれと言えばいくらなんでも通りそう。
変に真面目と言うかなんでも言われるがままに守るんだよなぁイマドキの運転手
よくやるわ
炎天下でアイドリング強要させて死亡させる会社は殺人罪と同じ!ニュースでもっと取り上げて倒産はもちろん
経営者は懲役にするべき
色んな事情でアイドリングせざるを得ないのは理解できるけど、深夜にトラックでアイドリングするのはマジでやめてくれ。
深夜だからノイズが響くし少し距離があってもめちゃくちゃ気になるんだよ。
家の周辺は、店舗に配送してくるトラックのアイドリングで、歩行時に周辺が相当くさく、街中の空気が汚染され、ベランダが1か月で真っ黒になっている。アイドリング自体は迷惑行為。人の命がかかっているからアイドリングが正しいというのは間違い。アイドリングをしなくても、人の命が守れるように、雇い主(運送会社の方)に安全衛生を求めていくのが筋。弁護士の意見は、論点がずれていて、意味が分からない。