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ブログ・小山 雅敬
第237回:改善基準告示の厚労省改定案から見えてくる運送業への影響
2022年9月27日
【質問】今年中に改善基準告示の見直しが予定されていますが、改定後の運送会社への影響について教えてください。
8月18日に厚労省労働政策審議会労働条件分科会の第8回トラック作業部会が開催され、厚労省から改善基準告示改定に関して方向性の案が提示されました。
労使間の意見の隔たりが大きいため、両者の意見を採り入れた折衷案的な幅を設けた案が示されています。トラック運送業の実態を考慮して柔軟性を加えた点も見られます。今後確定までに一部修正も予想されますが、現時点での方向性の案から見えてくる運送業への影響を挙げると特に次の点が重要であると思われます。
①拘束時間の短縮(1日最大15時間、1か月274〜284時間等)および休息期間の延長(継続9時間以上)による実務への影響
②連続運転時間の運転中断が「運転離脱」から「原則休憩」に変更になることによる影響
③柔軟な運用が追加されたことの影響
まず①の拘束時間は実務上、特に月間拘束時間の短縮が重要です。2024年の労基法改正(年間960時間の時間外労働上限規制)は年間のみの規制であり、一般則に規定されている月間規制(月100時間、80時間等の規制)は適用対象外ですが、実務上は36協定で定める時間外労働上限値が「改善基準告示の拘束時間を超えない範囲」を求められるため、実質的に月間の縛りが設けられます。今般の改定案から計算すると、実質的に一か月79時間〜89時間(労使協定有りの場合は99時間〜115時間)が上限となり、事務員等の36協定月間上限値である月99時間と、ほぼ変わらない時間数で届け出ることになります。36協定違反は刑事罰の対象であり、今後は従来と比較にならない厳格な管理が求められます。運送業の現場管理者は大きな意識変革が必要です。
②の運転中断が「原則休憩」になると、従来荷役作業や待機等で運転離脱時間にしていた会社は運行計画を見直す必要があります。「休憩」とは完全に管理監督下から解放される時間を与えることです。
③の柔軟な見直しは運送現場の実態から追加された内容で、SAやPAで駐車できない場合に連続運転時間の限度が4時間30分まで延長される見込みです。
また、事故や故障、災害等の予期し得ない事象に遭遇した場合に、その時間を拘束時間等から除くことが出来る規定も追加される見込みです。これらは円滑な業務遂行に必要な内容といえます。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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