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ブログ・高橋 聡
第262回:令和時代の運送業経営 管理職編(60)
2024年4月30日
【管理職編】60
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今号も前号に続き「所長・管理職」をテーマに求められる役割、責任等に関し解説してまいります(その9)。
1.所長による未払残業代請求
「未払残業代請求」はドライバーによる請求が多いのですが、残念なことに所長・管理職による請求も起きています。所長はドライバーから管理職に登用されるケースと中途採用で入社するケースがありますが、給与は十分に検討され決められているケースは多くありません。
ドライバーから登用された所長の場合、会社側の管理職というより社員的感覚の方も多いため、何かトラブル的なことが発生した場合に敵対的関係となることも少なくありません。経営者とともに会社側の立場としてトラブル対応してきた所長・管理職から未払残業請求を起こされた場合に、経営者の精神的ダメージは大きくなります。
2.所長・管理職の給与体系例
所長、管理職の給与体系を検討する場合、「給与額としていくら支払うか」、そして「月間時間外労働時間数」を正確に把握することが必要です。給与額については認識されていますが、残業時間数の意識が低いケースが多いので注意が必要です。例えば、月給額40万円、残業70時間の場合の給与構成を考えてみます。
繁忙期の残業実態が70時間の場合、まず定額残業代60時間分を計算し、そのうえで超過する10時間分(割増率150%)を追加定額残業代として支給することとなります。
定額分のみもしくは追加分を合わせて80時間以上となるような定額残業代の設定をすべきではありません。月間80時間は過労死ラインであり、予め定額残業代として設定することは避けるべきです。80時間を超過する残業実態がある場合(労基法違反となる場合があります)には、定額分は36協定の特別条項での限度時間数までとして、超過残業代は実時間数を計算して支給する仕組みとした方がいいでしょう。
また、恒常的に深夜労働を行っている場合は定額深夜代を支給することも検討していきます。所長・管理職による未払残業代請求が実際に発生しています。給与体系を適正に設定することは管理職処遇の最重要事項です。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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