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    国交省 羽尾一郎物流審議官 「物流意識の高揚へ」

    2015年7月9日

     
     
     

     交通運輸産業の年間売り上げを見ると、旅客事業は10兆円。一方、物流事業は2.4倍の24兆円。GDPに占める割合は物流単独で5%にも上る。国民生活になくてはならない重要な産業であるにもかかわらず、一般にはあまり知られていない。
     国交省は「物流問題調査会」内で、「新規就業の促進と定着率の向上」「物流の効率化・省力化」を掲げ、関係各者と連携しながら労働力不足解消に向け取り組んできた。新規就業の促進には「危険・汚い・きついの〝3K〟の職場という業界イメージを刷新しなければならない」と羽尾一郎物流審議官は語る。
     国交省では待遇の改善に向けた運賃・料金の適正収受などの促進、荷役・手待ち時間にかかる商慣行の見直し、中継輸送の実現に向けた取り組みのほか、年間8000人に上る退職自衛官の物流業への再就職の仕組み作りを進めている。人手不足のなかで効率化・省力化を進める観点から、大量輸送機関を活用したモーダルシフトや共同輸配送、国際海コンのコンテナラウンドユース促進のほか、物流に配慮した建築物の設計・運用、トラック・船舶の大型化を進めてきた。


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     最近では機械化や省力化、職場環境の整備も進み、長時間労働にならないよう取り組む事業者も増えているが、〝負のイメージ〟をぬぐい切れていないのが現状だ。
     今年3月にとりまとめられた「物流分野における労働力不足アクションプラン」では、「3K」のイメージからの脱却と試みのアイデアとして「5S」への転換が打ち出された。契約に定めのない付帯作業が少ない安全(Safe)さ、近代的施設の導入が進んでいる洗練(Stylish)さ、荷役・手待ち時間の解消や物流に配慮した建物の設計で作業が楽々(Smooth)、そこに収入(Salary)、満足(Satisfaction)向上を加えたものが「5S」構想である。実際に使用するキーワードは、業界で物流現場の実態を正しく理解してもらうことに留意して定められることを期待している。
     少しでも一般消費者の目を物流に向けようと、広告宣伝にも力を入れる。今年1月には週刊誌に広告を掲載。5月には都内地下鉄・民鉄に「グリーン物流優良表彰」の車内広告を打つ。「通販はネットで簡単に注文できても、モノを届けること自体は変わらない。しかし、送料無料と言われ、運ぶことが頭から離れている。〝物流〟の文字を目にすることで身近に感じ、物流の重要性や社会的意義について意識してもらえるようにする」。
     若年層の労働力確保は喫緊の課題。そのためには学生の関心を惹起することが求められてくる。物流連では昨年から「合同インターンシップ」を開催。今年1月には「業界研究セミナー」も行っている。「今後は、それらの活動をさらに充実されると聞いており、歓迎したい。将来的には教育現場とも連携し、教科書などに取り上げることも必要」と羽尾物流審議官。
     これには日本の学生が物流を学ぶ機会が圧倒的に少ないことが根底にある。「大学には物流学部や物流学科がなく、交通経済学の一部、流通学の一部として学ぶだけで体系立てて学ぶことができない。欧米のフォワーダーは専門教育を受けた上で就業するが、日本は就職先で一から教育しているので、その時点で既に差がある」。これが日本の物流業が世界で競争する場合の弱みとなってしまっている。「物流の講義が受けられる大学を増やしていかないと、物流業は就業先の選択肢に入らない」と危機感を募らせる。
     観光業は、観光学部や観光学科が多くみられるようになったものの、20年程前にはなかった。「就職先としてあまり考えられていなかった時代にも観光教育が大学で行われ、産業に魅力を見いだした学生が観光の世界に入ってきた。卵が先か鶏が先かの話になるかと思うが、物流業はその努力をしないと鶏にはならないので、卵を育てるところから始めないといけない」。
     「両親に就職先を報告する時、『どんな業種?』と言われるより、みんなが知っていて、『いい業種』と言われた方が嬉しい。そのためにも一般の人にこの業界を知ってもらわなければいけない」。「5S」で物流業の魅力を発信し、明るく、希望あふれる業界へと導いていく。
    ◎関連リンク→ 国土交通省

     
     
     
     

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