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全軽連に業務停止命令 過大な収入示し会員勧誘、北海道と埼玉で
2010年8月20日
「月収40万─50万円以上可」などの過大な収入を示し、新規会員(個人運送事業者)を勧誘していたとして北海道と埼玉県は9日、「全国軽自動車運送連合会」(全軽連)の名称で運送業務や車両購入の斡旋を行っている東京商事(吉田重剛社長、東京都新宿区)に対し、特定商取引法に基づき、新規開拓に関する一切の業務停止を命じた。停止期間は8月10日から来年2月9日までの6か月間で、命令に違反した場合、違反行為者は「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」に、法人は「3億円以下の罰金」に処せられるという。全軽連は「事実認定については争わない。ただ弁明書も提出し、改善しているのに乱暴な話だ。今後の対応は弁護士と協議中」としている。
命令は特商法に規定する「業務提供誘引販売取引」について(1)契約の勧誘(2)契約申し込みの受付(3)契約の締結など新規開拓関連で「6か月間業務を行ってはならない」というもの。業務提供誘引販売取引とは「仕事を提供するので収入が得られる」との口実で消費者を誘引(勧誘)し、「仕事に必要」な商品などを販売して金銭を負担させる取引を指す。法律で認める取引形態だが、悪質な「詐欺」行為を防ぐため、誇大広告の禁止をはじめ法律に基づく広告表示、書面交付など厳しく規制している。全軽連は、新聞折り込みやハローワークに置くチラシなどに広告を掲載。「現況月収例40万─50万円以上可(北海道は35万─45万円)」「100%継続的に仕事を紹介」「営業は不要!」「営業は全軽連にお任せください。固定仕事先(請負先)を責任持ってご紹介します!」などと記載していた。
しかし記事には根拠がなく、実際は月収15万─20万円程度しか得られない会員が多かった。また、斡旋していたワゴン車のメーカー、車種などを明記しないなど「広告表示義務違反」のほか、消費者保護のため契約する相手に交付する書面には自社に不利益な内容も明示しなければならないのに、正しく記載されていなかったという。契約者は「ハローワークのチラシなので信用した」と話す。
入会金31万5000円、諸経費6万6000円、新車購入費用127万円など最大190万円を支払って入会した人もいた。「最初の話と違う」「仕事を全く紹介してくれない」など苦情が相次いだため、北海道と埼玉県はそれぞれ内偵を進め、北海道は昨年11月、埼玉県は今年3月に行政指導を実施。「いまだに改善されていない」として処分に踏み切った。
両自治体とも「業務提供誘引販売業者を行政処分するのは初めて」だが、全軽連も「特商法」でやられるのは初めて。
実は今年5月、神奈川県も「特商法違反の疑いがある」として行政指導をしている。全軽連では指導に沿って改定書面を7月26日から使用するなど改善努力をした結果、同県は「これ以上の行政処分は行わない」と決定した。
全軽連会長でもある吉田社長は埼玉県に提出した弁明書で、「長年雇用の創出という点で大きく社会貢献してきた自負がある半面、消費者被害防止に向け、社会の動静に沿った法改正に速やかに対応できなかったことは反省している」と釈明。神奈川県の行政指導の経緯を示し「ぜひ穏便な処分をお願いしたい」と訴えていた。
東京商事は66年に創業、86年、同社が中核となり「独立を目指すドライバーとドライバーを必要とする企業を結ぶ新しい物流システムの事業体」として全軽連は発足した。現在、会員7000人、スタッフ220人、営業所は全国61か所、年商42億円(09年度)。
今回の行政処分について、「特商法は非常に複雑で難しい法律。何度も法改正され今日に至っている。これが正常な事業者の圧迫になってはならない」と強調する専門家もいる。「独立開業にリスクは付き物。苦情を唱えた人は『甘え』があったのでは。全軽連に入って月間100万円ぐらい稼いでいる人は大勢いる。自己責任も忘れないでほしい」「大手も苦しんでいる時代に運送業で簡単に稼げるわけがない。騙されるほうが悪い」などの批判も相次いでいる。(土居忠幸)
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