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「全軽連・業務停止命令」続報 行政は見えざる敵…
2010年9月10日
特定商品取引法に基づき、北海道と埼玉県で6か月間の業務停止命令を受けた全軽連(吉田重剛会長)に対し、さらに埼玉県が「7000人の全会員と01年までさかのぼり、入退会のあった人全員に『クーリングオフできますよ』と明示した文書を交付」するよう行政指導していることが、7日までに分かった。全軽連の名で実質的に運送業務や車両購入の斡旋を行っている東京商事の吉田陽三副会長は「到底応じられない」と強調。一方、埼玉県は「文書が交付されない限り、違反行為が続いているとみなさざるを得ない」として、場合によっては法的強制力を持つ「指示・命令」も辞さない構えだ。今後、特商法を巡って全国の同業者に大きな影響を及ぼす可能性もあることから、その状況を探った。
業務停止命令は「広告で過大な収入を示した」などとして特商法に規定する「業務提供誘引販売取引に違反した」(既報)との理由で、北海道と埼玉県で同時に発令。いずれも8月10日から来年2月9日まで、新規開拓に関する一切の業務の停止が命じられた。行政処分は終わったかに見えたが、埼玉県は「改善報告書の提出」と「クーリングオフをうたった文書の交付(発送)」を求めている。
同県の県民生活部消費生活課では「特商法に業務提供誘引販売取引が規定され、施行となった01年6月から違反行為は続いている」として、「現在の会員だけでなく、当時から入退会した人たちにも文書を交付」するよう指導。これに対し、吉田氏は「特商法の直近の改正で『指定商品』規定がなくなり、すべての商品・役務が対象となった昨年12月1日以前の違法行為は認識していない」と反論しており、双方の言い分は平行線のまま。見解の相違から改善報告書も提出されていない。
吉田氏は「(北海道と埼玉県で)行政指導を受け、改善努力をしていた。弁明書を提出したにもかかわらず、数日後に業務停止命令が出た。真面目に指導に従い、改善をしても懲罰的に営業停止処分が強行された。今でも不当だと感じている」。
今年5月、神奈川県でも「特商法の疑いがある」として行政指導を受けている。全軽連は「きめ細かく、具体的な指導を受けながら改善を尽くした」ことで、同県は「行政処分は行わない」と決定した。それに比べ、埼玉県も北海道も荒っぽい行政指導だったという。「北海道は紙切れ1枚、埼玉県は突然呼びつけられ、一方的に悪者扱い」だった。
現在、北海道、埼玉県とも新規契約業務を担当する営業所はすべて閉鎖状態となっている。その影響(売り上げ減)で「埼玉県には800人、北海道には150人ほどの会員がいるが、会員向けのフォローもままならない状態」という。
吉田氏はまた、「われわれの商売が誘引販売に該当するかどうかも疑問」と主張。「斡旋商品は車両だけだが、持ち込みの場合、斡旋利益はない。斡旋利益の売上高構成比も低い。仕事の紹介後は荷主と会員の当事者同士のやり取りで当社は介入せず、手数料など一切もらうこともない」と説明し、「だから100%業務提供誘引販売ではない」という。
同業他社には「クレームだけで業務停止されたら、普通の中小企業は潰れてしまう」と同情する声もある。埼玉県におけるクレームの件数は01年6月以降、現在までに38件。「これは決して多いと言えないのでは」と法律専門家。これに対し埼玉県は「相談者が40代から50代の働いている男性が多かったため事態を重視した」と説明している。
吉田氏は「昭和47年設立、61年に全軽連として新たな物流システムの事業体を発足させ、地域雇用の創出などに貢献してきた。それが悪徳商法の烙印を押されてしまった。他県の募集広告にも影響が出ている。行政こそ『見えざる敵』だった」と悔しがる。
特商法の解釈を担当する消費者庁の動きも含め、今後の成り行きが注目される。(土居忠幸)
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