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二重運賃の届け出受理? 「白ナンバーに対抗したかった」
2011年1月21日
全国霊柩自動車協会(坂下成行会長)の会員事業者が「二重運賃の届け出による違法なダンピングをしている」と問題になっている。白ナンバーに泣かされ続ける全霊協で、身内から違反者が出たことにショックを隠せない。「事業者も悪いが、それ以上に事後届け出制とはいえ、ダブルスタンダード(二重運賃)の運賃を認めた国の責任は大きい」と岩渕篤専務は憤る。届け出を受理したのは運輸支局だが、事態を重視した本省では今年に入って「適正な原価計算が行われたか」など再度、検証する方針を固めた。場合によっては「改善命令」処分となるが、事後届け出が受理された後の改善命令は前代未聞という。
霊柩と同様の「特殊運賃」は国際海コン、タンク車、鋼材、ダンプ、航空貨物など一般トラックにも広く存在する。「二重運賃の届け出が看過されるようなら市場はめちゃくちゃになる」と危惧する声もある。問題の会員は石川県で葬祭業と霊柩運送事業を兼業するM社。昨年12月10日付で、貨物自動車運送事業報告規則第2条の2に基づき運賃の「変更設定」の届け出を行い、石川運輸支局で受理された。
11月16日から実施していた新運賃の内容を見ると、「会員」と「会員外」の2種類を設定。基本額が特別車(宮型車など)の場合で会員6300円に対し、会員外は2万8917円。普通車(バン型車)も会員は6300円、会員外では9912円と設定した。
「会員」とはM社が独自に創設した「Mクラブ」会員で、入会金1000円が必要だが有効期間は無期限。会員と会員外の基本運賃の差を考慮すれば、会員となったほうが得なのは歴然としている。届出書には「設定を必要とする理由」として「開館1周年記念キャンペーン」とのみ記載、キャンペーン期間は明記されてない。
届け出後、石川県全域でPR活動を展開したことから同業者が知ることとなり、昨年末に全霊協に訴えた。全霊協がM社に訊ねたところ、「白ナンバーに対抗するため、やむを得なかった」との返事だった。
霊柩運賃は現在、一般トラックと同様に事後届け出制だが、昨年、全霊協は認可運賃時代のタリフを基に「モデル運賃」を設定。国交省もこれを認め、個々の事業者が参考にしている。「原価を考えれば、これくらいはもらわなければ」というモデルだが、M社の会員外運賃がこれに相当する。
「行政の対応も問題だ。M社は届け出に際し2回相談したらしい。アドバイスを得ながら提出している」と岩渕氏。「北陸信越運輸局に問い合わせると『霊柩運賃は自由化されました』と貨物課。がく然とした」「現場の行政の認識が甘すぎるのでは。届け出運賃と自由運賃は全く違うはず。もっとしっかりチェックしてほしい」と訴える。
国交省貨物課は「届け出の場合、書面などに不備がない限り、行政側は受理せざるを得ない」と説明する一方、「一般トラックでも宅配便のように会員、会員外で区別するケースはあるが、その差は百円から数百円程度。M社で適正な原価計算が行われているかどうか検証し、もし問題があるようなら改善命令などで処分する」としている。(土居忠幸)
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