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緊急通行確認標章を悪用 交付手続きの簡素化が裏目
2011年4月1日
救援物資を輸送するための「緊急通行車両確認標章」が、タダで高速道路を走るために悪用されている。確認標章は東北地方太平洋沖地震の被災地に届ける物資を運ぶための緊急車両に、発地の警察署が交付するが、交付要件が煩雑で、また目的地規制など「現実にそぐわない」と大地震発生直後から批判が集中。このため警察庁は3月16日付で交付手続きを簡素化した。これが裏目に出た形で、一部の悪質な海コンドライバーが「緊急通行車両だ」と偽り、高速道路の通行料金を払わずに走り回っているという。
緊急通行車両確認標章の交付対象となるトラックは当初、「目的地が福島県・新潟県以北(両県を含む)のもの」とされていたが、「目的地を問わず標章を交付する」と簡素化。さらに、大型車なら警察署での積載の確認(視認)は不要で、「車検証の写し」で足りることになった。一部の海コンドライバーはこれを悪用。警察署で簡単に標章の交付を受け、救援物資ではない通常の貨物を積んで、堂々と首都高と被災地を結ぶ常磐道、東北自動車道などを中心に広範囲に高速道路を無料で走り回っているという。
東京都大田区の平和島、城南島などに駐車中の海コンドライバーに取材すると、さらに驚くべき事実が判明した。「標章なんてなくても、タダで走っている車もある」というのだ。高速料金所で自ら「緊急車両」と告げれば、「偽造した名刺1枚で通り抜けることができる」という。
NEXCO東日本に問い合わせてみると、確かに「標章がなくても緊急車両ということなら一般レーンに誘導後、本人確認できるものを提示してもらった上で、通行を認めている。名刺でもOK」との回答だった。
東ト協海上コンテナ専門部会の荒木俊夫部会長(国際コンテナ輸送専務)は「事実ならとんでもないこと。災害で困窮している人のことを考えれば絶対に許されない行為だ」と憤る。「警察はもちろん、行政やト協でも取り締まってほしい」と強調する別のドライバーは、「海コンだけでなく他業種でもやっている。会社ぐるみも多いようだ」と付け加えた。
被災地につながる主要高速道路の交通規制解除に伴い、確認標章の交付はすでに警視庁が3月23日付で、茨城県警などは同24日付で申請受理を中止したが、標章の有効期間は1か月。不心得者の横行は当分続くとみられる。
標章とその交付システム、また大震災という混乱に乗じた卑劣な行為は決して許されるものではないが、ある海コン業者は「歩合給で個人償却制の下、多くの海コンドライバーにとって高速料金の無料は願ってもないチャンスなのだろう」と指摘。海コン業界の労働条件も背景にあると話している。(土居忠幸)
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