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即戦力の見方に変化 大型導入も運転者補充見送り
2011年9月20日
「業務拡張で大型車を5台導入しようと思っている。でも、すぐにドライバーを入れようとは思わない」。新たな物流取引の発生に伴って、トラックと乗務員の手当ては必須とされてきたが、その見方が崩れようとしている。経営者による「即戦力」の捉え方が以前と変化しており、「雇用リスク」への適応策が浸透してきた。
雑貨や食品の輸送、保管をする兵庫県内の事業者。近距離輸送が主体で、4トン車までのトラックを50台以上そろえる。そして今秋に、初めての大型トラックを一気に5台導入しようとしている。そこで問題になるのが乗務員の手当て。経験のない分野では、即戦力となるドライバーが数人欲しいところだ。しかし社長は、ここはグッと我慢しているという。実際、「ハローワーク」を経由して月に100人程度の問い合わせがある。面接にまで進む応募者もいるのだが、よほどの直感が働かない限り採用はしない。社長は、「トラックがあって人を採用しないということは、少し前なら考えられなかった。採用することが即業務の拡大につながったからだ」。何が変わったのか。
荷主や荷受け先の要求水準が高度化したからだ。勝手の分からない分野に、「即戦力」だからと運転免許の種類だけで人を配置すると、逆に取引が縮小してしまうことがあるという。些細なことが相手の感情を逆撫でする「トラブル」へと進んでいってしまうのだ。
「新たな分野こそ気心の分かった人間を」。社長はハラの読める人間が欲しいと願っている。運転免許のある人は、人材派遣などからも調達は可能だと踏んでいる。
「女性ドライバー。これからはもう一回、目を向けなければならない」。そう話すのは、食品輸送とピッキングが主力の神戸市内の物流会社だ。経営者は、「権利ばかり主張できる労働基準法が問題だ」と制度の問題を指摘する。
以前、人手不足を理由に「男性は来ないから」と女性ドライバーを2人採用した経緯がある。しかし、彼女らが辞めてから、ここ数年は女性がいなかった。「男性」「正社員」この2点が同社にとっての雇用の鬼門だ。常時選任できる運転者の条件(日雇い、2か月以内の期間雇用などの禁止)が事業法の「輸送安全規則」から外れるまでは「男性」「正社員」を雇うリスクのほうが大きくなってきていると感じてきたからだ。「トラックもオートマ車に変わっているし、重いものは扱わない。女性ドライバーが十分に活躍してもらえる環境になった」と経営者は話す。
「仕事をしたいというサラリーマンが山のようにいる」。ツーマン配送の助手に、そのような人たちをアルバイトに雇っている家具配送会社の責任者が言う。
3年前までは助手でも正社員を雇用していたが、いまは意図的に止めている。ツーマン配送という現場があるので、必要な人手は運転免許の有無に左右されることなく雇い入れられるのが「好条件」な職場だ。
責任者は「仕事がないからといってクビにできない。労働環境という観点からは雇用の継続に理解はできるが、我々中小企業はリスクが大きすぎる」と話す。(西口訓生)
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