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食事手当て巡り一悶着 税務監査で現金支給消える
2011年10月7日
関西のある運送会社で会社と従業員がもめている。税務署の監査が入り、運転者に支給していた食事手当てについて、それまで運行後ごとに現金で支給していたが、税務監査を受けてから現金支給を取りやめてしまったためである。
同社では食事手当てを厚生費として税務処理していたが、税務署は源泉所得税の課税対象になると指摘。翌月からは給与明細に食事手当てが記されることになったが、運送会社社長は、「今までの監査では指摘されたことがなかったのに。給料水準が厳しい中で楽しみにしていた運転者が多かっただけに…」と話している。同社は現在、大型車を中心に車両20台を保有して長距離をメーンに事業展開している老舗事業者。長距離運行トラックの中で睡眠、食事をとることは珍しくなく、その点を考慮して給料とは別に食事手当て(運行費)を昔から支給してきた。
食事手当ては1食につき800円。夕食、朝食、昼食、夕食と4食分・1運行につき3200円が、運行後に会社から現金で支給されていた。
同社では、1台のトラックにつき月平均8回の長距離運行をこなしており、一人当たり月1万3000円弱となる。運転者の中には、貯めておく者や、休憩中の遊興費に使う者も少なくなかった。
ところが7月、税務署が6年ぶりに税務監査に訪れ、厚生費として処理していた食事手当てについて、所得税の課税対象になると指摘。「これまで指摘されたことはなかった」と主張しても認められず、翌月から食事手当ての現金支給をなくした。給与明細に食事手当ての欄が設けられ、給与に含まれることになった。
社長の話によると、従業員の大半は食事手当てについて奥さんには内緒にしていた。中には、別に食事代をもらっていたことが発覚したケースもあったという。従業員の中には、ひどい剣幕で社長に詰め寄る者もいた。逆に、給与明細に食事代が追加されているのを見て、「この不景気にいい会社ね」と評価する奥さんもいたようだ。
数年前の給与改正の際、従業員からの強い要望で食事手当てを残していた同社。社長は「従業員の怒りは当分治まりそうになさそうだ」と苦笑する。
トラック運送業の税務に詳しい渡部高之税理士事務所(大阪府)では「典型的な税務署の指摘例。税収の落ち込みもあり、税務署は目を光らしている。今回の件では、厚生費として上限まで処理した残りは、きちっとした旅費規程を作って、ドライバーが精算行為を行えば旅費交通費として損金処理することも可能。面倒だが経理体制を見直すいい機会」と話す。(大塚 仁)
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