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    悪質業者は処分対象 巡回指導何度も拒否など

    2011年11月28日

     
     
     

     ト協職員の顔と、巡回指導でトラック事業者を回るという、二つの立場を合わせ持っている適正化実施機関の指導員は、「いわば身内」という運送会社の認識から、思うような指導業務がこなせないケースもある。しかし、そうした事情に変化が見え始めている。中国地方で今夏、二つの厳しい行政処分が行われたが、運輸当局が監査に入った端緒は、適正化実施機関が2社に「悪質事業者」のレッテルを張ったためだった。指導員の巡回指導を受け入れない例をはじめ、「改善報告書を出さない」「5段階評価で低評価を続ける」という行為は今後、運輸当局による巡回監査から厳しい処分へとつながるプロローグになるかもしれない。



     「身内を売るのか」と声を荒げる運送会社の社長は少なくない。そうした観点から考えるなら、ト協が適正化事業を担うべきではないのかもしれないが、引き受けている以上は厳格に業務が遂行できなければ意味がないのも事実だ。中国5県のト協では2年ほど前、巡回の際に付ける指導員証を「中国運輸局長が証明」するタイプに切り替えた。ドタキャンするなど巡回指導に応じない運送会社もあり、身分を明確化するとともに「ナメられない」ための改良だったが、「ト協未加入の事業者などには一定の効果がある」(幹部指導員の一人)という。

     巡回指導で不適切な部分が見つかれば改善指導を受け、事業者は3か月以内に改善報告書を提出しなければならない。「ただ、それで直ちに運輸支局へリストを回すということはない」と山根徹吾・広ト協専務理事。「巡回指導にしても報告書の提出にしても、再三の要請に応じないような悪質なケース」がブラックリストとなって運輸支局に回ることになるが、「広島県の場合は月間平均で1件から2件程度」という。

     ただ、「重大事故などによる108条通報(公安委員会から運輸局へ)や、近年急増している労基署通報などを優先しなければならないことで、適正化実施機関からの報告分にまで手が回らないのが実情ではないか」と運輸行政のOB。「ただでさえ手付かずのところに、さらに次の悪質事業者リストが届けばズルズルと後回しになる。ひいては指導員の巡回活動が甘く見られて早期に不適正な芽を摘むこともできず、結局は大きな事故を起こして厳しい処分を受けることになる」とも分析する。

     これは全国的な傾向だけに、今夏、適正化機関からの悪質リストを端緒として運輸支局が巡回監査を行った結果、「事業停止14日間、車両停止614日車」「車両停止165日車」という厳しい行政処分が2社(者)に下された山口県の事例に関係者の注目が集まった。いずれもト協会員ではなかったというが、「これまでも改善報告書の未提出などについて電話で警告してきた。応じないようなケースも含め、適正化機関からの報告を端緒に監査することは既定のルール」(山口運輸支局輸送課)としている。

     隣接する広島県では適正化機関の要請を受け、9月からリスト化された悪質事業者に向けて運輸支局が警告文書を送り始めた。巡回指導で指摘後、改善報告書が未提出の事業者について「(文書で)通知したにもかかわらず提出されず、指摘事項の改善が確認できない場合」は巡回監査もあり得ることを記すとともに、車両停止や事業停止などの行政処分になる恐れがあることも示唆する内容になっている。

     適正化指導員の中では広島県の例を参考に、他の4県でも文書による行政からの警告を求める声が聞かれ始めているが、岡山運輸支局などでは「現時点で(文書の)要請は届いていない。108条通報や労基署からの通報もあって対応できていないのが現状だが、(山口県のケースと同様に)適正化機関の報告を端緒として監査に入る可能性はゼロではない」(専門官)と話している。(長尾和仁)

     
     
     
     
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