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国道43号通行ルール 住民と国交省が話し合い
2012年1月16日
兵庫県尼崎市南部を東西に貫く国道43号から大型車を削減させるための、住民と国交省の話し合いが12月22日開かれた。国交省は、東西方向それぞれに片側3車線あるうち、中央寄りの「第3通行帯」を大型車が走行するよう運送事業者に依頼することにより、沿道排ガス被害が減らせるとして、「国道43号通行ルール」を住民側に提示した。住民側は、「交通ルールの大枠はできたが、中身が詰め切れていない」として、引き続き議論することとなった。
通行ルールは、尼崎市内だけでなく、神戸市灘区までの県内の国道43号にかかるものとして提示。ルールのねらいは、第3通行帯を大型車が走ることにより、沿道の通行人や住宅との距離が保てるため、騒音や自動車排ガスの低減が見込まれる。また、大型車にとっては通行上のボトルネックとなり、渋滞回避のため大型車が迂回することにつながるという。第3通行帯の走行を求められる対象車両は、一日約1万8000台。内訳は、西行きが約7000台、東行きが約1万1000台(2011年3月の調査結果からの試算)。
ルールは、道路交通法規上の規制とはせず、協力に応じなくても罰則はない。そのため、実効性を担保する必要があるとして、国交省は協力することを宣言した運送会社などに認定制度を設けることを提示した。また、トレーラなどの特殊車両については、とくに取り締まりを強化する方針も打ち出した。具体的には、走行中の特殊車両の車高や軸重を自動計測する機械で読み取ったデータを兵庫県に照会し、県が運行規制条例の適合車か否かを再度チェックする仕組み。
国交省は現地でのルールの案内表示も検討しているが、住民側からは「大型車は基本的に第3通行帯を走るよう呼びかけたほうが分かりやすい」などとして、より強力なルール化を求める声が相次いだ。また、神戸市までの県内の全区間で同じことをするよりも、「『尼崎ルール』といったもので8キロほどの短い区間を絞るほうが注意喚起になる」などの意見も出された。国交省側も、「モデル区間の検討をしたい」と応じ、尼崎市域のみにルールが限定される可能性も残された。
ルールは、大型車の削減がねらいだが、住民側からは、「第3通行帯に大型車を絞って渋滞を起こし、ロードプライシング策の敷かれている阪神高速湾岸線へ大型車を迂回させるのが主旨のはず。現状の交通への影響があるから(第3通行帯への限定が)できないというのではなく、視点を変えるべきだ」といった見方も示された。
「また、事業者の自主的努力か」。尼崎市の国道43号を走行する大型車の通行ルールが、行政から運送事業者への協力要請に留まったことを知って地元の事業者からは「落胆」ともとれる声が広がっている。要請があっても無視するトラックが続出し、結果、「悪徳トラック横行」といった情報が世間に流布されることを案じているのだ。
兵庫県内の運送事業者は、今回の状況は00年の尼崎公害訴訟で原告側の差し止め請求が認められた直後の状況と似ているという。当時も敗訴した被告の国、そして事業者団体であるはずのト協までもが「阪神高速湾岸線への迂回に協力を」とトラック業界全体に呼びかけていた。
「敗訴したのは国。適法なトラックを使って運行している運送事業者が何か悪いことをしているとでもいいたげなキャンペーンだった。そんなやり方ではなく、交通の流れを施策でもって変えるのが国やト協の役割だったのに」。事業者はそんな見方をしている。
今回の「第3通行帯」走行の協力要請も、基本的には同じ構造だ。訴訟後から始まった国交省と原告住民が設けた連絡会のテーブルは丸11年、42回を数える。年月こそかけたものの、トラック業界の代表が一人も入っていないテーブルで決まったのは、「大型車への協力要請」だからだ。事業者は、「国交省、ト協を通じての宣伝活動がバンバン流されるはず。協力をするもしないも、トラック業界の責任だといわんばかりに…。社会的責任ばかり負わされる割には発言の場がないというのも変わっていない。いっそ、罰則付きの規制のほうが、事業者も荷主に説明しやすいという点からも好都合だった」。
もっとも、今回の連絡会で決まった大筋のルールは、あくまで行政と住民の合意事項に過ぎない。本来、住民側が求めていたのは、ナンバープレートなどで区別して国道43号に流入できる大型車を削減するといった法的規制だった。法的規制が合意事項に変更されたような内容になったのは、ナンバープレートなどによる交通規制が可能かどうかを検討していた兵庫県警が、「不可能」と判断したとされることがきっかけとなっているからだ。法的規制そのものができないということではない。(西口訓生)
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