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あえて下請けに回る中小・零細 同業者と取引でリスク減
2012年1月30日
運送会社を経営するにあたってこれまで、直荷は一つのステータスであった。「うちは直荷しか仕事をしない」という事業者は今でも圧倒的に多い。しかし、先行き不透明のいま、少し事情が変わってきた。相手が名前の通った荷主ならまだしも、中小・零細企業であれば、同業他社と取引することを選択する事業者が出てきているのだ。そこには、リスクを極力減らしたいという事業者なりの理由がある。
地元の中小企業を荷主に建材輸送を手掛けていた埼玉県の事業者は昨年末に、荷主の倒産に遭い、数百万円の被害を被ったという。その荷主とは2年前に取引がスタートし、信頼関係を築いていたはずだった。「少し状況が悪いということは耳に入っていた」という同社社長だが、「まさか倒産するとは予想していなかった」と振り返る。同社は荷主の経営が芳しくないとの情報を得ていたが、倒産という深刻な状況まで進んでいたことを把握できていなかった。「事前に分かっていたら、徐々に取引を縮小するなど対策を講じられた」。結局、数百万円の負債を被る結果になってしまった。
同じく地場輸送をメーンに手掛ける埼玉県の事業者は、「名前が通っているなど、比較的リスクの少なそうな直荷以外は、同業他社との取引を選んでいる」と、あえて下請けを進んで受けているという。「直荷であれば、その荷主業界については我々は素人で、情報の入手も難しい」というのが理由だ。一方、「相手が同業他社であれば、情報の入手が比較的容易だ」と、同社長は指摘する。同業他社のことは、トラックディーラーをはじめ、燃料やタイヤのディーラーから情報を入手できるのだという。
「危ないとの情報を入手すれば取引を減らしたり、うちの仕事を多くやってもらって相殺するなど、いろいろと手を打てる」とし、「荷主が直荷であれば情報も入りにくいし、相殺という手も打てない」と話す。そのため、同社では直荷の依頼があった場合、あえて同業他社を間に挟んで仕事を請け負うというケースも少なからずあるのだという。
「確かに直荷といえば聞こえはいいし、仕事の誇りにもなる。ただ、明日もわからない難しい時代、手放しで喜べないのが実情だ」という同社長。「実入りが確実に少なくなる同業他社との取引を選択することは、体力のないうちのような中小・零細事業者にとって、究極のリスクヘッジだ」と話している。(高田直樹)
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