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説明なく自腹で修理 トラブル続く副業の損保代理店
2012年2月21日
副業として、損害保険会社の代理店を展開する運送事業者が増えているようだ。しかし、生半可な知識で代理店を始め、ユーザーとトラブルになるところも少なくない。 関西のある運送事業者は一昨年、損保会社の代理店登録を行ったが昨年、キャリアカーで乗用車を運搬する運送会社と貨物保険の支払いを巡ってトラブルになった。代理店の勧めるまま対人、対物、貨物の各保険に加入したが、昨年の事故では貨物の損害について保険金支払いの対象外となって、自腹を切ることになってしまった。運送業の保険事情に詳しい関係者は、「小遣い稼ぎの感覚で代理店は成り立たない。ユーザー自身も代理店任せにせず、保険について知識を得ることが大切」と話している。
2年前に営業ナンバーを取得し、オークションで落札した乗用車をキャリアカーで運搬する仕事を始めた運送会社。同じく運送事業者を営む友人の強い勧めで、同事業者の扱う自動車保険に加入した。友人はちょうど損保代理店を開業したばかりであった。昨年10月に事故が発生した。6台の乗用車を積載して高速道路を走行中、前方の乗用車が急ブレーキを踏んだため、キャリアカーの運転者も急ブレーキを踏んだ。その弾みで積み荷である複数の乗用車がキャリアカー自身に当たり、乗用車が破損してしまった。
貨物保険に加入していた運送会社は早速、友人の代理店に連絡。しかし、友人は「保険の対象外で対応できない」と返答。「一体、どういうことなのだ」と言い返すと、「わからない」との返答。しまいには、「自分で約款を見てくれ」と無責任な対応に終始。さらに追及すると「俺にはどうすることもできない。いいかげんにしろ」と逆切れされたという。
結果的に保険金は下りず、運送会社は自費で車を修理。修理代に約20万円かかったという。実は、運送会社が友人の代理店と貨物保険を巡ってトラブルになったのは今回で3回目。前回はタイヤがバーストして積み荷の乗用車が破損し、今回同様に保険金は下りていない。
一般的にいわれる貨物保険は、運送業者貨物賠償責任保険(運賠)で、運送中に貨物に生じた損害に対して補償される。交通事故などすべての事故で生じた貨物の損害について保険金を支払うことになっているが、今回のようにキャリアカーが運行中に、単独事故で積み荷が破損するケースでは事故率が高いため補償内容に制約を設けている保険会社は多い。
キャリアカーについては、積み荷を新車しか対象にしていないところや、特約を設ける必要があるところ、専用の賠償責任保険を設定しているところ、また、引き受けていないところもあり、会社によって対応は異なっている。他に生鮮食料品やばら積み貨物、引っ越し家財も単独事故による荷物の破損を補償しないケースが多い。損害を自腹で支払った運送会社は「『保険のことは俺に任せて。何でも出るから』と言うので加入したが、結果的にお金を捨ててるだけ。保険をきっちり理解した上で代理店をやって欲しい」と怒りは収まらない。
保険の代理店になるには、保険会社と代理店委託契約を結ぶ必要があるが、所定の試験を受けるなど一定基準を満たさなければならない。
主に運送会社を対象に損保代理店を展開するシステム保険関西(大阪市)の水上統雄社長は「代理店には保険の説明義務がある。保険代理店は小遣い稼ぎの感覚でやっていては失敗する。ユーザーもしっかりした代理店選びが必要。今までは保険会社と代理店は一体となって運営していたが、今は保険会社は従来なら被っていた損害をかぶらなくなった。アメリカのようにユーザーの自己責任も問われる時代。代理店任せにもできず、自ら保険について勉強しておくことも大切」と話している。(大塚 仁)
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