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軽油引取税の負担感より重く 業界の割合が2割以上
2012年10月15日
10年前は1兆2000億円に占める5000億円だったが、近年は8000億円に占める5000億円へと変化──。これは、ディーゼル燃料に課税される国内軽油引取税収額全体に占める、営業用トラックの負担割合が変化している様子を表現したものだ。全体の税収は縮小するなか、トラック運送業界の負担割合が2割以上も増加していることが分かる。軽油引取税は09年から、道路整備の目的に特化した税目ではなくなり、道路を使用しないディーゼルエンジンに使用する際にも理屈の上では徴税可能になったが、実際にはトラック業界の負担率は上昇している。
「ガソリンのように蔵出し課税に移行することすら可能だったのに。『農業保護』などと言っていたら不正軽油は撲滅できない」。様々な産業に燃料を販売する業者は話す。軽油引取税を定める地方税法では、今年3月末に「免税軽油」の制度を廃止し、出荷されるすべての軽油に軽油引取税を課すこととなっていた。しかし内閣から提出された「地方税法等改正案」が3月30日に参議院で可決成立し、引き続き農業用、船舶用など道路を走行しないディーゼル機関で使われる軽油は免税とする法律が同31日付で交付されている。改定法は15年3月末まで、「免税」という既得権を温存する構図の下敷きだ。
総務省が出している直近の「軽油の引取数量等に関する調査」では、国内の総引取数量は約3868万キロリットル(税額に換算して1兆2416億円)、うち995万キロリットル(同3193億円)が何らかの形で課税を免除されている。これらの課税免除のうち、納税申告義務のある「特別徴収義務者」が2者以上絡んだ取引があった場合など、重複した課税がないようにするため課税を免除する量が約699万キロリットルあり、残りの約298万キロリットル(同956億円)が、いわゆる免税軽油に当たる。
前述の燃料販売業者のいう蔵出し課税は、油槽所から出荷する段階で石油元売り事業者に納税させようとする制度。現在のこうした課税免除の部分が法的に存立根拠を失えば、国内で取引されるあらゆる軽油に一律に軽油引取税が課税できる「一網打尽」の仕組み。
トラック運送業者にもこうした主張をする人は少なくない。「農業保護」といった政治的スローガンに対抗しているのではなく、不正軽油の横行が目に余るからだ。
不正軽油の取引量、そこから算出される脱税金額はどのくらいに上るのか。10月から「不正軽油撲滅キャンペーン」を展開中の近畿2府4県。ある担当者に聞いてみたが、「全く分からない」と回答するだけだ。
この県では路上での一斉抜き取り検査を数年来実施しており、例年5%前後のディーゼル車から不正軽油と思われる反応が出ているという。同県での軽油引取税収は373億円(11年度)。仮に5%が不正軽油だとすると、18億円程度の何らかの納税漏れがある。
千葉県の産廃Gメンの経歴を持つ著者の本・『産廃ビジネスの経営学』(石渡正佳氏、ちくま新書)によると、不正軽油の製造過程で出る硫酸ピッチの発見量から推計して、約300億円もの脱税が全国であるのでは、と指摘している。
先ほどの近畿のある県での合法な免税軽油は約28億円。不正軽油と合わせると46億円で、税収額の12%を超える。
軽油引取税も含めて税は、一定の税収があることを前提に税率が決められていることからくる「負担金」といった感覚にはそぐわない。それは、10年前から約4000億円以上も減少している国内の全軽油引取税収に比して、営業用トラックがほぼ一定の5000億円のまま推移していることからみて明らかだ。
しかし、法的に期限を迎えている免税対象を、さらに3年間も保護の対象としたり、不正軽油の撲滅と言いながら、おおよその脱税額すら掴んでいない県当局の話から類推すると、軽油引取税は「取りやすいところから取れ」の感覚が出ている。(西口訓生)
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