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虚偽記載のチェック困難 雇調金不正受給に手を出す
2013年5月16日
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金も吸収)による不正受給に手を出す運送事業者は少なくない。厚労省でも不正受給防止に力を入れているものの、多くの企業が不正受給をしたとして公表されているのが現状だ。不正については申請の際に窓口でチェックするのは困難で、多くは内部告発によって明らかになっているという。各地の労働局では内部告発専用のメールアドレスを設置するなど、従業員による「タレコミ」を期待しているところも多いようだ。
不正受給の防止の一環として、平成22年11月から事業主や代表者名が公表されることとなった。その中には物流企業も少なくない。宮城労働局が公表したA物流は2983万円を不正受給。三重労働局はI商事(852万円)、石川労働局はA物流(1036万円)、愛知労働局はS運輸(2433万円)、大阪労働局はD物流(755万円)、H運送(3862万円)、M運輸(917万円)など、多くの運送事業者が公表されている。公表された運送事業者のほとんどが、「労働の事実があるにもかかわらず、休業を実施したとして助成金を受給した」というもの。虚偽の出勤簿や給料明細書を作成しているわけだが、厚労省関係者によると、「申請書類などで虚偽記載を発見するのは困難。ほとんどは内部告発による通報」という。
静岡労働局では昨年3月、不正受給についての内部告発9件を1年以上放置していた。「告発が多く手が回らなかった」というのが理由。1年間で50件ほどの内部告発があったという。内部告発が多い背景には、全国の各労働局が専用のメールアドレスを開設していることが大きい。
また、不正受給が多い理由には、申請方法にも問題があるようだ。厚労省では、「休業等の実施計画届(変更届)を提出した事業所に対し立ち入り検査を実施している」ものの、すべての事業所を検査しているわけではない。虚偽の申請書類を窓口でチェックできず、それについての確認もしていないことが大きい。
平成25年度から雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金が統廃合され「雇用調整助成金」となっている。「景気の変動などにより事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業、教育訓練、出向を行って労働者の雇用を維持した場合、かかった費用の一部を助成する」というのが同助成金の趣旨。
助成金を広く活用するために簡易な申請方法がいいのか、不正受給を防止するために申請段階でのチェックを強化する方法がいいのか、判断が分かれるところだろう。ただ、このまま不正受給が増大することになれば、チェック強化になるのは間違いないし、制度自体が廃止される可能性もある。(小西克弥)
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