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事業用自動車の交通事故減少へ 国交省が専門調査組織を新設
2013年8月23日
国交省は、トラックやバス、タクシーなど事業用自動車の交通事故を減らすため、専門の調査組織を2014年度に新設する方針を示した。これまでも調査は行われてきたが、新組織の誕生で、運送事業者だけでなく仕事を依頼する荷主側まで踏み込んだ調査が可能となる。昨年4月に発生した関越自動車道高速ツアーバス事故のような重大事故が起きた場合、背景にある問題点を調べ、再発防止策などを示す方向で、来年度の概算要求成立で正式に決定する。
新設する調査組織は、交通事故に詳しい研究員らが所属する外部機関に委託することを想定しており、機関内には有識者による委員会を設置。同省では01年度から「交通事故の要因分析委員会」を設け、個々の事故について会社の管理体制や運転者の労働環境、車両・道路の構造的な問題点を調査。年次報告では毎年、実際に起こった事故を10件ほどピックアップし、再発防止策をまとめてきた。居眠り運転が原因とみられる関越道のバス事故では、対策として、交代運転者の同乗や衝突時の被害を和らげる自動ブレーキの普及が指摘された。国交省では、重大事故の調査対象はまだ明確ではないとしているが、「トレーラの横転事故のように、多くの人を巻き込み、社会的影響の強いものが対象になる」(自動車局安全政策課)としている。
関越道の高速バス事故では、ドライバーの過密な勤務体系が明るみに出たが、トラック業界でも、事業者が引き起こした重大事故の背景には、荷主の要望に応えるためにドライバーの労働時間超過や過重労働をせざるを得ない実態が明らかとなるケースも出ているだけに、同省でも、「改善基準告示が守られていないという認識はあった」(同)という。しかし、これまでは同省が所轄する範囲内でしか調査できなかった。いわば、事故を起こした当該事業者だけを調べるだけで、仕事を依頼する荷主など、その背景については限界があり、十分な調査が行えなかった。新組織が設置されれば、現地調査やデータ提供の面で警察庁などとも協力し合えるなど、行政間の横のつながりができ、荷主企業を含めた広範囲の調査が可能となる。
調査で荷主側にも問題があると認められた場合には、運送現場の実態を把握してもらえるよう報告書を提出し、改善を促す。しかし、新組織でも、「法律で規制するのは難しい」(同)というのが実情で、どこまで荷主側の責任を問えるかは不明。ただ、新組織の誕生で調査範囲が広がり、労働環境や荷主との関係など、その背景を行政が一層認識することで、トラック業界では重大事故の抑制につながるとの指摘もある。
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