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健全事業をめざし労働時間の改善 各事業者の努力
2014年5月29日
運送業界で労働時間の問題が深刻になっている中、ようやく契約書面化など事業者の体質改善の動きがでてきた。しかし、契約の内容はあくまで当事者間での合意に基づくもので、国交省が保証するといったものではない。事業者が自らの現状を見直し、少しでも改善していくことが必要なのではないか。各事業者に、労働時間に関する取り組みについて話を聞いた。
大阪市北区の運送会社は「配車マンに頼りっぱなしだが、うちは労働時間をきちんと守っている。しかし、他の事業者を見ていると、長距離輸送ではなかなか難しいようだ。運送事業者だけが努力しても労働時間は改善できない。荷主にも守ろうという意識がなければ現状は変わらないだろう」と話す。大阪府高槻市の事業者は「スポットメーンで動くドライバーがいるので、比較的労働時間を守ることができるが、急に頼まれた仕事の場合は難しい。大手はドライバーの入れ替えなどをしているようだが、人件費がかかるので中小企業では難しい」と説明する。
同事業者は、荷主と積極的にコミュニケーションを図って運賃の交渉をしているものの、労働時間に関しては言い出せないようで、「荷主に労働時間のことを切り出して仕事を断られるのが怖い」と本音を漏らす。同摂津市の事業者は、「長い労働時間の中に休憩時間を挟むと、さらに拘束時間は長くなる。手待ち時間も労働時間に入るため、結局長くなってしまう」と現状を話す。 「休憩と休息の違いがあいまいな状態。『労働時間は守らなければならない』と言いながら中身が伴っていないので、行政の言うことは矛盾だらけだ。行政がこう運行するべきというモデルケースを示してくれれば少しは分かりやすいのだが」と話す。
労基法によると、もともと休憩時間は労働者が労働から離れることを保障されている時間を表す。手待ち時間は労働しないことが保障されている時間とはいえないため、この休憩時間にはあたらない。基本的には、休憩時間中には給与は発生しない。事務員と現場作業員を同じくくりで考え、労働時間を適用するのは難しい。だが、現場の作業員が1日15時間も働かなければならない理由はどこにもない。
同東大阪市の事業者では、労働時間の工夫として、1週間のスケジュールで「間引き」を行っているという。「もし1日15時間働くと次の日は9時間にするなどして、週40時間は必ず守るようにしている。ドライバーが少ない中でやりくりするのは大変だが、健全な事業をできるだけ心がけている」。
ドライバーの長時間労働の原因は補助などの作業時間にもあり、特に拘束時間内の荷役時間、運転時間内の空車走行時間などが挙げられる。フォークリフトやかご車、パレットなどをうまく使ったり、様々な運用管理システムを活用することで、地道に時間をやりくりしていくことも必要だろう。
先月、東京都の事業者4人が待機時間を労働時間に算定しないのは不当として、未払い賃金の支払いを求めていた訴訟の判決が出た。事業者は「明日はわが身」と労働時間について見直し、労働時間に関する事項を就業規則に細かく明記していくべきではないだろうか。
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