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射界
2015年12月7日号 射界
2015年12月10日
世紀の盗賊、石川五右衛門の科白を拝借すれば、「浜の真砂は尽きるとも、この世のウソは尽きまじ」と言える。政治家による政治資金の不正流用や公務員の収賄事件、建設業者が関わる杭打ちデータの改ざん、高齢者を対象に多額の現金を騙し取る特殊詐欺事件の数々と、いつの世もウソが絡む悪業は絶えることがない。
▲ある特捜検事の経験者が回想録で「自らにやましい部分があり、その疑いをかけられた時、真実を全てありのままに話すことができる人はまずいない」と述べている。むかし、親はわが子に「ウソはドロボーの始まり」と教え戒めたが、ドロボーを取り締まる警察官がドロボーどころか凶悪事件を仕出かしてウソをつく世の中。ではウソとは何か。「真実でないことを表現する」と定義される。▲元来、生き物は他からの攻撃に対して防御しようとする本能が働く。防御本能がウソに繋がる。ミスすれば上司に叱られるのでミスをごまかそうとウソをつく。また、自分を大きく見せようとする「背伸びするウソ」もある。能力を誇示したい、周囲から注目されたいなど、見栄に基づくウソがそれだ。そこには「プライド」と「恥」が働き、環境や経歴、価値観の違いで程度に差が生じる。
▲さらに人を陥れるためのウソ、すなわち「欺瞞のウソ」がある。普通では見受けられないが、相手の弱点や時代の変化を悪用してつくウソだ。典型的なのが「振り込め詐欺」。次第に手口も巧妙化し、ネットや電話で複数人が役割を変えてウソを固める。これから多忙を極める歳末シーズンとなる。言葉巧みなウソの背後に潜む真実を見極め、それがウソかマコトか、しっかりと峻別したい。
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