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射界
2016年4月25日号 射界
2016年4月28日
「艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にする」とは、人間は苦労を重ねることで立派に成長していく、と言う意味だ。一読して漢語調だから中国の古書が語源と誤解されやすいが、実は英文からの翻訳である。原文を直訳すれば「逆境は人を賢くする」となる。1904年に発刊された尋常小学校修身書にも引用されている。
▲人は平穏で豊かな生活を渇望する。しかし、変化や困難、苦しみのない生活が続くと緊張感を失い、平々凡々の日々に慣れ親しんで、それが当たり前と錯覚して進歩や向上しようという意欲を忘れてしまう。人間の能力は艱難に立ち向かった時、それを乗り越えようと大きく伸びる。このパワーが精神的な成熟を促すと期待してよく、様々な試練が人間を鍛え上げていくとも言えよう。▲人によっては、あえて危険には近づかず避けて通ろうとする。これも一つの生き方として否定できないが、危険や困難、苦しみといった試練は熊本地震が示す通り、何の前触れもなく降りかかってくる。そんな場合、右往左往するだけに翻弄されるようでは情けない。日頃から果敢に向き合って乗り切るだけの覇気を養っておきたい。被災者をはじめ、支援に携わる人すべてに期待したい。
▲文化勲章を受章した文筆家三宅雪嶺の言葉を借りれば、「できる事でもできぬと思えばできぬ。できぬと見えても、できると信ずるがために、できることがある」とある。座って楽な姿勢で進めていた仕事が納期を目前に、是か非でも約束を果そうと思えば立ち上がって手を動かすことになろう。これが人間として自然の姿勢であり、自然災害と言えども人の働きで克服できると理解したい。
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