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運賃交渉に動き 立ちはだかる壁も
2017年6月30日
コンプライアンス経営を厳しく求められる時代のトラック運送事業にとって、手待ち時間の解消や付帯作業の有償化は待ったなしの必須条件。大手宅配事業者に引っ張られるように、関係行政機関でも適正取引の実現に向けた動きが活発になっているが、まずは事業者レベルの意識を高めることが大前提だ。差し迫った危機感が中小事業者のなかに「合わない仕事から撤退する」という空気を生むようになってきた。
「現状を理解しない荷主に三下り半といえば格好はいいが、それで仕事が減れば別の取引先を探さないとメシが食えなくなる。だから我慢する…そういう流れを変えないといけない」と岡山県東部のトラック経営者。多層化した業界の構造が「適正運賃というのは一体、どの段階の事業者を対象にした言葉なのか」という印象を生み、下請けや孫請け、さらに川下の事業者に運賃交渉の虚無感を根付かせたのは間違いない。帰り便などで同業者や取扱専業者から荷物を回してもらうこともあるが、同社の場合は基本的に、いわゆる真荷主が取引のメーン。そうした事情もあって運賃交渉した結果が直ちに収支に反映されるという手ごたえがあるが、「これは元請け、下請けといった立場に関係のない話。うちの場合は、たとえ世話になっている荷主の注文であっても、運賃や、それに時間が合わなければ断っている。取引する相手によって我々の評価点(調査会社)が上下する時代であり、相手が大手の荷主だから安心といった頭を切り替えないとダメだ」と指摘する。ただ、前述したような多層構造の壁にぶつかるケースも依然として多い。平ボディーやウイング車で雑貨、工業原料などを運ぶ兵庫県西部の運送会社は「傭車先から運賃の値上げを要求されたことを元請けの同業者に伝えたところ、『うちも荷主の担当者に話しているが、いい返事は期待できない』といわれた」と取締役。過日、協力事業者の会合に参加した取締役は、会場に姿が見えた荷主の物流担当者を捕まえて「残業代の対応などでトラック業界は運賃の引き上げをお願いしておりますが、どんな感じでしょうか」と聞いてみた。すると、担当者は「そんなことは、おたくの取引先に聞いてもらわないと、うちの立場では何ともいえない」。担当者にとっては、会場にいた大半の実運送事業者は眼中にないという対応だったようだ。
一方、「ただでさえドライバー不足の状況。運賃交渉に耳を貸さず、時短にも非協力的な荷主から撤退したことで、グンと会社の中身はよくなった」という山口県中央部の運送会社。金融機関から提案があったことで昨年の後半、「後継者がいないために廃業を予定していた同業者を買い取ることになった」と社長。下請け仕事が大半の小規模な事業者だったが、「ドライバーとトラックを引き取って当面、その会社から自分が給料を取らなければ十分にやっていける」と判断したという。しかし、「事前のチェックが甘かった」と自嘲気味。「入金先の大半が末締めの翌々月払いで、一部に3か月の手形もあった。ドライバーの給料は当月末に払わないといけないのに、とにかく資金繰りに焦った」と振り返る。そこで入金先の元請けや食品卸業者と掛け合ったところ、「支払いを早めてもらうことが認められた。ダメなら違う仕事に切り替える覚悟もできていたが、意外にあっさり…という感触だった」という。
素材産業の荷主と取引する広島県東部の運送事業者。「同業荷主の一部でトン建ての運賃を10%近く引き上げるケースが出ている。うちの取引先は相変わらずだが、そのうち同じような話が出てくるのではないかと期待している」と社長。アップした運賃が実運送事業者の懐にまで届くかは定かではないものの、トラック業界とすれば明るいニュースであることは間違いない。ただ、この値上げにはコンプライアンスを意識した大手荷主の経営戦略という色合いもあったようだ。「重量違反を避けるために積載を3?4?減らすと、たとえばトレーラに積めるのは21?前後。運賃はトン建てだから、積載量が減った分を単価の引き上げで調整された感じ。1台当たりの運賃はほぼ同じらしい」と説明。本当の意味での運賃交渉を切り出しにくくなった印象も受けるが、「運賃が同じなら重量は軽いほうがいい。ドライバーの精神的な負担は軽くなるし、燃料やタイヤ消費の面でも悪くない」と前向きにとらえている。
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