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選任ドライバー見直しへ 緊急時に弊害多く
2017年7月14日
緑ナンバートラックである以上、営業運行でない場合でも、あらかじめ選任されたドライバーしかトラックを運転できなくなる恐れがあるとして、近畿運輸局貨物課は選任ドライバーを定めた規則の運用を見直すなどの検討の必要があることを本紙取材に明らかにした。国土交通省本省にも伝え、情報共有していくとしている。同運輸局は、運送事業者に選任されたドライバーでなくても、緊急に走行させなければならない場合や回送の必要性が社会的に定着した場合などの緑ナンバートラックの運行を想定している。こうした規制はトラック事業法令にだけ見られる特有のもので、いまとなってはなぜ、こうした法令になっているのかを手繰るすべすらない。
2014年11月、国土交通省道路局が作成した「災害対策基本法に基づく車両移動に関する運用の手引き」。救急車などの緊急車両の交通を確保するため、災害時に放置されてしまった自動車を移動させる、災害対策基本法の条文をマニュアル化したものだ。「運転者等が不在で運転者等による車両等の移動ができない場合」として、「拡声器等で(運転者に移動の)呼びかけを継続するが、(中略)所定の手続きを行い移動を行うものとする」と述べ、道路管理者としての車両排除業務を行うとしている。東日本大震災など大規模災害を思い起こせば理解しやすい内容のマニュアルだ。こうした状況で仮に、放置された車両が緑ナンバートラックだったとする。もちろん、道路管理者として国交省などは、この緑ナンバートラックを合法的に移動させることができる。しかし、移動を受けたトラックの保有者である運送事業者から厳密に法令を見ると、「トラック事業者が『違法』に移動させた」と言わざるを得ない状況になっているのが、トラック事業法令だ。
緑ナンバートラックの運転者の選任を規定する「貨物自動車運送事業輸送安全規則」は第3条で、「事業計画に従い業務を行うのに必要な員数の事業用自動車の運転者を常時選任しておかなければならない」ことを、トラック事業者の義務としている。近畿運輸局貨物課によると、条文には直接は書かれていないものの、「従業員運転者しか事業用貨物車の運転には選任できないとの規定」と解釈しているという。
また、同規則第20条で運行管理者の責務として、「選任された以外の者に事業用自動車を運転させないこと」が盛り込まれる。両条文によって、選任運転者以外の運転者に運転させることは、トラック運送事業者や運行管理者の義務違反と解釈できるという。大規模災害時に、こうしたトラック事業法令が適用されることは考えにくいものの、日常の場面でも選任運転者以外の者が運転する場面はあり得る。
貨物課担当者は、「例えば、車検や修理時の回送中に整備業者などが運転する場合などでも適用される。仮に、回送中に大きな事故が起きれば、事故報告はトラック事業者に課された義務で、この報告で選任運転者以外の者が運転していたことが判明すれば処分の対象にすらなる」と、話している。もっとも、選任運転者以外の運転を認めない輸送安全規則自体が、貨物自動車運送事業法の目的(第一条)にある「公共の福祉の増進に資すること」に抵触しているとも考えられることから、担当者は、「近畿運輸局ならびに国土交通省としても、こうしたことがあり得るということをまず情報共有したい」と話している。
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