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子どもへの物流教育 社会的地位の向上に
2017年9月22日
物流業界の長年の課題の一つに「社会的地位の向上」がある。これを実現させるためには、社会生活や産業に欠かせない物流の重要性を社会全体が認識する必要がある。特に、小学生や中学生のころから「物流とはどのようなものか」をきちんと理解しておくことが大切となってくる。「送料無料」という、モノを運んでもコストがかからないと誤解されかねない表現が、ネット販売を中心に広がっているが、子どものころから「物流」をきちんと学ぶことで、このような誤解が解消される。今回は、子どもらが学ぶ「物流」について調べた。
文部科学省の教科書課によると、「物流については社会科の教科書に掲載されている。工業製品を学ぶ中で、どのように配送されるかを学ぶ」と指摘。「例えば、5年生の教科書は上下に分かれているが、下の教科書の3分の1ほどを占めている。もちろん、物流だけに特化しているわけではないが、工業を学ぶ上で物流は大切ということで、大きく取り上げている」としている。最近では、物流センターなどを小学生が社会見学することも珍しくなくなった。今月初旬にはアマゾン川崎フルフィルメントセンターへ川崎市立東高津小学校5年生37人が福田紀彦市長と「施設内覧会」に参加した。同センターは国内初の「Amazon Robotics」を導入した物流拠点で、商品棚の下にロボットが入り、棚を持ち上げ、センター内を移動する革新的なテクノロジー。同社のジェフハヤシダ社長は「今後も物流拠点のある地域の皆様と連携した取り組みを行い、地域に根ざしたセンターづくりを展開したい」とコメント。
東高津小学校では「児童はロボットとセンターが共存していることに感動していた。また、安全確認が徹底されていることにも『スゴイ』という声が上がり、驚いていた。いまは単純に驚いている段階で、物流に対する疑問などが出てくるのは、これからだろう。学区の中に物流センターがあり、こちらも『中で何がされているのか』という疑問が出てきたところ、川崎市教育委員会からお話をいただいた」という。
川崎市教育委員会では「こちらに経済労働局から話があり、人数などの条件を考えて、地元の小学校に声をかけさせていただいた。センターが新設されたことでトラッックの交通量も増え、安全面の問題からも地元の理解が必要と考えてのこと。見学の評判もよく、小学校では引き続き授業で(物流センターを)取り上げていくと聞いている」としている。
全国で「物流見学ネットワーク」を展開する物流連(東京都千代田区)では「申し込みを学校に絞っているので季節によって波があるものの、この8月に4件の申し込みがあって、2件が実施された」という。「秋になると修学旅行で見学の申し込みが増える。繁忙期などを理由に受け入れを遠慮する場合もあるが、このような活動は今後も積極的に続けていきたい」としている。
また、わかりやすく物流を学べる場所としては、同港区に「物流博物館」がある。1998年に誕生した同博物館は、もともと日本通運の通運資料室が基礎となっている。物流の歴史展示室は中・高校生向けだが、現代の物流展示室は小学生にもわかりやすく物流が学べるよう展示されている。同博物館では「現代物流の要衝である空港、港、鉄道、トラックの各ターミナルのジオラマ模型や物流に関するビデオ、クイズ、ゲームなどを通じて暮らしと産業に欠かせない物流の仕組みをわかりやすく紹介している」としている。体験コーナーには、物流をテーマにした体験キットが用意されている。
業界としては、たくさんの児童を物流関連施設で受け入れたいが、小学校の社会科見学の行き先は基本的には各小学校が決定している。東京の新宿区教育委員会では「各小学校で決めている。実施届けを出してもらうだけ」とし、練馬区教育委員会では「社会科の内容に合わせて各学校で決めている。交渉も各校でやっているため、各学校間の競争になっているところもあり、苦労されているところもあるようだ」という。業界側から、各小学校などに話をする方が受け入れ人数を増やすにはいいかもしれないようだ。
多くの人材を物流業界へ引き入れるためにも、子どものころから「物流の大切さ」を学んでおく必要がある。また、業界としても、子どもらに憧れられる業界になるよう心がけなければならないだろう。
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