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射界
2017年10月16日号 射界
2017年10月12日
イソップ物語に『酸っぱいブドウ』という寓話がある。お腹を空かした一匹のキツネがブドウ棚の下にやってきて、おいしそうなブドウの棚を見上げ、何とか食べたいと手を伸ばすが棚が高くて届かない。悔しがったキツネは「ありゃこのブドウ、まだ熟していないから酸っぱくて食べられないよネ」と独りうそぶく。
▲この話から、欲しくても手に入らないものにケチをつけて自らを慰める、負け惜しみの気持ちを「酸っぱいブドウ」に託して言い表した寓話として広く知られる。イソップ物語には、オオカミと並んでキツネが悪者の象徴のように数多く登場し、狡猾で抜け目のない存在の典型にもなっている。牧畜や農業の盛んだった当時のヨーロッパでは、オオカミやキツネは許し難い害獣だったからだ。▲我が国には「星守る犬」という格言がある。能力のない者が願っても叶わぬ望みをかける…という意だ。犬が星を守っているつもりで吠えても「何の役にも立たない、ムダなこと」を示唆する。しかし最近、一介の野良犬であっても星を守ろうという気概について肯定的に捉え、誉めてやろうじゃないか…と好意的な解釈が出始めている。これも世の中の移り変わりを表している。
▲多面的に考えるという多様な価値観が生まれて当然という世の中。どんな場合にも、その時代背景と相まって自由に解釈されても驚くことはない。不可能だからと言って逡巡していては先に進めない世の中だ。新しい価値観によって目標を見定めて努力し、星を守ろうとする犬のように、新しい発想で努力すれば、新しい世界が生まれる。酸っぱいブドウも甘く感じられるかもしれない。
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